労災保険の給付~療養補償給付~
   
カテゴリ:人事労務
作成日:05/26/2009
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 今日は守田先生がいらっしゃっています。

リエ
「先生、こんにちは。早速ですが、お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか。」

守田
「どうぞ。何でしょうか。」

リエ
「友人があるお店の販売員として働いているのですが、商品の陳列作業中に陳列用ポールが倒れてきて彼女に当たり打撲したそうなんです。」

守田
「それは大変ですね。怪我の程度はどうなのですか? 病院は受診されたのですか?」
 

リエ
「首から背中にかけて痛みがあるので、病院で診察を受け、薬局で湿布薬を出してもらったそうです。先生、このケースは労災に当たるのではないでしょうか。」

 
守田
「そうですね。業務上の災害に該当すると思われますね。業務上負傷したり疾病にかかって療養を必要とするときは、労災保険の療養補償給付を受けることができます。」

リエ
「療養補償給付とは具体的にどのようなものでしょうか。」

守田
「具体的には現物給付です。つまり病院や薬局での診察や薬剤の支給などを、費用負担なしに受けることができるというものです。」

リエ
「無料で受けられるということですよね。手続きはどのように行ったらよいのでしょうか。」

守田
「かかった医療機関が労災指定を受けているかいないかによって、以下のように異なります。
 労災指定の医療機関にかかった場合は、事故の状況などに関する事業主の証明を受けた『療養補償給付たる療養の給付請求書』(通称5号様式)を、医療機関の窓口に提出します。お友達の場合は薬局にもかかったようですので、薬局提出用と2通用意する必要がありますよ。請求書は医療機関等を経由して所轄の労働基準監督署、都道府県労働局から厚生労働省に送られ、医療機関に費用が払われる仕組みとなっています。
 労災指定でない医療機関にかかった場合には、いったん本人が費用の全額を医療機関に支払った後、診療担当者及び事業主の証明を受けた『療養補償給付たる療養の費用請求書』(通称7号様式)を所轄の労働基準監督署に提出し、労働基準監督署から直接支払を受けることになります。」

リエ
「なるほど。仮に怪我や病気が長引いてしまった場合は、いつまで治療等を受けられるのでしょうか。」



守田
「療養補償給付は傷病が治ゆするまで行われることになっています。この『治ゆ』とは傷病の症状が安定し医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなったときをいい、いわゆる『症状固定』の状態を指します。必ずしも傷病を負う前の状態に戻ることではないことに注意が必要です。万一傷病によって障害が残ることになった場合には、障害補償給付という障害の程度に応じた給付(年金又は一時金)が受けられる場合があります。」
 
リエ
「よくわかりました。幸い彼女はたいしたことなさそうなので良かったです。早速教えてあげようと思います。」