退職給付会計って何?
   
カテゴリ:経理事務
作成日:10/10/2006
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


リエ
「黒田さん、ちょっと教えて欲しいんですが。」

黒田
「はい、何でしょう。」

リエ
「退職給付会計って何ですか?」

黒田
「これはまた難しいことを…、どうされたんですか?」
 

リエ
「実は別の会社の経理部に勤めている友人と話をした時に良く分からなかったんです。当社でも退職給付引当金って計上していますから、何となくは分かっていたつもりなんですが…。」

 
黒田
「それは無理ありませんよ、私だって果たしてどこまで理解しているかは怪しいものですから。」

リエ
「そんなに難しいことなんですか?」

黒田
「というよりは、私達にとってはあまり馴染みがない、といった方がいいでしょうね。実際世の中の中小零細企業で退職給付引当金を計上している会社はかなり少ないはずですから。」

リエ
「計上しなくてもいいんですか?」

黒田
「中小企業の会計に関する会計指針によれば、『退職金規程がなく、かつ退職金等の支払に関する合意も存在しない場合には、原則として退職給付引当金の計上は不要』、となっています。」

リエ
「そうか、当社は退職金規程があるから、退職給付引当金の計上が必要なんですね。」

黒田
「そうです、退職金規程があるということは従業員に対して会社は債務を負っているということが言えるわけです。退職金は将来において必ず発生するものですし、退職金の額というのは勤務年数を重ねるにしたがって増加していくものですから、会計基準のうえでは従業員が入社をして退職するまで毎日発生しているととらえています。ですから退職給付引当金という債務と退職給付引当金繰入という経費を計上しないと、本来発生している経費を計上せず、さらに本来存在しているはずの債務を計上しないことになって、会社の状態を実際よりも良く見せかけている、ということになってしまいます。」

リエ
「なるほど、会社の状態を決算書で正しく表示するために計上するんですね。」

黒田
「おっしゃるとおりです。」

リエ
「でも、そういえば退職給付引当金の繰入額って税務上は損金にならないんでしたよね。」

黒田
「はい、以前は一定の金額までは損金にして構わなかったのですが、残念ながら平成10年度の税制改正で廃止されてしまいました。」

リエ
「でも、何かそれっておかしくないですか?」
 


黒田
「おっしゃることは分かります。退職給付引当金繰入というのは私も会社の営業上、必要な経費だと思っていますから、それが税務上認められないというのは非常に残念です。改正の趣旨は私も覚えていないのですが、引当金の繰入というのは現金支出を伴わない経費なので、実際には節税を主な目的とした計上も多くあった、ということも影響したのではないかと思っています。」
 
リエ
「そうですか、そんな節税とは関係ないところで計上していた会社にとっては、とんだとばっちりだったかもしれないですね。」

黒田
「まあ、他にも理由はあったとは思いますが…。」

リエ
「でも、退職給付引当金というものの意味は分かったような気がします。その金額の計算方法なんかも教えて頂きたいので、また次回にでもお願いします。」

黒田
「分かりました、私ももう少し勉強しておきます。」

リエ
「私も今日教えて頂いたことを忘れないように、復習しておきます。」