改正高年齢者雇用安定法の施行
   
カテゴリ:その他
作成日:05/15/2013
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 2012年8月に高年齢者雇用安定法が改正され、今年4月から施行されることになり、その件について、社会保険労務士の守田先生に相談をしています。




リエ
「改正前の高年齢者雇用安定法とどのように変わったのですか?」
 

守田
「まず、現在の高年齢者雇用安定法は2006年に改定施行されて、その時に、(1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講じなければならないということが義務付けれています。今回の改正では、(2)の継続雇用制度の導入が大きく変更されています。」

リエ
「当社は(2)の継続雇用制度で運用しています。そのために、労使協定を結んでいます。」

守田
「そこが変わります。従来は、定年退職者を継続雇用するときに、労使協定により基準を定め、それに適合する対象者だけに絞って雇用契約することができました。しかし、今回の改正では、基準によって対象者を選別することはできなくなり、原則として希望者全員の継続雇用が義務付けられます。さらに、雇用する企業の範囲が、定年を迎えた会社だけでなく、子会社等グループ企業まで拡大しています。」

リエ
「違反した場合に、罰則とかはあるのですか?」


守田
「高年齢者雇用確保措置義務に違反して勧告に従わない企業に対しては、企業名を公表する規定が設けられています。」


 

リエ
「“原則として希望者全員”ということは、例外はあるのですか?」

守田
「例外として、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないことなど、就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。ただし、継続雇用しないことについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である場合に限られます。」

リエ
「経過措置があると聞きましたが。」

守田
「少し複雑ですが、御社のように、2013年3月31日までに継続雇用対象者の基準を労使協定で定めている場合に、以下の経過措置があります。

・2016年3月31日までは61歳以上の人
・2019年3月31日までは62歳以上の人
・2022年3月31日までは63歳以上の人
・2025年3月31日までは64歳以上の人

に対して、それぞれ従来の基準を適用し、継続雇用する対象者を選別することができます。すなわち、65歳までのすべての希望者に対する継続雇用義務が生じるのは2025年4月1日以後ということになります。」

リエ
「年金支給の年齢に合わせて、企業に雇用を義務付けるということでしょうか。」

守田
「その通りです。年金支給年齢が引き上げられて、厚生年金報酬比例部分の支給開始年齢は、2013年4月から段階的に引き上げられます。これによって、60歳で定年を迎えた後に、年金が支給されない期間が生じることになります。そこで、雇用が継続されずに無収入になってしまう人が生まれないよう、かつ企業の負担はできるだけ小さくなるように経過措置を設けたということです。」

リエ
「年金支給と雇用義務がリンクした法改正ということですね。当社の雇用関係にも影響する内容なので、大変参考になりました。ありがとうございます。」