「経理業務」を平準化するための着眼点はここにあり!
   
作成日:08/27/2004
提供元:月刊 経理WOMAN
  


暇な時期と多忙な時期との差はこう埋める
「経理業務」を平準化するための着眼点はここにあり!




 経理業務は、1ヵ月のうちでも締めがあったり、支払日が決まっていたり、業務の忙しい時期と暇な時期と差が出てきます。この差を解消してできるだけ業務を平準化するためにはどうしたらよいのか、実務経験者がアドバイスします。

繁閑の波がある経理業務

 経理の仕事については、1)毎日行なう仕事、2)毎月行なう仕事、3)毎年行なう仕事、4)突発的に生じる仕事があります(図表1参照)。

 
図表1

おもな経理業務の概要(例)

●毎日行う仕事
 ・現金出納
 ・銀行振込
 ・経費処理
 ・帳票類の発行整理

●毎月行なう仕事
 ・給与計算及び支払
 ・経費支払(総合振込)
 ・予実分析
 ・資金繰り計画
 ・財務会計業務
 ・売掛金の回収
 ・請求書発行
 ・月次試算表の作成

●1年の仕事
 ・銀行融資、増資
 ・従業員の異動関連
 ・債権保全

●突発的な仕事
 ・銀行融資、増資
 ・従業員の異動関連
 ・債権保全
 

 そして決算に代表されるように、これらの仕事には必ず締切りがあります。そのため、どうしても締切り前後で繁閑の差が大きくなってしまうのが、経理の仕事の特徴といえるでしょう。たとえば、月末から月初にかけては、請求書発行、源泉徴収事務、月次決算、給与計算などの仕事が発生するため忙しく、月中は比較的手が空くといった具合です。

 また、年末には年末調整、年明けには法定調書の作成、さらに決算期には売上確定、棚卸、減価償却などの業務が発生し、繁忙の波にさらされます。

 繁閑の波があると、業務が集中する時期には時間外労働が避けられず残業代が発生し、逆に手の空く時期に手待ち時間ができてしまうため、会社としては人とお金を有効活用できないといったデメリットが生じます。

 一方、経理担当者自身も、前倒しで仕事を進めなければ、繁忙期に仕事に追われ、思わぬミスを引き起こすことにもなりかねません。

 経理業務の平準化については、大掛かりなシステムを導入する方法や、アウトソーシングを利用するといった方法もありますが、ここでは、ちょっとした工夫で経理の仕事を平準化し、効率的に仕事を進めるための方法について、私の経験をもとにアドバイスしていきたいと思います。


平準化の進め方

その1
仕事を前倒しして行なう

 仕事には、1)事前準備、2)本来の業務の遂行、3)事後整理があります。この中で、準備や整理を繁忙期に行なっていることが意外と多かったりしないでしょうか。

 準備に要する時間は、あらかじめ余裕があるときに処理し、ピークを避けることが大切です。

 たとえば、請求書処理について、締日まで溜めておき、まとめて処理するのではなく、エクセルなどで「支払予定表」を作成し、他部署から請求書が回ってくる都度入力していけば、どこにいくら支払えばよいのかがひと目で分かり、実際処理するときに時間が省けます。

 また、1年の中でもっとも忙しい時期は決算時だと思いますが、決算直前になってバタバタしないためには、月次レベルでできることを事前に準備しておくことです。

 たとえば、固定資産台帳を作成し、期中の固定資産の除却、売却を把握していけば、決算時に固定資産の内訳が把握しやすくなります。

その2
業務を効率的に進める工夫をする

 自分の行なっている仕事を見直してみると、書類、帳票類の削減、処理方法などにおいて、時間の短縮に結び付く改善アイデアが浮かびます。

 銀行が遠くて時間を取られてしまうという人なら、インターネットバンキングを利用する方法もあります。会社にいながらにして手続きができますし、手書きの振替用紙と違って、書き損じても訂正や、新規の支払先の登録も簡単にできます。

 また、各部署から請求書が回ってくる都度パソコンに入力しておけば、振込日にワンクリックで入金手続きができるので、かなり効率が図れます。

 日常の業務で改善できることもたくさんあります。たとえば、ファイリング。請求書を日付別に、相手先ごとに、さらに五十音順でまとめておくようにすれば、忙しい時期に時間を取られずにすみます。

 また、仮払いや旅費精算について、社内の規定フォームで、社員が書き漏らしや書き間違いが多かったりする箇所があるなら、記入フォームの改善を検討してみてはいかがでしょうか。

 私は以前勤めていた会社で、書き方見本を作って社員全員に社内メールで告知をしたほか、社内の掲示板に張り出しました。その結果、書き直しをお願いし、再度処理するといった手間がほとんど省けるようになりました。

その3
他の人へ応援依頼できるような体制を組んでおく

 同じ時期に、ある人は忙しくて、ある人は比較的手が空いている場合があります。

 それぞれの仕事の内容によって繁閑の時期が異なっている場合、上司に提案するなどして、部内や社内で仕事をシェアできるような体制を整えておくとよいと思います。

その4
スケジュールを立てて、仕事を進める

 仕事全体の流れをつかんで処理をしていくことも繁閑の波の対処で大切なことです。

 私の場合、1ヵ月の計画を表に書き出し、優先順位を付けています。そして、計画の進捗具合を見ながら、帰宅する前に翌日に行なう仕事の棚卸をし、段取りを考えます。こうしたスケジュールを立てるようになってから、かなり効率的に仕事が進められるようになりました。

 計画を立てるときは、こまごまとした1日単位の計画は必要ないと思います。計画を立てることが仕事になってしまい、それがだんだん苦痛になって
しまいかねないからです。

 中には、書くことが面倒で頭で考えるという人もいるかもしれませんが、忙しくなると、頭では分かっているつもりでも案外忘れてしまったり、抜けが出てきたりするものです。

 また、メモを見ることで、後からやり忘れたことを思い出すこともあります。

その5
業務知識を身に付ける

 経理の知識を身に付けておくことが経理業務をスムースに運ぶことにつながります。

 実務で分からないことが出てくると、本で調べたり、人に聞いたりするための時間を要してしまいます。その結果、繁忙期に余裕を持って仕事をしようと前倒しして仕事を進めていたとしても、結局、時間に追われてバタバタしてしまい、平準化につながらないといったことにもなりかねないからです。

 そこで、閑散期などを使って、簿記など実務レベルを上げるための勉強をしてみるとよいかもしれません。

〔月刊 経理WOMAN〕