最新版/信用保証協会の「上手な使い方」ズバリ教えます
   
作成日:12/22/2006
提供元:月刊 経理WOMAN
  


06年4月から保証料率が改定、料率の割引制度も新設
最新版/信用保証協会の「上手な使い方」ズバリ教えます




 借入れの際に信用保証協会にお世話になる中小企業は少なくありません。しかし、通常は銀行の担当者にまかせっきりで、信用保証協会の役割や制度についてよく知らない経理担当者も多いようです。そこでここでは、最近の動向と併せて、中小企業が融資を受ける際、信用保証協会がどのように関わっているのか、また、その上手な活用方法等についてアドバイスします。

●信用保証協会とは

 大企業にくらべ信用力のない中小企業が無担保で金融機関からお金を借りるのは、なかなか難しいものです。そうしたときに企業の保証人となり、金融機関からの借入れが円滑に進むよう助けてくれるのが、信用保証協会なのです。

 同協会は、信用保証協会法にもとづいて設立された認可法人です。全国52ヵ所に設置されていますが、それぞれは独立して業務を行なっています。現在、同協会が関わっている融資は349万件にのぼり、全国の中小企業のうち約4割の企業が同協会のお世話になっています。


●信用保証制度の仕組み

 繰返しになりますが、信用保証協会は、企業が金融機関からの融資を受ける際、その保証人になることで企業を助けてくれます。しかし同協会がしてくれるのはそこまでで、直接企業にお金を貸してくれることはありません。融資の資金は、あくまでも金融機関から出ています。ですから企業の返済は、当然、金融機関に対して行なわれるのです。

 ただし、同協会からお金が出ることもあります。それは、企業側に返済不能の「事故」が起きたときです。その際には、融資元の金融機関が同協会に対して「代位弁済請求」の手続きを取り、いったん同協会が金融機関に返済されていない残額を支払います。その後、企業は同協会に立て替えてもらった分とそれに対する損害金を、実情に応じて同協会に返済していくことになるのです。

 ちなみにこれまでは、求償債務の弁済後6ヵ月以上経っていなければ、その企業は同協会の新たな保証制度を利用できませんでした。しかし06年よりその制限が撤廃され、求償債務が残っていても、同協会からの保証を受けられるようになりました。ただしそれは、ある程度の返済がなされ、事業がきちんと行なわれている企業に限られますので、どの企業にも当てはまるというわけではありません。



代位弁済とは信用保証付きの貸付金等が中小企業側の都合により、金融機関への返済ができなくなったとき、信用保証協会が金融機関に対して貸付残高を支払うことをいいます。

●保証限度額

 信用保証協会には、さまざまな保証制度があり、それぞれに限度額が設定されています。それらを組み合わせて使うことは可能ですが、一企業当たりの保証限度額を超えての保証は受けられません。

 基本的には、無担保保証の場合は最大8000万円まで、担保がある場合は2億円までを保証してもらえます。つまり、両方合わせれば最大2億8000万円(組合の場合は4億8000万円)までを保証してもらうことが理論上は可能です。ただし、それはあくまでも限度額であり、企業の事業実績や事情によって、その額は変わってきます。

 なお、8000万円まででしたら原則無担保で経営者のみの連帯保証で融資を受けることができますが、実質の経営者が別にいる、営業のために必要な許認可を別の人が持っている等、事業をする上で不可欠な人が他にいる場合には、その人の連帯保証も必要となります。


●利用できる条件

 では、どのような企業が信用保証協会の制度を利用することができるのでしょう。次に、その「条件」についてお話していきましょう。


1)

どんな業種が利用できるの?
 
 ほとんどの業種が利用できます。ただし、農林水産業、金融業、風俗関連業といった保証の対象とならない業種もあるので注意が必要です。

 また、税金の滞納があったり、粉飾決算を行なっている、資金使途が事業資金ではないといった場合も、当然ながら利用することはできません。
 

2)

全国52ヵ所にあるどの信用保証協会でも利用できるの?
 
 どこでも利用できるわけではありません。個人事業者の場合は、住居または事業所のどちらかが、法人の場合は本店または事業所のどちらかがある、その地域の信用保証協会を利用することになります。

 たとえば、本店が東京に、営業所が大阪にある場合は、東京と大阪、両方の保証協会を利用することができます。しかしこの際の保証額は、両者合わせて2億8000万円が上限となります。
 

3)

業種による条件は?
 
 業種によって、資本金と従業員の条件が異なります。

 
 
●保証申込みから融資実行まで

 申込方法は大きく分けて二つあります。

 一つは、信用保証協会に融資を申し込み、そこでの審査を経て同協会が金融機関に融資を依頼する方法です。これを「斡旋」といいます。

 もう一つは、金融機関に直接融資を申し込み、金融機関の方から同協会の保証を付けることをすすめる方法で、これを「経由」といいます。

 斡旋、経由、どちらの方法をとっても構いませんが、一般的には、創業から間もないなどの理由でメーンバンクが決まっていない企業等の場合には斡旋が、そうでない企業等の場合には経由が多いようです。

 申込みから融資が実行されるまでの日数を見ると、同協会の制度を利用し、返済がきちんとなされた実績のある企業であれば、おおむね1週間から10日で融資は実行されます。

 一方、実績がない企業の場合は、申込みから融資の実行まで、2~3週間を要します。

 また、経由の方が、斡旋よりも短い日数での融資の実行が可能です。というのも、斡旋は同協会の審査を経てから金融機関へ話が行き、そこからさらに金融機関の審査がなされるため、審査の時間が二重に取られるからです。

 そうしたことを鑑みれば、取引のある金融機関があるなら、経由申込みの方が得策といえるでしょう。書類についても金融機関が揃えてくれるので安心です。


●保証料率の改正

 信用保証協会を利用し融資を受ける際、企業側には利息とは別に、「信用保証料」というものが必要になります。

 この信用保証料は、保証金額×保証料率×保証期間(月数)/12により算出されますが、これまで、一律1・35%だった保証料率が、06年4月より0・5~2・2の九つに区分されました。これは、業績の良し悪しにかかわらず保証料率が一律なことへの不公平感を是正するためにとられた措置です。

 たとえば、財務状況が良い企業であれば0・5%、芳しくない企業の場合は2・2%と、同協会側のリスクが高くなるに従い、保証料率は高くなっていきます。この保証料率は、その企業の直近の2期分の決算書にもとづいて決定されます。

 また、担保があったり、日本税理士会連合会等が制定している「中小企業の会計に関する指針」(平成18年4月改定版)に準拠した財務諸表を作成している等、一定の会計基準にもとづいて決算書を作成している企業であれば、この保証料率はそれぞれ、0・1%ずつ割引かれます。

 さらに、合計金額が1000万円以下の小口融資や、地方公共団体がタイアップしている制度融資の中には、一般の保証料率よりも少ない料率を設け、企業の負担軽減を図っているものもあります。なお、06年4月以前に実行された融資に関しては、この保証料率の改正は適用されません。


●お得な利用法

 ここからは、信用保証協会を利用する際に役立つ具体的な情報を紹介していきます。


1)

国が指定する不況業種に該当すれば、保証料が安くなる(セーフティネット保証)

 国は3ヵ月ごとに不況業種を指定しています。市区町村長から、その不況業種に該当すると認定を受けた企業は、最大2億8000万円までの保証額を、倍の5億6000万円まで広げることが可能です(該当するすべての企業が5億6000万円まで保証されるとは限りません)。またこの制度を利用すると、保証料や金利も割引が適用されます。

 06年4月の保証料率の改正によって、従来よりも保証料率が高くなってしまうような業績の悪い企業の中には、このセーフティネット保証を上手に活用しているところも多いようです。
 

2)

市区町村とのタイアップ保証も
 
 1)は国の施策にもとづくものですが、それとは別に地方公共団体とタイアップした制度融資もあります。

 これは、各市区町村が独自に定めた振興事業を行なっている企業であれば、保証料の補助等を受けられるというものです。ただし、この制度の場合、審査から融資実行まで1~2ヵ月を必要とするため、時間にゆとりのあることが前提になります。
 

3)

「一本化」が可能
 
 複数の債務を抱えていると、返済期間はバラバラな上に、合算すると月々の返済額がかなりの金額になることは少なくありません。そうした場合に便利なのが、「資金繰り円滑化借換保証」です。この制度を利用することで、債務を一本化し、返済期間を長くとることで、月々の返済額を減らすことができます。
 
 他にも、不動産担保がなくても売掛債権を担保として融資を受けられる「売掛債権担保融資保証」や、あらかじめ一定の枠を決めておいて、その枠内であれば自由にキャッシングできるという「当座貸越根保証」といった制度もあります。

 前者は売掛債権を担保に入れるという承諾書を得意先からとったり、登記所に登記したりする必要があるため、企業側に少々手間が掛かるという難点があります。また、後者は、今年から担保が必要なくなったために、これまでよりも利用しやすくなりました。

 このように、信用保証協会にはさまざまな保証制度があり、取引金融機関の融資(プロパー融資)と、同協会の制度融資を併用することで、融資枠を拡大できるという利点があります。

 読者の中には、「金融機関のプロパー融資を断わられてしまったから」とか、「わが社は赤字だから」と、融資を諦めてしまっている人がいるかも知れません。しかし、同協会では保証の際に、財務面での「安定性」「収益力」「成長性」や、「企業経営力」「経営意欲」「信頼性」等、経営者の手腕も重視して多角的に判断しますから、業績が悪いという理由だけで保証を断わられるとは限りません。

 ですから、たとえ業績が芳しくなくても悲観せずに、まずは1度、最寄りの信用保証協会に足を運んでみてはいかがでしょうか。その際、直近の2期分の決算書を持参すると(経営者であれば、免許証などの身分を証明できるものも)、具体的な話がしやすくなります。

 全国52ヵ所にある各信用保証協会の所在地、それぞれの詳しい取組みについては、「全国信用保証協会連合会」のホームページから閲覧できます。

 同協会の保証制度を上手に利用して、会社の安定経営や事業の発展を図ってください。(協力:東京信用保証協会)


〔月刊 経理WOMAN〕