子供の奨学金を親が一括返済した場合における課税関係
   
カテゴリ:税務
作成日:10/11/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  





黒田
「リエちゃんこんにちは。旭課長もご無沙汰しております。」


リエ
「黒田さん、こんにちは。実は旭課長の息子さん○×大学に見事合格されたんですって。」



黒田
「○×大学ですか、素晴らしいです! さすが旭課長の息子様ですね。」





旭課長
「いえいえ、出来の悪い息子なのですが、今度ばかりは頑張ったようで私も一安心しています。ただね、学費がけっこうかかるみたいで胃が痛いですよ。(笑)本人は、奨学金を利用するつもりみたいなんですけどね。」

リエ
「それはまた親孝行な息子さん! 本当素晴らしい。」

旭課長
「本人も頑張る気でいるみたいだし、最終的には私が肩代わりしてあげても良いかなぁとも思っているんですよ。ただ、税金がちょっと心配でね。ほら、贈与税とかそういうのがありそうじゃないですか。」

リエ
「教育費の贈与には贈与税がかかりませんから大丈夫でしょう。ねぇ黒田さん。」

黒田
「いえ、一概にそうともいえないのです。確かにリエちゃんの仰る通り、教育費に充てるために通常必要な財産を、扶養義務者から贈与されたのであれば通常非課税となります。ただ“教育費”とは何をいうかが問題となるのです。」

リエ
「えーっと………確か、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいうのでしたよね。」

黒田
「その通りです。ただ相続税法基本通達では更に、教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与により取得した財産とも規定しています。」

リエ
「そうでした。すっかり忘れていました。」

黒田
「奨学金のようなケースは、返済義務が伴うものであり債務者は当然お子さんになりますよね。これを旭課長に肩代わりしてもらう行為は、“教育費”とりわけ“教育費として必要な都度贈与により取得したもの”とはいえず、相続税法8条に規定する“債務の引受け”とみなされてしまうのです。」

リエ
「ということは、奨学金返済の肩代わり分だけお子様は贈与を受けたことになってしまうのですね。」

黒田
「お子様が無資力であるなどの特殊事情がない限りそういうことになります。ちなみに、“教育資金の一括贈与の非課税特例”の適用を受けることもできないので注意が必要です。」

旭課長
「黒田さん、ありがとうございます。良いことを聞きました。贈与税がかかってしまう可能性があるのでしたら、初めから私が援助することも検討していきたいと思います。」