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「手形割引」に関する素朴な疑問
作成日:
03/27/2003
提供元:
月刊 経理WOMAN
ビギナー担当者でもこれなら理解できる!
「手形割引」に関する
あなたの素朴な疑問に答えます。
支払日が来ていない手形を金融機関に譲渡して現金化する「手形割引」ですが、経理初心者の中には、その仕組みや割引の条件など、基礎知識を知らない人も少なくありません。
そこでここでは、手形割引に関するビギナーの疑問を、Q&Aで解説します。
【Q1】
手形割引とはどういうことですか?
【A1】
商品の販売代金を手形で受け取った場合、通常は支払期日まで待たないと現金は手に入らないものです。
しかし、企業は商品の仕入れや、自社が支払った約束手形の決済、人件費など諸々の経費を支払わなければなりません。そのような場合、支払期日が来ていない手形を金融機関で現金化するのが手形割引です。
具体的には、手形の所持人が商売の取引によって発行された約束手形などの商業手形を、額面から支払期日までの割引料を差し引いて金融機関に買い取ってもらうことをいいます(なお、手形には約束手形と為替手形がありますが、ここでは約束手形を手形として解説します)。
商業手形は企業間の信用取引で広く用いられており、商品流通の過程で、商品を買う企業では支払手形、商品を売る企業では受取手形とよばれます。
また、取引から生じる資材手当及び契約締結などに伴なう前受金として受け取る受取手形も、商業手形に含まれます。
【Q2】
手形を取得してから手形割引をして現金化されるまでの流れを教えてくだい。
【A2】
手形割引から現金化までの流れを、具体例をあげて説明しましょう。
(1)図1の約束手形の振出人、福田工業株式会社が、名宛人(受取人)大阪物産株式会社に商品の仕入れ代金100万円を支払うため、約束手形を振り出しました。
↓
(2)受取人大阪物産株式会社は図2のように手形の裏面に裏書をします。
↓
(3)大阪物産株式会社は現金化する必要が生じたときは、この手形を取引金融機関に持ち込み、割引を依頼します。
↓
(4)金融機関は持ち込まれた手形が確実に決済されるか、信用調査を行ないます。調査のため、支払人の金融機関(ここではやまと銀行北浜支店)に電話や書類により調査を行なう場合があります。
↓
また、金額が大きい場合や振出人の信用不安が世間で噂されている場合には、民間信用調査機関(帝国データバンク等)で調査する場合もあります。
↓
(5)振出人の信用が確かであれば、金融機関は手形を割り引き、依頼人の口座(当座預金あるいは普通預金)へ入金する、という流れです。
【Q3】
手形割引をする際、何か条件はありますか?
【A3】
金融機関で手形割引をする際、その金融機関に、手形割引の入金口座として、当然に当座預金あるいは普通預金を開設しなければなりません。
また最初に、(手形割引を含めて)融資を受ける場合には、銀行取引約定書を提出する必要があります。この約定書は、銀行と割引依頼人の間の契約を定めたもので、一度差し入れれば将来に渡って有効になります。
この他、万一割引手形が不渡りになった場合に備え、預金担保、不動産担保、あるいは信用保証協会の手形割引根保証(一定の割引限度額と保証期間を定めて、その範囲内で反復継続して行なわれる商業手形割引の保証)などを依頼される場合もあります。
(注)信用保証協会とは、中小企業者が銀行その他の金融機関から資金の貸付け、手形の割引を受けるについて、その貸付金などの債務を保証することを主な事業としている公的機関のことです。
【Q4】
金融機関で割り引いてもらっている手形が不渡りになった場合はどうなりますか?
【A4】
割り引いた手形の振出人が期日に支払いをしなかった場合や、手形交換所の取引停止処分を受けた場合は、その振出人が振り出した手形の全部について、金融機関は割引依頼人に買戻しを請求します。
また、割り引いた手形の振出人が破産、清算、民事再生法、会社更生法などの適用を受けた場合や、他の債権者から差押さえや仮差押さえを受けた場合も同様です。
さらに、割引依頼人自身が振出人と同じような状態になったときも、すべての割引手形について金融機関より買い戻さなければなりません。
【Q5】
手形割引の割引料はどのように決められるのですか?
【A5】
手形の割引手数料は、次のように決められます。先ほどの図1の手形を例にとって説明しましょう。
振出日平成15年3月10日、支払期日平成15年6月8日を、平成15年3月20日に年3%で割り引いたとします。
平成15年は、支払期日の6月8日が日曜日で金融機関の休日に当たりますので、翌日の9日までの日数計算となります。また、取立手数料は210円(金融機関によって違いがある)として考えてみましょう。
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算定日数
平成15年3月20日~6月9日までの82日
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割引料
100万円×3%×82日÷365日=6739円
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割引料+取立手数料
6739円+210円=6949円
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割引依頼人への入金額
100万円―6949円=99万3051円
つまりこの、99万3051円が割引依頼人の口座へ振替入金されることになります。
【Q6】
金融機関等から割り引きを断わられるのはどんな場合ですか?
【A6】
手形の割引を金融機関から断わられるのは、次の七つのケースが考えられます。
(1)一定の手形割引枠を超えて割引を依頼した場合
金融機関は、一般的に取引先企業に対して、信用取引枠(無担保枠)、預金担保、不動産担保、信用保証協会の手形割引根保証などを含め、一定の手形割引枠を設けています。
この一定の手形割引枠を超えて、手形割引を依頼した場合、断わられるケースがあります。
たとえば、ある会社の月商は5000万円、うち受取手形割合50%、手形のサイトを3ヵ月とします。
その企業の手形割引枠の総枠は、
5000万円×50%×3ヵ月=7500万円
となります。
そのうち、A銀行の割引枠が5000万円だった場合、A銀行に5000万円を超えて割引を依頼したときに断わられるケースがあります。
(2)個別銘柄ごとの割引枠を超えている場合
手形割引の銘柄について、振出人X企業は500万円まで、Y企業は700万円まで、Z企業は600万円までと、個別銘柄ごとに割引枠を設けている場合があります。それぞれの割引枠を超えて割引を依頼した場合、断わられるケースがあります。
(3)振出人に信用不安がある場合
銀行が振出人の信用調査をした結果、信用不安がある場合、断わられるケースがあります。
(4)入手困難な手形の割引の場合
通常、商取引がありえないような業種の会社が振り出した手形の場合(つまりその会社が入手することが困難だと思われるような手形の割引を依頼した場合)、断わられることがあります。
(5)融通手形の場合
融通手形とは、実際の商取引の裏付けがない手形のことを指します。融通手形を発行する企業は、ほとんど倒産しているのが実情です。
(6)信用不安のある上場企業が振り出した手形の場合
信用不安がささやかれている上場企業が振り出した手形も断わられるケースがあります。
平成14年の上場企業の倒産が、29件と過去最多となっています。平成15年も、不良債権を多額に抱える銀行が支えることができない大型企業の倒産発生が予想されており、上場企業といえども安心はできないのです。
(7)記載のある手形の場合
手形表面に「指図禁止」あるいは「裏書禁止」、「…殿限り」等の記載のある手形は裏書を禁止しています。振出人と第一裏書人との権利関係だけが成立しますので、このような手形は金融機関で割引を断わられます。
【Q7】
手形割引を依頼する際、注意しなければならないのはどんな点ですか?
【A7】
《1》手形要件のチェック
(1)手形金額
金額が訂正されていないかをチェックします。金額が訂正してある手形は、後日問題が生じるおそれがありますので、当方で訂正しないで新しい手形を発行するよう振出人に依頼してください。
(2)支払期日
振出日と支払期日が逆転している手形ではないかチェックします。このような手形は無効ですので、受け取らないようにしましょう。
(3)振出日
振出日の日付のない手形は法律上有効な支払い呈示と認められません。そのため万一、その手形が資金不足等で不渡りになると中間裏書人に対して請求できなくなりますので、割引に持ち込む際は記入しましょう。
また、暦にない日(たとえば4月31日など)を振出日とした手形は無効ですので、受け取ってはいけません。
(4)受取人
受取人(名宛人)の記載のない手形も法律上有効な支払い呈示と認められません。
白地の場合は、割り引くに当たって事前に記入しましょう。
(5)振出地
振出人の住所が記載されているかチェックします。記載されていない場合は、記載してもらってから受け取りましょう。
(6)振出人の署名あるいは記名捺印
記名捺印とも印刷されている手形は、誰が振り出したか判明しないので、そのような手形は受け取らない方がよいでしょう。また、振出人がゴム印だけで押印のない手形も有効な手形ではありません。
(7)裏書の連続
とくに注意しなければならないのは、裏書が連続しているか、裏書の署名または記名捺印があるかの2点です。
《2》手形内容のチェック
(1)手形の振出人の調査
手形の振出人の信用調査をします。営業担当者が取引先を訪問した際の現場の状況や、出入り業者の噂などからその企業の信用不安が分かる場合もあります。また、大口の取引先であれば、民間信用調査機関に定期的に調査を依頼するのもよいでしょう。
(2)裏書の連続により取得した場合
手形の裏書人の信用も大切ですが、振出人と裏書人との関係も調査することが必要です。
(3)融通手形でないかの調査
融通手形を見破るのは難しいですが、a.受取人と振出人との関係が通常の商取引でない場合や、b.支払銀行が今までの銀行と違う銀行となっている場合など、疑ってみる必要があります。
手形割引は、支払期日前の資金調達方法として、幅広く利用されています。ただし前述のとおり、金融機関は無条件に手形割引に応じてくれるわけではありません。割引を検討している会社は、先のポイントをもう一度確認してみましょう。
〔月刊 経理WOMAN〕