顧問税理士の採点表
   
作成日:04/24/2003
提供元:月刊 経理WOMAN
  


あなたの会社が払っている顧問料は高いか安いか?
「顧問税理士さん」
のコストパフォーマンス採点表




 中小企業が税理士と顧問契約をする場合、税理士に支払う毎月の顧問料の相場は、一般には3万円から5万円といわれています。しかし、その顧問料の金額が業務の内容に見合っているのかどうかなど、疑問に思う経理担当者は少なくないようです。

 そこでここでは、よい税理士の見分け方から顧問税理士の費用対効果をチェックするポイントまでをアドバイスしていきましょう。



 2002年4月、税理士法が大幅に改正となり、その結果、税理士の広告規制が撤廃され、顧問料の最高限度額規定も廃止されました。これを受けて、税理士が自分のホームページを作ったり、事務所独自の報酬規定を作成する動きが加速しています。

 そんな中、税理士の報酬をめぐるある事件が起こりました。昨年9月16日付の日本経済新聞に、「税理士報酬は4割下落している」との記事が掲載されたことに対し、税理士会が誤解を招くと抗議したのです。その記事を書いた記者は一部について誤りを認め、その後訂正記事を掲載しました。

 この事件は、停滞する日本経済の影響が税理士にも及んでいることの現われといえるでしょう。現在、税理士界全体が、報酬額について非常にナーバスになっているのです。

 それを知りつつあえていえば、顧問料の相場は法人が月に3万円以上、決算時に20万円以上であり、個人は月に2万円以上、確定申告時に10万円以上だと私は個人的に思っています。

 しかし、いくらの顧問料が妥当かということは一概にいえません。仕事の内容や関与の度合いにもよりますし、顧問先の事業の規模によっても金額は変わってきます。

 また、これまでほとんどの税理士事務所が報酬規定を定めていなかったというのが実情のため、顧問料は旧顧問料を参考に決定されたケースが多いようです。

 みなさんの会社でも業務の説明や見積りの提示、また書面による業務契約がされないまま、毎月何となく顧問料を支払っているという会社が案外少なくないのではないでしょうか。

 顧問料の“中身”が明らかになっていなければ、みなさんがその金額を不満に感じても無理はないでしょう。顧問料が高いか、安いかという議論の前に、もう一度自社の税理士顧問料について考えてみることは大事なことだと思います。



 下に、現在の税理士に対する顧問料が適正かどうか、簡単にチェックできる「税理士のコストパフォーマンス採点表」を紹介します。

 日頃顧問料が高いと感じていても、基準がよく分からない…という人は、ぜひ一つの参考にしてみてください。



採点結果はページの最後に!!

 よく税理士になった経緯のみで税理士を評価する人がいます。具体的に税理士の資格を取得するには、

1)税理士試験に合格する
2)公認会計士試験に合格する
3)税務署に一定年数以上勤務する
4)大学院を二つ出る(俗にダブルマスター組と呼ばれます)

という方法がありますが、今の時代それらを評価の参考にしてもあまり意味はありません。

 なぜなら、税務署のOB税理士なら税務署に顔が利くというのは今や神話に過ぎませんし、税理士や公認会計士の試験のために勉強した知識が、実務で直接役立つことはまずないからです。

 税理士を評価する上で大切なのは、その税理士の姿勢です。税法は毎年改正され、顧問先からの要求も多様化しています。ですから、顧問料の金額如何だけでなく、そうした時代のニーズに対応できるよう自己研鑽に努めているかどうかという点で、税理士のよし悪しを判断して欲しいと思います。



 もし、顧問料が高いと感じたり、顧問料の金額の根拠がよく分からないという場合は、一度顧問税理士に相談してみることをお勧めします。

 しかし、そのためにはみなさんも税理士の仕事の内容を再確認して、税理士に何を依頼したいのか、明確にしておかなければなりません。

 いうまでもないことですが、主な税理士の仕事には次のようなものがあります。

【税理士業務】
1)税務代理
2)税務書類の作成
3)税務相談

【会計業務】
1)財務書類の作成
2)会計帳簿の記帳代行
3)会計相談

 まず、現在どこまでの仕事を税理士がしてくれているのか、見直してみましょう。それに対して、新たに依頼したい仕事、また依頼する必要のない仕事など、できるだけ細かく仕事内容を検討します。

 たとえば、最近日々の記帳は記帳代行会社に依頼したり、社内に会計ソフトを導入して経理担当者自身が記帳を行なうケースが増えています。そのような場合、顧問料に記帳代行の料金が含まれているなら、その分の顧問料を減額してもらえるかもしれません。

 もし、今まで顧問契約を正式に結んでいないようなら、この機会にきちんとしておくとよいでしょう。その際に、あらかじめ見積書をもらうようにしてみてはいかがでしょうか。

 また、よく顧問先の不満として、税理士の先生が来てくれない、経理の知識があまりないのに税理士がきちんと説明してくれない…等が聞かれますが、税理士事務所も規模によって特長があることを知っておいてください。

 たとえば、大きい事務所の場合、月次監査は税理士本人ではなく職員が月に1度顧問先を訪れ、帳簿や伝票をチェックして振替伝票を切り、その際に前月までの資料の内容を説明するのが一般的です。

 一方、若手の税理士が1人で構える事務所の場合は、税理士本人が顧問先を訪問するため直接話ができるというメリットがありますが、実際に経営者が聞きたいこと等は、税理士よりもベテラン職員の方が経験上知っていることもあるようです。

 税理士も人間ですから完璧な人はいません。ですから、もし顧問税理士に対して不満があったら、早めに税理士と話をするようにしてみてください。そのときの対応の仕方で、税理士の資質が分かることもあるでしょう。

 ただし、税理士も仕事に対する適正な対価は要求するはずです。安さばかり追求すれば、それなりの仕事しかしてもらえません。



 私は税理士事務所を開業して7年になりますが、顧問先を見ていると、経営者は孤独で、人には打ち明けられない悩みを少なからず持っているものだと感じます。

 そのため、経営者は気軽に相談できて、その際に「それをやっても大丈夫です。何も心配いりません」そういってもらえるのを望んでいるわけです。ひと言でいえば“安心感”でしょうか。

 そう考えると、税理士と顧問先の関係で何より大切なことは、長いお付合いをすることです。税理士も時間をかけて顧問先を見ないことには、経営者が何に対して心配しているのかすぐには分かりませんし、それに対して的確な回答を示すことができません。また、税理士と顧問先の信頼関係も時間をかけて生まれてくるものです。

 ですから、税理士に不満を感じてもすぐに税理士を代えたりせず、その税理士に何か課題を出してみてはどうでしょう。それに対する姿勢を見て、顧問料の値下げ交渉をしたり、仕事の内容を見直したりして、それでもその税理士と付き合っていくことが難しいようなら、新たな税理士を探すようにすればよいと思います。

 理想の税理士像は、顧問先のニーズよってまったく違うものですし、実際理想にぴったりの税理士にはなかなか出会えないものです。ですから、問題なく長いお付合いができ、心配事の相談に親身になってくれる税理士だとみなさん自身が感じられるなら、その税理士の顧問料は妥当ではないでしょうか。また、その評価ができるのは、みなさん自身だということも忘れないでください。



【採点表の結果】

70点以上…今のままで十分! 文句なしによい税理士が顧問についているといえるでしょう。

69点~50点…それなりのサービスは受けられているようです。不必要なサービスは除いて、値下げ交渉をしてみては?

49点~30点…大したサービスは受けていないようです。仕事の内容に不満があるなら顧問税理士に直接伝え、思い切って値下げ交渉をすることをお勧めします。

30点未満…すぐに新しい税理士を探しましょう。ただし、税理士に多くを望まない人は、今のままで十分かもしれません。





〔月刊 経理WOMAN〕