「中間申告」の基礎知識
   
作成日:09/28/2005
提供元:月刊 経理WOMAN
  


必ずしなくちゃいけないの? 仕組みはどうなっているの?
これだけは最低知っておきたい
「中間申告」の基礎知識




 前期の納税額によって中間申告をする必要が生じることは知っていても、その仕組みを理解している人は少ないのではないでしょうか。また、法人税と消費税の中間申告の違いが分からない人もいるはずです。

 ここでは、経理担当者が知っておきたい中間申告の基礎知識を分かりやすく解説します。

 法人税、消費税などには中間申告制度があります。

 中間申告とは、簡単にいうと前年度に支払った税金の半額を今期の途中に納める制度ですが、すべての会社が必ず行なうわけではありません。経理担当者であれば、中間申告を行なう要件や詳しい仕組みなどを理解しておきたいものです。そこで、中間申告の必須知識を以下に解説していきましょう。


■中間申告はなぜ必要なのか

 まず、中間申告とは何かということをおさらいしておきましょう。中間申告の仕組みは、法人税と消費税では異なります。

1)法人税の中間申告

 法人税法では、中間申告義務を次のように規定しています。

 法人は、事業年度が6ヵ月を超える場合には、その事業年度開始の日以後6ヵ月を経過した日から2ヵ月以内に、中間申告書を提出しなければならない

 新設した会社の設立事業年度(設立事業年度は中間申告義務がありません)や事業年度の変更があった場合を除き、事業年度は1年という会社が多いのではないでしょうか。ですからほとんどの会社で毎期、原則として法人税の中間申告を行なう必要があります。

 ただし、前年度実績に基づいた予定申告による納付税額が10万円以下となる場合、中間申告を行なう必要はありません。詳しくは後述します。


2)消費税の中間申告

 消費税法上の中間申告は前期の消費税額によって、下の表のようにいくつかのパターンに分かれます。表中の「課税期間」という言葉は、通常の場合、事業年度と同じ意味だと解釈してください。

表 消費税の中間申告
前課税期間の消費税年額
(地方消費税含む)
中間申告の内容
 申告・納付期限前年実績による中間申告税額
60万円以下の場合 中間申告は不要
60万円超500万円以下の場合課税期間開始後6ヵ月を経過した日から2ヵ月以内前課税期間の消費税額×6/前課税期間の月数
500万円超6000万円以下の場合第1期:課税期間開始後3ヵ月を経過した日から2ヵ月以内
第2期:課税期間開始後6ヵ月を経過した日から2ヵ月以内
第3期:課税期間開始後9ヵ月を経過した日から2ヵ月以内
前課税期間の消費税額×3/前課税期間の月数
6000万円超の場合毎月末日の翌日から2ヵ月以内。ただし以下の場合を除く
1)確定申告月
2)期首月分は月末の翌日から3ヵ月以内
前課税期間の消費税額×1/前課税期間の月数
※国税の消費税額で表を見る場合は次のようになります。


60万円以下の場合…48万円以下の場合


60万円超500万円以下の場合…48万円超400万円以下の場合


500万円超6000万円以下の場合…400万円超4800万円以下の場合


6000万円超の場合…4800万円超の場合


 表にあるとおり、消費税の年間納付額が6000万円以上の会社は、毎月中間申告を行なう必要があります。この金額を月額に直すと、500万円以上の消費税となります。では月に500万円以上の消費税とはどれくらいの付加価値になるのかというと、すべて消費税の課税取引の場合、月に1億円以上です。したがって、それだけの付加価値を生む会社は、毎月消費税の中間申告をしなければならないというわけです。

 それでは、なぜ中間申告制度が存在しているのでしょうか?

 この制度は中間「申告」と呼ばれていますが、国が制度の第一の目的として考えているのは、中間「納税」の方です。国の立場から見ると「納税=収入」ですから、年間をとおして安定的に収入を確保するために、中間申告制度が設けられているといえます。

 とくに消費税については最終消費者が日々負担しているお金なので、事業者の手元に確定申告期まで留保しておかず、早く国庫に収納したいという意向があるようです。そこで前期の納税額の大きい法人ほど、より頻繁に納税を行なわなければならない仕組みになっているのでしょう。


■具体的な中間申告の仕組み

 法人税も消費税も同様に、中間申告には二つの種類があります。一つは、「前年度実績による中間申告」で、もう一つは「仮決算による中間申告」です。

 簡単に説明すると、「前年度実績による中間申告」は前期の税額の月割り額(消費税の場合、たとえば3ヵ月に1回の中間申告が必要な法人については、前期の年税額の3/12)を納付するという制度です。一方、「仮決算による中間申告」は、中間申告の対象期間について実際に仮決算を行ない、その結果に基づいて税額を計算し、申告・納付するという制度になります。

 では、それぞれを法人税と消費税に分けて、もう少し詳しく解説していきましょう。


(1)法人税

1)前年度実績による予定申告

 法人税の場合、前年度実績による中間申告のことを「予定申告」と呼んでいます。税務署から送付されてくる申告用紙も「予定申告書」となっているはずなので確認してみてください。

 納付税額は、次の算式で計算します。

・前事業年度の法人税額×6/前事業年度の月数

 この算式で計算した税額が10万円以下になるときには、中間申告を行なう必要はありません。その場合は、税務署から予定申告書が送られてくることもありません。


2)仮決算による中間申告

 確定申告に準じた方法で中間申告を行なうという方法です。すなわち、期首から6ヵ月間を1事業年度とみなして仮決算を行ない、その決算に基づいて法人税額を計算し、中間申告をすることになります。

 このときの用紙は、確定申告書と同一のものを使用します。


3)申告および納付期限

 事業年度開始の日以後6ヵ月を経過した日から2ヵ月、つまり期首から8ヵ月以内が申告・納付期限となります。


4)中間申告書を提出しなかった場合

 中間申告書を申告期限までに提出しなかった場合には、前年度実績による予定申告があったものとみなされます。


5)住民税・事業税の中間申告

 住民税および事業税の中間申告義務の有無、またその申告方法は、法人税での中間申告義務の有無および中間申告の方法にしたがいます。つまり、法人税で中間申告をする必要がある場合は、同時に住民税と事業税でも中間申告をしなければならず、さらに法人税の中間申告で選択した方法と同じ方法で住民税と事業税の中間申告・納付を行なう必要があるということです。


(2)消費税

1)前年度実績による中間申告

 前課税期間の消費税年税額の区分に応じて、前述の表のやり方で算出した税額をその申告期限までに申告・納付します。

 申告の際の用紙は、税務署から送付されてくる中間申告書を使用します。


2)仮決算による中間申告

 法人税と同じように、確定申告に準じた方法で中間申告を行なう方法です。申告期限・納付期限は87ページ表のとおりで、用紙は確定申告書と同一の用紙を使用します。


3)中間申告書を提出しなかった場合

 法人税同様、中間申告書を申告期限までに提出しなかった場合には、前年度実績による中間申告があったものとみなされます。


4)その他

 消費税は、住民税や事業税とは異なり、法人税で選択した中間申告の方法とは異なる方法を選択することができます。たとえば、法人税で前年度実績による予定申告を行なう一方、消費税では仮決算による中間申告を行なうこともできるということです。もちろん、その逆も可能です。

 また、前課税期間の消費税の年税額が500万円以上の場合は、同一課税期間中に複数回の中間申告を行なう必要があります。このときも毎回、中間申告の方法を選択することができます。


■中間申告方法の選択ポイント

 中間申告に二つの方法があることは先述しました。それでは二つの方法のうち、どちらを選択すればよいのか、そのポイントを解説しましょう。

 前年度実績による中間申告は、前年度の税額と月数が分かっていれば簡単に税額が算出できるので、とくに手間はかからない方法です。一方、仮決算による中間申告は、本決算と同様の作業を行なう必要があるため、事務負担が増えてしまうというデメリットがあります。

 ですから、前年度実績による方法でも仮決算による方法でも、中間申告の納税額が大して変わらないと予想される場合には、仮決算による中間申告を行なうメリットはありません。事務処理が簡便な前年度実績による中間申告を行なうべきです。

 しかし、事務負担が増えることや決算を行なうことによる顧問税理士への報酬などを考慮しても、前期と比べて今期の業績が大幅に下がっているなどして、仮決算による中間申告を選択した方が納税額を引き下げられることが明らかである場合には、会社の資金を有効活用するという観点から、仮決算による中間申告を行なった方がよいでしょう。

 ただし、手元の資金に余裕がある企業の場合、今期の業績が急降下している局面でも、あえて納税額が多くなってしまう前年度実績による中間申告を行なうという“裏ワザ”があります。

 この“裏ワザ”のメリットを説明しましょう。まず、前年度実績による中間申告額を納付します。次に確定申告で、いったん納付した中間納付額を還付してもらうのです。年税額が中間納付額を下回る場合には、「中間納付額-年税額」で算出した金額が還付されるのです。この還付金に対しては「還付加算金」という、いわば利息のようなものが付されます。この率は現在、年4・1%ですから、その利息分の得をすることができるというわけです。


■経理担当者が心掛けたいこと

 前年度実績に基づく中間申告が必要な場合は、税務署から中間申告書(法人税の場合は予定申告書)が送付されてくることは前述しました。ですから、こうした用紙が届いていることを見逃さず、しっかり中間申告を行なえるよう気を付けることが、経理担当者にはまず求められます。


1)納付を確実に行なう

 中間申告書を提出しなかった場合には、申告期限までに前年度実績による中間申告書が提出されたものとみなされます。したがって、前年度実績による中間申告を行なうときには申告書の提出は省略してもかまいません。

 しかし、申告期限に税額は確定してしまうので、納期限までにきちんと納付することを忘れないようにしてください。


2)仮決算による中間申告を選択する場合、スケジュール管理を徹底する

 仮決算による中間申告を選択した方が有利な状況にもかかわらず、申告期限までに仮決算とそれに基づいた中間申告・納付が間に合わなかったらどうなるでしょうか?

 この場合、申告期限においては何の中間申告手続きもなされていないため、前年度実績による中間申告があったものとみなされます。つまり、仮決算による中間申告・納付は無効となりますので、仮決算にかかった手間などが無駄になってしまいます。ですから、仮決算による中間申告を選択するときにはスケジュール管理を徹底しましょう。


3)月次決算を確実に行なう

 中間申告には二つの方法がありますが、いずれの方法が有利かは、中間申告対象期間の試算表ができていないと判断のしようがありません。

 タイムリーな月次決算が中間申告方法の選択の元になりますので、月次決算を行なっていない会社はすぐに取り入れ、また行なっている会社でも、確実に早く試算表を作れるように工夫してみてはいかがでしょうか。

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 以上、中間申告について解説してきましたが、理解できたでしょうか?

 一般的な経理実務でも、ここで解説した内容をきちんと把握しておくことは必須といえます。分からないことは、顧問税理士や税務署に問い合わせるなどして、正確な知識を身に付けてください。

〔月刊 経理WOMAN〕