「年金」について考えよう
   
カテゴリ:人事労務
作成日:12/16/2003
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 社会保険労務士の守田先生が旭課長との打ち合わせを終えて会議室から出てきました。

旭課長
「リエちゃん。守田先生がお帰りになるけれど、何か聞いておくことはない?」


リエ
「良かった、伺いたいことがあります。最近、TVや新聞で年金制度改革について頻繁に報道されていますが、難しくてよくわかりません。要点をわかりやすく教えていただけませんか?」

 


守田先生
「年金制度は複雑だからね。社労士の私でも法律改正についていくのが大変だよ。えーと、今回の厚生労働省の年金制度改革案についてわかりやすく、だったね。簡単に言うと、少子高齢化の進行によって今のままの年金制度を維持することが厳しくなったから、徴収する保険料を増やして、一方で年金給付を減らそうとしているんだ。」
 
リエ
「えー、また保険料が上がるんですか。それにしても、少子高齢化と年金との関係がわかりません。」

守田先生
「現在の日本の公的年金制度は、世代間扶養と呼ばれる仕組みによって運用されていることを知っているかな。つまり、働いている現役世代の負担する年金保険料を主な財源として、引退した世代の受給する年金を賄っているわけだね。だから、少子化によって現役世代が減少すれば受給世代の年金総額が減少してしまう。さらに、高齢化に伴って受給者が増えている。その意味では、保険料切り上げ、年金切り下げという厚労省案もやむを得ない気がするよ。具体的には、サラリーマンが加入する厚生年金保険制度では、現在13.58%(会社+本人負担)の保険料率を19年かけて上げていき(毎年0.354%)、平成34年度から20%で固定しようと考えているようだね。」
 

旭課長
「それ以外の改革案としては、パート労働者の年金加入、離婚時における厚生年金の夫婦分割、70歳以上のサラリーマンからの厚生年金保険料徴収なども挙げられています。しかし、手法としての改革案ばかりで年金の将来像が見えてこないので、年金に対する不安感が払拭できませんね。」

 
守田先生
「少子高齢化が今後も続くとわかっていながら、年金制度は現状維持しようとしているところが年金不信の原因でしょうか。個人的には厚労省の提案する高福祉・高負担の“大きな政府”から福祉・負担とも切りつめた“小さな政府”に変える時期が来たんだと思います。」

リエ
「年金制度が大変なことになっているんですね。私の老後はお二人よりずっと先だけど、これからは気をつけてニュースを見るようにします。」