経営者保証に関するガイドライン
   
カテゴリ:財務/資金繰り
作成日:08/26/2014
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 ここはタナカ・デザインオフィスの会議室。先程までリエちゃんと伊豆野先生、そして旭課長が来期の予算について議論をしていました。今は打ち合わせが一段落し、話題は経営者保証に関するガイドラインに移ったようです。


旭課長
「伊豆野先生、そう言えば経営者保証に関するガイドラインが公布されてから約半年が過ぎましたが、実際に経営者保証を外すことができた経営者はどのくらいいるのでしょうかね………。」


 




伊豆野税理士
「経営者保証を外すことができた中小企業の社長さんも徐々に増えてきてはいるようですが、まだまだ全体の数としては少ないようです。」
 

リエ
「えーと、すみません。経営者保証に関するガイドラインって何でしょうか?」


 
旭課長
「そうか。リエちゃんは先日の南条支店長のところの勉強会にでられなかったからね。けっこう話題になったんだよ。」

伊豆野税理士
「経営者保証に関するガイドラインとは、全国銀行協会や日本商工会議所などが、協調して作成した中小企業経営者の個人保証についての指針のことです。強制力のない自主ルールではありますが、経営者保証なしの融資や保証債務の履行請求を限定的に留めることを通じて、個人保証への依存による画一的な融資慣行からの脱却を促し、貸し手と借り手の信頼関係を向上させることが期待されています。」

旭課長
「このガイドラインには大きく二つの柱(※)があるのだけれど、経営者保証を外せる目安が示されている一つ目の柱が特に話題になっているんだ。」

伊豆野税理士
「えぇ。中小企業の社長にとって個人保証というのは、精神的な負担でもありますし、事業承継を進めるにあたっての弊害にもなりますから。保証を外せるのであれば外したい経営者は多くいるはずです。」

リエ
「でも伊豆野先生が保証を外せた経営者は現状でそんなに多くないとおっしゃられましたが、どのような要件が必要なのですか?」

伊豆野税理士
「はい。経営者保証を外すためには三つのポイントがあります。まず一つ目は会社と経営者の資産分離が明確になされていることです。例えば、会社から経営者への貸し付けは行わないなどが挙げられます。二つ目は財務基盤の強化です。業績が堅調で十分な利益と内部留保があること、業績が不調の場合には内部留保で全額の借入返済が可能なことが例として挙げられます。三つめは、経営の透明性です。金融機関に対して試算表や資金繰り表などの定期的な報告を行うことが例として挙げられています。これら三つが確保された場合、金融機関は経営者保証に依存しない融資を検討するとされています。」

リエ
「うーん。三つの条件を同時に満たすのはなかなか大変そうですね。」

旭課長
「もともと強制力のないルールだし、中小企業は慢性的に資金不足の会社が多いから、特に二つ目の要件である財務基盤の強化を満たすことができる会社はあまり多くないと思うな。今後もっと適用される中小企業が増えてくると良いけれど………。」

伊豆野先生
「ガイドラインの存在自体を知らない方もまだまだ多いと思います。今後ガイドラインを通じて中小企業の経営者にとって明るく使い勝手の良い融資環境が整うようになってほしいものですね。それが国の発展にもつながるはずですから。」



(※)

経営者保証に関するガイドラインが定めている主な二つの内容
 

(1)

法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと。

(2)

多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて100万円~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討し、保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること。