平成28年度税制改正について
   
カテゴリ:税務
作成日:01/05/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  



リエ
「黒田さん、平成28年度の税制改正の大綱が発表されましたね。消費税の軽減税率が大きな話題となっていますが、法人税の税率も下がるんですよね。」





黒田
「そうですね、確かに法人税や住民税、事業税率の引下げも目玉の一つとなっていますが、中小法人にとってはそれほど大きな減税にはならないんです。」

リエ
「え、どうしてですか?」

黒田
「まず法人税率ですが、元々中小法人の800万円以下の課税所得については、15%という特別な法人税率で法人税を計算することになっています。そして800万円を超えたところで、はじめて本来の法人税率が課されることになっていますので、中小法人にとっては課税所得が800万円を超えないと今回の改正の恩恵を受けることはありません。また恩恵を受けられたとしても、法人税率は段階的に引き下げられるのですが、最終段階でも、法人税率だけでは現行よりも0.7%税率が下がるだけです。」

リエ
「そうなんですか、中小法人で課税所得800万円を超えるという会社はあまり多くはないでしょうね。」

黒田
「その通りです。さらに住民税、正確には都道府県民税と市町村民税ですが、これらは平成29年度から引き下げられます。しかし同時に地方法人税率が上がってしまいますので、住民税と地方法人税との合算では現行と比べてもあまり変わりません。そして事業税率も引下げは行われましたが、引き下げられたのは主に大法人に適用される外形標準課税が適用される場合に用いられる事業税率ですので、外形標準課税の対象外となる場合は関係ありません。」

リエ
「じゃあ実効税率が20%台になるというのは、中小法人は関係ないんですか。」

黒田
「そうですね、中小法人の場合、課税所得が800万円以下であれば、現状でも実効税率は24%を下回ります。一方800万円超の課税所得に対する実効税率は、若干下がりはしましたが、平成30年度以降でも約33.6%ですので、実効税率20%台というのは中小法人の税率のことではありません。」

リエ
「ということは中小法人の課税所得が800万円を超えてしまったら、大法人よりも高い税率になるということですか。」

黒田
「はい、課税所得に応じて税額が計算される部分についてはそういうことがいえますね。」

リエ
「なんか納得いきませんね。」

黒田
「気持ちは分かりますが、主に大法人に適用される事業税の外形標準課税で計算される事業税には、所得金額とは関係なく課される事業税がありますので、単純な比較はできません。さらに中小法人には欠損金や各種税額控除など、大企業には認められていない特典も多く、元々大企業と比べると税制的にはかなり有利になっていて、それが不公平であるという指摘もあったようです。そのような経緯もあって今回の改正では、中小法人の税率はあまり変えずに、大企業の税率を中心に引き下げて、両者の格差を縮めたという側面もあるように思います。」

リエ
「それも分かるような気もしますが………。」

黒田
「中小法人にも外形標準課税を適用しようとする動きもありますので、税制の先行きは不透明ですが、中小法人でも毎年数千万以上の課税所得が出るようなところは、税額だけでいったら大法人になった方が有利になるケースも有り得ますね。」

リエ
「さすがに当社もそこまで課税所得が出るわけではありませんけど、最近の税制改正って大企業を優遇しているような気がしませんか。」

黒田
「確かに大きく稼ぐことができる大企業には一杯稼いでもらって、社員の給料も上げてもらって、日本全体の景気の牽引役になってもらいたいという意向があるようです。理屈は分かりますが、これがどのような結果となるのかは注視しないといけないでしょうね。」