大学新卒の就職活動ルール
   
カテゴリ:その他
作成日:04/30/2014
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 昨年、安倍首相は、大学生の就職活動の解禁時期を現在の「大学3年生の12月」から「大学3年生の3月」に3ヵ月遅らせるよう経済界に要請し、経済界側も受入れを表明した。その結果、2016年卒(現在の大学3年生)の学生から新しい日程での就職活動が始まることになった。




リエ
「そもそも、就職活動のルールって、どうなっているのですか。」
 


旭課長
「昨年の日経新聞に、就職活動のルールの変遷に関する記事が掲載されていたので、紹介しておく。}


 

・1953年~1971年
 文部省・大学・経済界の申し合わせ
 10月中旬から選考開始。
・1972年~1981年
 労働省が加わり「就職協定」
 当初は7月選考開始だったが後に11月に変更。
・1982年~1996年 経済界と大学の「就職協定」
 おおむね会社訪問開始を8月、内定は10月。
・1996年
 協定破りが横行し協定を廃止。
・1997年
 「倫理憲章」の開始。内定時期を10月に。
・2001年
 内定時期に加え、4年生の4月になる前の選考の自粛を明記。
・2011年
 就職解禁を3年の12月、選考開始を4年の4月と明記。
 2013年卒から適用。
・2013年
 首相が経済界に解禁時期を3年生の3月、選考を4年生の8月にするよう要請。2016年卒から適用。

リエ
「ところで、就職協定とか倫理憲章というのは、拘束力があるのでしょうか。」

旭課長
「法的な拘束力はなく、“紳士協定”という位置づけになっているんだよ。実際、現在の倫理憲章にサインしている企業は経団連に加盟している1300社のうち830社ほど。外資系は特に守らない傾向が強いようだ。上の記事を見れば分かるように、当初は政府も関与していたけど、段々薄れてきている。しかし、昨年6月に、アベノミクスの成長戦略を示した『日本再興戦略』において、上記の要請が政府方針として決定されており、今後は政府が積極的に関与すると考えられる。」

リエ
「なぜ、政府が就職活動の時期について、要請したのですか。」

旭課長
「理由としては、以下の3点挙げられている。」


1.

学修時間の確保。
就職活動の早期化・長期化は、学業に専念すべき学生自身の負担になり、修了前年度の教育に支障を来し、結果として学生の学力の低下が懸念される。
 

2.

留学等の促進。
グローバル人材の不足が顕在化しているにも関わらず、就職活動時期の早期化によって、海外で学ぶ学生が減少している。
 

3.

インターンシップ等キャリア教育の早期実施を期待。
働くとは、社会とは何なのかを知るためにインターンシップや職場体験などに積極的に参加することを奨励している。
 

リエ
「就職において、政府としての支援とか、あるのでしょうか。」

旭課長
「具体的には以下のような取組みを進めている。」


1.

在学生に対するキャリア教育・就職支援機能の強化。
卒業・修了前年度の夏季・春季休暇中に行うインターンシップ、地元企業の研究やマッチングの機会の拡充をはじめ、キャリア教育から就職まで一貫して支援する。
 

2.

中小企業への就職支援策の充実・強化。
地域の中小企業と大学等が連携し、中小企業と学生が日常的に顔の見える関係を構築し、合同説明会等によるマッチング支援を全国的に展開する。
 

3.

学卒未就職者への支援の拡充。
学卒未就職者に対しては、新卒応援ハローワーク等のジョブサポーターを通じた支援を実施し、紹介予定派遣の活用により、正社員就職を促進する。
政府としては、これらの支援施策を通じて若者の就職を促進している。」
 

リエ
「新卒の就職活動は大企業が中心になってますけど、それが後ろにずれると、大企業の後に行われる中小企業の採用活動の期間が短くなるので、中小企業にも影響が大きいですよね。」

旭課長
「スケジュールだけでなく、今の日本の企業の採用活動がグローバルな方法とは言い難いので、さらに変わっていくだろうし、現在の採用活動においても改善すべきことはたくさんあると思うよ。」

リエ
「ルールに振り回されて、就職活動の中で挫折感を味わう学生が多くいるようですね。学生さんはこれから長い将来があるのだから、負けずに頑張ってほしいです。」