公社債等の売却で課税関係が変わるって本当?
   
カテゴリ:税務
作成日:11/10/2015
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  





リエ
「黒田さん、来年から公社債等(国債、社債、公社債投資信託など)(※1)を売却した場合に課税されるというのは本当ですか。」

黒田
「えぇ、そうですよ。正確には売却益(売却代金-購入代金等)が出た場合に課税されることになりますが、売却益に対する課税という改正だけではなく、公社債等に係る課税関係が平成28年1月1日以降、大きく変わってきます。」


リエ
「そうなんですか。」

黒田
「そもそも公社債等から得られる収入には、預貯金のように定期的に支払われる利子収入、売却による収入、償還による収入があるわけですけど、現行の制度ではその種類によって課税の有無や、課税方式が異なっていました。これらについて平成28年1月1日以降は、原則として申告分離課税方式での課税に一本化されるんですよ。今回は公社債等を売却した際の売却収入に係る課税関係を中心に説明していきますね。」

リエ
「はい。よろしくお願いします。」

黒田
「現行の制度では、公社債等を売却した際の売却益は原則非課税ですが、平成28年1月1日以降は申告分離課税方式で課税されることになります。」

リエ
「申告分離課税というと、確定申告が必要で、給与所得や不動産所得などの総合課税の対象のものとは分けて個別に税額を計算する方法ですね。」

黒田
「その通りです。それで、税率は上場株式等の売却益の場合と同様に20.315%(復興特別所得税、住民税含む)となります。」

リエ
「なるほど~。」

黒田
「それから、公社債等を売却した際に売却損が出た場合には、現行の制度では上場株式等の売却損益や配当所得との損益通算ができませんが、平成28年以降は相互に損益通算が可能になるんですよ。」

リエ
「上場株式等と公社債等の間での損益通算ができるようになれば、利益を圧縮して税金を安くできるようになるんですね。損は出したくはないけど、その損を活かせるようになるのは大きいですよね。」

黒田
「確かに、今までは上場株式等の間でしか損益通算ができなかったわけですからね。さらに、売却損を控除しきれなかった場合には、確定申告をすることによって、その損失を翌年以降3年間繰越して控除することができます。」

リエ
「へぇ~、それを使わない手はないですね。そういえば、公社債等の売買に特定口座の利用はできるんですか。」

黒田
「はい。現在はできませんが、平成28年1月1日以降は特定口座(源泉徴収あり又はなし)での管理もできるようになりますから、特定口座を利用することによって確定申告を省略することも可能になりますね。」

リエ
「それなら簡単でいいですね。」

黒田
「そうですね。今日は公社債等の売却を中心に話をしましたけど、今回の証券税制改正では公社債等の利子や、償還差損益に関する取扱いも変わっていますから、注意しないといけないですね。」

リエ
「金融商品は種類も多いし頭が痛くなりそう。」

(※1)ここでお話をする公社債は租税特別措置法〈平成28年1月1日施行分〉に規定する特定公社債(国債、地方債、外国債権等)を前提にしています。