遺留分制度と減殺請求権について教えてください!
   
カテゴリ:その他
作成日:02/15/2011
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


旭課長
「監査の方は一区切りつきましたか。」

黒田
「はい、先程社長に監査報告を済ませました。」

旭課長
「じゃ少し雑談できますね。」

黒田
「何か相談ごとでもあるんですか。」
 


旭課長
「いや相談と言うか、最近思うことがあって遺言書を書いてみようかと考えているんですがね。大した財産なんてないのですが、自分の人生を振り返りながら財産を整理してみようかと思いましてね。」
 
黒田
「それは良いことですよ。人の命というのは、何時どこで何があるか分かりませんからね。遺言書はないよりあった方が、家族にとっても生きた証の重みを感じることでしょう。」

旭課長
「そこで書くに当たって、どんなことに注意したらいいのか知っていましたら教えてくれますか。」

黒田
「そうですね。私が知っている範囲でお話しますと、遺留分の制度がありますので、それを考えながら誰に何を取得させるのかを明確にし、きちんと意思表示がされていることが大事ではないでしょうか。そうすることによって、身内のトラブルも防げるのではないでしょうか。」

旭課長
「そうか、遺留分について考えていませんでしたよ。
実は、長男については学資としてかなりの金額を与えたのと独立した際に援助しましたので、相続財産は少なめに考えていました。」
 

黒田
「そういうことでしたら、なぜそのような分配にしたか、その旨を遺言書に書き記しておくと良いと思いますが。」

 
旭課長
「家族が争うことなく幸せに暮らせるように、自分の意思を伝える遺言を書いてみますよ。」

リエ
「この話の中で遺留分制度が出てきましたが、どんな制度ですか。」

黒田
「被相続人は、死後においても自由に自己の財産を処分する権利を持っています。民法では、このような意思を尊重する制度として遺贈や相続分の指定を認めている反面、相続制度では遺族の生活保障も十分に考慮もしなさいとも言っています。こうした意味から相続財産の一定割合を一定の範囲の相続人に留保するという制度を民法は設けているのです。これが遺留分制度です。この一定の割合を『遺留分』といい、遺留分を有する相続人を「遺留分権利者」といいます。民法では、遺留分権利が直系尊属(父母など)の場合、遺留分算定の基礎となる財産の3分の1で、配偶者や子供などの場合、遺留分算定の基礎となる財産の2分の1と定めています。なお、兄弟姉妹には遺留分権はありません。」

リエ
「この遺留分の算定の基礎となる財産と言うのは……。」

黒田
「遺留分の算定の基礎となる財産の価額については、

〔相続時の財産の価額(遺贈を含む)+被相続人が生前に贈与した価額+特別受益の額-相続債務〕

注意として、生前に贈与した価額には、相続開始前1年間にしたものに限られますが、1年以上前の贈与でも、契約当事者が遺留分権利者に損害を与得ることを知って贈与したときは、算入します。また、相続人に対して行われた贈与で特別受益となる場合には1年以前の贈与であっても算入されることになります。こうして計算した遺留分の算定の基礎となる財産の価額に各相続人の遺留分の割合を乗じて、各人の具体的な遺留分額が算定されます。具体的な遺留分の侵害額については、各人の具体的な遺留分額からその者が受けた生前贈与・遺贈の額を控除し、さらにその者が得た相続額(相続債務額を差し引いた正味の相続額)を控除したものが具体的な遺留分侵害と額なります。」

リエ
「遺留分を無視した遺言は、無効になるのですか。」

黒田
「無効にはなりません。相続人は遺留分を侵害された部分について、被相続人の処分財産について減殺請求をする権利があります。
この遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続開始及び減殺すべき贈与又は、遺贈があったことを知った時から1年間これを行使しなかったときは時効により消滅しまいます。また、こうした事情を知らなくても相続開始の時から10年を経過したときは時効によって消滅してしまいます。」
 


リエ
「遺留分減殺請求権のことを知らないでいると、もらえる財産ももらえなくなるのですね。」
 
黒田
「私としては、生きているうちに遺留分を考えながら自分の意思を伝える遺言書を作ることと、ご家族は亡くなった人の意思を尊重して欲しいと思います。旭課長、全て自筆で書いて下さいね。全文を書き終わったら、日付、氏名、印鑑を押して保管して下さいね。」

旭課長
「はい、分かりました。ワープロではなく自筆ですよね。」