資格喪失後の出産手当金とは?
   
カテゴリ:人事労務
作成日:02/23/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


今日は社会保険労務士守田先生の訪問日です。




リエ
「先生こんにちは。早速ですが少しよろしいでしょうか。」

守田
「どうぞ。」



リエ
「大学時代の友人で、現在会社に勤めていますが出産を控えている人がいます。彼女、しばらくは子育てに専念するため、育児休業はとらず退職することになったそうです。出産に関してはいろいろな給付制度などがありますが、退職してしまうと出産手当金が受けられないのはもったいないですよね。」

守田
「要件を満たせば、『資格喪失後の出産手当金』を受給することができますよ。」

リエ
「退職後も受けられる場合があるのですか! ぜひ教えてください!」

守田
「まず出産手当金とは、出産のため仕事を休み給与の支払いがない場合に受給することができます。支給日額(一日につき支給される額)は標準報酬日額(標準報酬月額÷30)の3分の2に相当する額で、支給される期間は出産日以前42日間から出産日後56日までの範囲内で仕事を休んだ期間について支給されます。」

リエ
「はい。出産が予定日より遅れた場合は出産予定日以前42日間と数えるのでしたね。」

守田
「よくご存じですね。資格喪失後に出産手当金を受給するには、以下の要件が加わります。
退職日(資格喪失日の前日)において、
(1) 被保険者期間が1年以上あること
(2) 現に手当金を受けているか、受ける要件を満たしていること」

リエ
「(1)の要件は分かりますが、(2)の要件はどういうことでしょうか。」

守田
「出産日(実際の出産日が予定日より遅れた場合は出産予定日)以前42日が到来している場合でかつ退職日に休んでいることという意味です。」

リエ
「出産予定日前6週間から産前休業に入るつもりのようですが、産前休業中に退職日がなければ資格喪失後の出産手当金は受けられないということですね。ちなみに、退職日が出産日後である場合は、受給が可能でしょうか。」

守田
「出産日後に退職した場合は、先ほどの要件を満たしていることになりますので、資格喪失後の出産手当金の受給が可能です。産前退職の場合で会社の了承が得られるのであれば、スケジュールをよくよく確認して退職日を決めていくことになります。」

リエ
「分かりました! ありがとうございます。」

守田
「あと気を付けなければならないのは、出産手当金の受給中は健康保険の被扶養者になれない場合があることです。」

リエ
「えっ! どういうことでしょうか。退職して収入がなくなれば当然ご主人の扶養に入れるものと思っていました。」

守田
「健康保険の被扶養者となるための要件の一つとして、その方の年間収入が130万円未満である必要があるのはご存知のことと思います。そのため、資格喪失後の出産手当金の支給日額を年間収入に換算(※)して130万円を超える場合は、出産手当金受給中は被扶養者となることができません。従ってこの期間中は、ご自身で国民健康保険に加入するかまたは健康保険の任意継続被保険者となることになります。」

リエ
「それは盲点ですね。全く知らなかったです。とにかく知らせてあげようと思います。ありがとうございました。」

※ 出産手当金支給日額×30日×12か月