複数の事業所に勤務した場合の社会保険の取扱い
   
カテゴリ:人事労務
作成日:10/18/2016
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


今日は守田社労士の訪問日です。





リエ
「先生こんにちは。早速ですがよろしいでしょうか。」


守田
「どうぞ。」




リエ
「学生時代の友人で、起業して会社の取締役になっている人がいるのですが、この度2社目の会社を立ち上げて、そちらでも取締役に就任し、両方の会社から役員報酬が支払われる状態となるそうなのです。この場合の社会保険の適用はどのようになるのでしょうか。」

守田
「被保険者が同時に複数(2ヵ所以上)の適用事業所に勤務することになった場合で、新たに勤務する事業所でも被保険者の資格があるときは、『被保険者資格取得届』を提出します。加えて、被保険者が選択するいずれかの事業所を管轄する年金事務所に『被保険者所属選択届・二以上事業所勤務届』を提出します。これは、複数の事業所で被保険者資格を取得したことにより、管轄する年金事務所等が複数になる場合に、主たる保険者(※)および年金事務所を選択し、管轄する年金事務所が同じ場合は、主たる事業所を選択するものです。被保険者は、自らが選択した保険者から交付された『健康保険被保険者証』を使用することになります。」

リエ
「保険料はどのようになるのでしょうか。」

守田
「それぞれの事業所から支払われる報酬月額の合算額をもとに標準報酬月額が決定されます。これに保険料率を乗じて保険料を計算するのですが、それぞれの事業所の保険料は報酬月額に応じて按分されます。具体例で説明すると以下のようになります。

<前提条件>
選択事業所:東京(協会けんぽ)、年齢:40歳未満、平成28年9月分から
報酬月額 A社 900,000円、B社 150,000円  よって、報酬月額合計 1,050,000円
これを保険料額表に当てはめると、標準報酬月額は
健康保険 1,030,000円、厚生年金 620,000円 となります。
そして、それぞれの事業所で負担する保険料額は、以下のように計算します。
健康保険料   A社:1,030,000円×9.96%×900,000/1,050,000=87,932.5
        B社:1,030,000円×9.96%×150,000/1,050,000=14,655.4
厚生年金保険料 A社:620,000円×18.182%×900,000/1,050,000=96,624.3
        B社:620,000円×18.182%×150,000/1,050,000=16,104.05

この保険料額を会社と本人が折半して負担します。」

リエ
「実際に支払われる報酬月額で按分計算するのですね。」

守田
「そうです。それぞれの事業所に『保険料額のお知らせ』が届きますので、これを確認して報酬から控除すれば間違わずに計算できますが、仕組みを理解しておくとお知らせがなくても対応できますよね。それにしてもリエちゃんの友達にそんな方がいるなんて、なかなかのやり手ですね。」

リエ
「そうなんですよ。私も将来ビッグになって、いくつもの事業所から報酬を得られるように頑張ります!」

※保険者とは
健康保険法に定める健康保険事業の運営主体。 保険者には、全国健康保険協会と健康保険組合の2種類があります。