4月から始まる離婚時の年金分割制度
   
カテゴリ:人事労務
作成日:03/13/2007
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


旭課長
「リエちゃん、恵子さん。今日は社会保険労務士の守田先生に今度(平成19年)の4月から導入される“離婚時の年金分割制度”について教えていただこう。既に結婚している人はもちろん、これから結婚する人にも気になるところだからね。守田先生、お願いします。」
 


守田先生
「中高齢者の離婚の増加と、離婚後の男女の年金受給額に大きな開きがあることは以前から問題とされていたんだよ。この制度が導入されるから、巷では4月になるまで離婚を手控えている奥様達が多い、って噂もあるくらいだね。さて、“離婚時の年金分割制度”と一口に言っても、平成19年4月施行の厚生年金分割制度(任意分割)と平成20年4月施行の第3号被保険者期間の厚生年金分割制度(強制分割)の2段階あるんだ。」
 
リエ
「うわー、最初から難しそう!ちゃんと整理して理解しないと。」

守田先生
「まず、今度の4月に導入される任意分割制度を説明しよう。これは、(1)平成19年4月1日以降に離婚したとき、(2)婚姻期間の標準報酬(給与額に相当)の記録を、(3)当事者の合意で按分割合を決めて、(4)離婚から原則2年以内に請求すると、(5)分割後の標準報酬の記録に基づき双方が年金を受けることができる制度なんだ。当事者同士で按分割合が決まらない場合は、家庭裁判所が定めることになる。」
 

恵子
「この制度を導入しなくても、裁判による年金分割は現在でも可能だと思いますが?」

 
守田先生
「こう考えてみようか。例えば、ご主人の年金を奥さんに分けるとする。年金の受給権は本人に帰属するから、ご主人が受け取った年金の何割かを奥さんに渡すことになる。つまり現状では、ご主人が亡くなったり、連絡が取れなくなったりしたら、奥さんはそれ以上どうすることもできないんだ。でも、今回の制度によって分割すれば、その時点で記録を移してしまうから、その後の心配はいらなくなるよね。」
 


旭課長
「これまでのように個別の言い分に基づいて分割するより、制度導入によって分割方法が示されていれば、仮に裁判になっても双方納得できる結果が導き易いですね。」
 
守田先生
「次に、来年(平成20年)4月に導入される強制分割制度を解説しよう。(1)平成20年4月1日以降に離婚したとき、(2)同日以降の国民年金第3号被保険者(俗に言うサラリーマンの妻)期間に対応する第2号被保険者(サラリーマン本人)期間の厚生年金の標準報酬を、(3)2分の1に分割して、分割後の標準報酬の記録に基づき双方が年金を受けることができる制度なんだよ。当事者の合意は必要なく、年金分割を受ける側(第3号被保険者)の請求のみで分割されるんだ。」
 

リエ
「離婚を手控えている奥様達は、婚姻期間の全部が2分の1に分割されると勘違いしている可能性がありますね。平成20年4月以降が強制分割の対象なら、よっぽど将来の離婚じゃないと制度を活用する意味がないかもなぁ。結局、夫婦円満が一番ですね。」

 
旭課長
「うーん、人ごとじゃ、すまされないぞ。きちんと理解しておこう………。」