渡切り交際費の取扱いには注意!!
   
カテゴリ:税務
作成日:09/15/2015
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  



黒田
「やぁリエちゃん、こんにちは。」






リエ
「こんにちは。今日は黒田さんにお聞きしたいことがあります。最近、弊社でも景気回復の恩恵を受けることでき、おかげさまで受注が増加しているのですがそれに伴い接待交際費も増えてきました。特に役員の使う頻度が増えているので、社長から役員の分だけでも精算をしない運用に切り替えても支障がないか意見を求められているのです。」

黒田
「そうですか。役員の方々は特にお忙しいでしょうから、精算事務に充てる時間を他の生産性が高い活動に充てたいと社長はお考えなのでしょうね。それで、リエちゃんは税務上何か問題がないか悩んでいるということですね。」

リエ
「えぇおっしゃる通りです。たとえそのような形で支給したとしても、営業活動に使われることは間違いないでしょうから、私は交際費として処理しても問題はないと考えているのですがいかがでしょうか?」

黒田
「名目上交際費として会社が支給をしたとしても、領収書等の証拠資料をもって精算がされないような交際費は渡切り交際費と呼ばれ、支給を受けた人間が自由に処分できますので、このような支出は給与の性質を有するものと考えられ、交際費には該当しないこととなります。例え本当に交際費に使用していたとしても、証拠資料がなければ業務に使用したことを明らかにすることができませんからね。

 そのため、役員に支給する渡切り交際費は、役員に対する給与とみなされ、役員は所得税の課税を受けますし、通常そのような支出は、定期同額給与に該当しませんので法人の損金にすることもできません。また消費税法上も、渡切り交際費は仕入税額控除の対象外となります。」

リエ
「精算をしないだけでここまで取扱いが変わるのですか。従業員の方々も精算事務をやめたがっていましたが、渡切り交際費による運用は採用すべきではないですね。」

黒田
「法人の損金にできないのは、あくまでも事前確定届出や定期同額給与に該当しない役員給与とみなされる場合です。従業員の場合は給与とみなされたとしても、法人の損金に算入することはできます。ただ、やはり所得税課税や仕入税額控除の対象外になりますので、少々面倒でも精算をされたほうが宜しいかと思いますよ。問題が精算事務の煩雑さにあるのであれば、渡切り交際費ではなく何かシステムの導入を考えたほうが良いでしょう。」

リエ
「そうですね。黒田さんに教えて頂いた渡切り交際費のリスクを社長に報告し、代わりにシステムの導入提案をしてみます。ありがとうございました。」