再延長された中小企業金融円滑化法
   
カテゴリ:財務/資金繰り
作成日:05/01/2012
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 田中社長、黒田さん、リエちゃんの3人が食事をしています。3人はなにやら、中小企業円滑化法をめぐって話をしているようです。
 

田中社長
「黒田さん、以前お聞きした中小企業金融円滑化法※1(以下円滑化法)ですが、確か今年3月までの時限立法でしたよね?今から貸出し条件の変更を受けようと考えた場合、この法律の適用は受けられないのでしょうか?」

 
黒田
「社長、円滑化法は金融庁から期限延長されることが公表されており、平成25年3月まではその適用が受けられることになっています。」

リエ
「やっぱりこの不景気ですものね。私は延長すると思っていましたよ。だってここで円滑化法を打ち切ってしまったら中小企業はみんな大変ですもの。来年もまた延長するのではないかしら?」

黒田
「その可能は低いと考えておいたほうがいいですね。今回の期限延長に伴って金融庁からは、“最終延長”“今回に限り1年間再延長”というようなキーワードがだされています。つまり、リーマンショックなどによる経済低迷期から中小企業の倒産を助けてきた円滑化法は、本当にこの1年で終了という公算が高いのです。」
 


リエ
「そうなのですか、金融庁は円滑化法をどのように評価し、期限延長についてなぜ“1年間限定”という表現をつかったのでしょうか?」
 
黒田
「金融庁は、円滑化法の取組みは、実行率が9割を超えているなどの実績から十分に定着していると評価する一方で、貸付条件の変更を受けながらさらなる変更がされていたり、貸付条件の変更を受けていながら、経営改善計画が策定されない中小企業者等がいることを問題視しています。そのような状況を踏まえたうえで、円滑化法をいたずらに再延長することは、モラルハザードへの懸念があったり、本当の意味で中小企業を立ち直らせることにはつながらないと判断したようです。」

田中社長
「円滑化法は、あくまでも止血であって全てが解決する訳ではないですからね。では、平成25年3月以降について金融庁はどのようなスタンスをとっているのでしょうか?」
 

黒田
「金融庁は今後、止血ではなく治療、つまり総合的な出口戦略にステージを移していくことを発表しています。期限延長をしたこの1年間を、返済猶予などに積極的に応じるよう金融機関に対して求める施策から、中小企業の事業再生に向けた支援を促す施策への移行期間と位置付けているようです。」

 
リエ
「中小企業の事業再生に向けた支援といっても、具体的にはどのようなことを考えているのかしら。」

黒田
「金融庁は、金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮を促したり、新規融資の促進を図るための資本性借入金等の活用及び動産担保融資等の開発・普及を考えているようです。さらに、中小企業に対して事業再生支援を図るための様々な制度・仕組みの活用などを集中的に促進していことなどを打ち出しています。」

 
 
※1 中小企業金融円滑化法の主なポイント
 中小企業等から、返済の負担軽減の申込を受けた場合に、金融機関はその相談に乗る努力義務が課せられ、その状況を金融庁に報告する必要がある。中小企業は貸付条件変更に際して金融機関と連携をしながら、抜本的な経営改善計画や返済計画を作成することが求められる。実績として平成21年の施行から約250万件にのぼる条件変更の依頼に対して約9割の実行がなされてきた。