「接待交際費」の支出にまつわる素朴な疑問
   
作成日:06/22/2009
提供元:月刊 経理WOMAN
  


お土産代 タクシー代はどうなる…あなたの「?」に答えます
「接待交際費」の支出にまつわる素朴な疑問9Q9A




 接待交際費は、原則損金不算入ですが、1人当たり5000円以下の飲食交際費は損金算入できます。効率的な営業活動のためにも交際費を上手に活用することが必要ですが、日ごろの経理処理では案外悩むことも多くあります。たとえば得意先等に持ち帰り用のお土産を用意した場合などはどうなるのでしょうか。ここでは「接待交際費」の支出にまつわるあなたの素朴な疑問にお答えします。

Q1
そもそも「交際費」ってどのような支出をさすのですか?

 交際費、接待費、機密費その他の費用で、その得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対して接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいいます。

 「その他事業に関係のある者」には、現在は取引がないが将来取引を持てそうな者や、取引のない同業者も含まれるとされています。

 既存取引先やこれから営業をかける先などに対し、信頼関係の構築や親睦の度合いを深めること、慰労などの目的をもって行なう飲食費の負担や贈答費の負担なども「交際費」となります。


Q2
「交際費」に該当すればどうなるのですか?

 すべてを交際費で処理してしまうと、本来は会社が払わなくてもいい税金を負担することになってしまいます。なぜなら原則的には交際費は経費(損金)として認められないからです。


 交際費は、取引先と飲食等をともにし、関係を深めることによって、自社の売上に貢献するという効果を得るための支出と考えられる点から、費用性は認められていますが、際限なくこれを認めることは、社会通念上問題があるために制限されています。よって、原則として「交際費は費用であっても経費(損金)でない」となっています。経費でないということは、売上から引くことはできず、法人税の申告上、課税対象になるということです。



 たとえば売上1000万円、支出経費800万円(うち交際費300万円)の場合には、1000万円-(800万円-300万円)=500万円に対して法人税が課税されることになります。

 しかし中小企業については、期間限定ですが、例外が認められています。すなわち資本金1億円以下の法人であれば、定額控除400万円までが交際費として経費になります。原則的には経費でない交際費ですが、中小企業については400万円までなら経費にできるということです。

 ただし、定額控除の400万円以内でも支出した交際費すべてが経費になるのではなく、うち10%は経費になりません。たとえば、資本金1億円以下の法人が年間300万円の接待交際費を支出したとしても、法人税の申告上、経費(損金)として計上できるのは、270万円となります。これを「交際費等の損金不算入」といいます。


Q3
福利厚生費と交際費の違いについて教えてください

 もっぱら従業員の慰安のために行なわれる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用が福利厚生費となります。打合せ会や忘年会などの飲食も「もっぱら従業員の慰安のため」に行なわれていれば、交際費ではなく福利厚生費とすることができます。

 「もっぱら」とは機会均等的な意味とされていますので、従業員のうち一部の者しか参加していなかったり、飲食が特定の者に偏っている場合は、交際費として処理しなければなりません。


Q4
5000円以下の飲食費の扱いについて教えてください

 平成18年度の税制改正で、1人当たり5000円以下の飲食費等が交際費から除外され、経費(損金)にできるようになりました。ただし、交際費から除外するためには、次の条件をすべて満たさなければなりません。



取引先などの接待のための飲食費であること(社内飲食費、贈答品代は含まれません)


1人当たりの金額が5000円以下であること


その飲食があった年月日・参加した人数・相手先の名前及びその関係・その費用の金額並びに店名と所在地・その他参考となるべき事項を領収書や支払報告書等に記載し、明らかにしておくこと


Q5
「5000円」の詳しい判断基準を教えてください

 1人当たり5000円以下の飲食費は、飲食費として支出した合計額をその飲食等に参加した人数で割って計算します。5000円以下かどうかは、1店舗ごとに判定します。たとえば、ホテルのレストランで取引先と飲食をし、その後、ラウンジに移動して二次会を行なったケースでは、レストランとラウンジの合計で判断するのではなく、それぞれの店舗ごとにその支払額と参加人数で1人当たり5000円以下かどうかを計算すればよいのです。

 また、支払った額から5000円部分だけが損金になるという意味ではなく、総額で判定します。支払総額から計算した1人当たり5000円以下の飲食費が損金になるということです。

 たとえば3人で会食し、支払額が1万6500円だった場合は、1人当たり5500円となります。この場合は1万6500円全額が交際費となり、損金不算入の対象となります。


Q6
ゴルフに伴う飲食費や会食時のお土産代はどうなりますか?




 ゴルフコンペ代など、従来交際費として処理しなければならない支出にも、昼食代や表彰懇親会など飲食費は含まれていますが、ゴルフ・観劇・旅行等の催事に伴う飲食費については、たとえ1人当たりの飲食費が5000円以下でも、催事に関わる費用からその飲食費の部分だけを抜き出して、交際費から除外することはできません。

 つまり、取引先とのゴルフコンペで、ゴルフ場に支払う費用の中から昼食代を抜き出して、「5000円以下なので、この部分に関しては交際費ではない」という処理はできないということです。飲食費を含めた総額を、交際費として処理しなければなりません。

 ただし、飲食店等での飲食時に、お土産用に用意してもらう飲食物(以下「お土産」)については、5000円判定時に、お土産代を含めることも含めないこともできます。

 たとえば、お土産代を含めた支払いが5500円である場合、店が発行する領収書等の明細に「お土産代800円」という明示があれば、お土産代部分を贈答品として税務上の交際費とし、飲食代相当分の4700円を、一人当たり5000円以下の飲食代として損金とすることができます。


Q7
行き帰りのタクシー代を負担した場合はどうなりますか?

 得意先等との飲食等を行なう飲食店へ送迎するために送迎費を負担した場合は、本来、接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用と考えられます。通常、飲食等のために飲食店に対して直接支払うものではありませんので、その送迎費自体は5000円には含まれず、交際費等に該当することになります。


 なお、交際費等の範囲から除かれることとされる1人当たりの費用の額の算定に当たっても、飲食費に加算する必要はなく、タクシー代を除いた飲食費で5000円の判定をすればいいことになります。



 一方、新製品の見本市等に得意先を招待した場合の交通費の負担は営業直接費と考えられますので、交際費等とはしないこととされています。つまり、その移動費を負担する目的によって、税務判断が異なってくるわけです。


Q8
会議の際のお弁当などで、5000円超の場合は、どうなる?

 従来から交際費等に該当しないこととされている会議費など(会議に際して支出されるお弁当や茶菓子その他これらに類する飲食物代)については、1人当たり5000円超のものであっても、その支出が通常要する費用として認められるものである限りにおいて、交際費等に該当しないものとされます。

 そのほか、従来から交際費に該当しない隣接費用として次のものがあげられます。

1)寄付金

 宗教法人への寄贈金(神社への寄贈金)や政治団体に対する拠出金等

2)値引及び売上割戻し・販売奨励金

 事業用資産や金銭の交付

3)広告宣伝費

 カレンダー、手帳、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用。得意先を対象とする3000円以下程度の物品の交付

4)福利厚生費

 従業員の慰安のために行なわれる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用


Q9
慰安旅行が交際費や給与と判定されないためには、どうする?

 交際費等に含めなくてよい従業員の慰安のために行なわれる旅行とは、次のすべてを満たす旅行とされています。



その旅行に要する期間が4泊5日(目的地における滞在日数による)以内であること


その旅行に参加する役員や従業員等の数が全従業員等の数(工場や支店等の単位で行なう場合には、その工場や支店等の従業員等の数)の半数以上であること


会社が負担する従業員等1人当たりの旅費が多額でないこと

◇     ◇

 交際費は 税務調査でもとくにチェックされることの多い科目です。会議費として処理した支出であるならば、会議の実態があるのかどうか、懇談や飲食でなく会議が主体であるか、などが確認されます。

 また行為だけで判断するのではなく、最終的にはその支払いの目的、相手先、内容等を吟味し、判断しなければならないことになります。

 税務調査のときにトラブルとならないためにも、交際費やその隣接科目での処理を行なった場合は、支払報告書等で詳細な内容を記載しておかれることをおすすめします。


〔月刊 経理WOMAN〕