配偶者控除の改正を巡る議論
   
カテゴリ:税務
作成日:11/22/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  



リエ
「黒田さん、最近配偶者控除の改正について報じられていますが、どうなるんでしょうか。」





黒田
「残念ながら私にも分かりません。税制調査会で様々な改正案が議論されていましたが、結局は控除対象となる配偶者の給与年収上限を130万円か150万円にして、さらに本人の方にも所得制限を設けるという比較的シンプルな改正になりそうだ、という報道は耳にしましたが。」

リエ
「パートで働いている女性が、自分の年収が103万円以下になるように調整するといったことは、割とどこにでもある話ですよね。それが女性の社会進出の弊害になっているということを実感しているのも事実ですから、そういう意味では配偶者控除は無いほうが良いんじゃないかという意見も理解できますよね。」

黒田
「確かにその意見にも一理あるんですが、税制面だけで言えば103万円を超えたからといって、それ程大きな違いはないんです。」

リエ
「確かにそうですよね。103万円を超えても配偶者特別控除があるわけですから、手取が逆転するほど税額が増加するわけではありませんよね。どうして『103万円の壁』などと言われるようになっているんでしょう。」

黒田
「厳密に言えば個別の事情によって必ずしも103万円がベストとも言い切れないのですが、仕組みが分かり難いこともあって『103万円』という金額がイメージとして定着してしまったことが一つ、そしてもう一つは配偶者の給与が103万円を超えると、配偶者手当を支給しなくなる企業が多いということですね。」

リエ
「そういえばパートで働いている女性から、自分のお給料が103万円を超えると、ご主人の配偶者手当がなくなってしまうという話は聞いたことがあります。」

黒田
「実は税金よりも、そちらの影響の方が大きい場合が多いんです。人事院のデータを基にして財務省がまとめた税制調査会の資料を見ると、配偶者手当の制度があって尚且つ配偶者の収入制限の額を103万円にしている企業が、ざっと4割位あるようです。そして配偶者手当の平均月額が1万3885円だそうですから。」

リエ
「確かに103万円を1円でも超えたことによって、その12ヵ月分が無くなるというのは大きな影響ですね。ということは税制改正をしてもあまり意味がないのでは。」

黒田
「否定はできません。ただ経団連が各企業に、配偶者手当の廃止と廃止によって節約されたお金を、子ども手当などの子育て支援に充当するよう呼びかけることを検討しているようです。」

リエ
「なるほど、それはいいかもしれませんね。」

黒田
「どれだけの企業が賛同してくれるかはまだ分かりませんが、比較的大きな企業に勤務する短時間労働者への社会保険の適用拡大とあわせて、女性の社会進出の後押しとなってくれるといいですね。」

リエ
「優秀な女性はたくさんいますから、社会全体でそういう人材を活用できる環境を作っていかないともったいないですよ。」

黒田
「リエさんのような、ですね。」

リエ
「いえいえ」