退職給付引当金の計算方法
   
カテゴリ:経理事務
作成日:10/31/2006
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


黒田
「この前(10月10日掲載)退職給付引当金の意味を申し上げたと思いますが、今度は実際にどのように計算して計上するのかをお話しします。」

リエ
「はい、お願いします。」

黒田
「と申しましても、実際に大きな会社で適用している計算方法はかなり難しくて、ちょっと私では説明できないので、従業員300人未満の会社に認められていて、御社でも適用している簡便法の方を申し上げます。」

リエ
「はい、あまり難しいのは説明して頂いても理解できませんし、弊社で適用している方法をまず理解しなくてはいけないと思いますので。」

黒田
「以前申し上げたように、会計上は将来発生すると見込まれる退職金を今現在抱えている負債として考え、その金額を退職給付引当金として決算書に計上しなければならない、ということはお分かりですね。」

リエ
「はい、それはこの前のお話しで理解できました。今日は決算書に計上する退職給付引当金の金額の計算方法がテーマですよね。」
 


黒田
「おっしゃるとおりです。その金額を計算するのに基準となるのは、期末に全ての従業員が自己都合で退職した場合に会社が支払わなければいけない退職金の金額です。会社は決算書上にこの金額、退職金の期末要支給額といいますが、これを全額退職給付引当金として負債に計上しなくてはいけないのです。」
 
リエ
「全額ですか、でも実際には一度に従業員の全員が退職するなんてことはまずあり得ませんよね。」

黒田
「そうですよね、実は退職給付引当金が税法上も認められていた時には、この期末要支給額の40%が基準となっていました。でも、会計上はより健全な経営を目指すという意味があると思うのですが、全額を計上することを要求しています。したがって、退職給付引当金として、期末要支給額の全額を計上し、なおかつ利益が充分に残っている、という会社は従業員のほとんどが退職するというような通常ではあり得ないことにも対応できる体力がある、ということがいえますよね。」

リエ
「なるほど、でも以前黒田さんがおっしゃっていたように、今まで退職給付引当金を計上していなかった会社は、それを一度にやったらその事業年度は大赤字になってしまうんじゃないですか。」

黒田
「そうなんです、いくら退職給付引当金の計上が会計上必要だといっても、それではその事業年度の業績が正確に測れなくなってしまう、ということがありますので、10年または従業員の平均残存勤務年数のいずれか短い方の年数で、毎年定額を計上していく、という方法が認められています。」

リエ
「そうですか、でも期末要支給額といったら弊社でもかなりの金額になると思うのですが、そんなにたくさん計上してましたっけ?」

黒田
「いえ、実は退職給付引当金だけでは御社の期末要支給額にはなりません。でも御社の期末要支給額は直前期で100%引き当てられています。」

リエ
「それはどういうことですか?」

黒田
「御社は中小企業退職金共済制度に加入していらっしゃいますよね、そしてその掛金は支払ったときに費用処理しています。ということは期末に従業員が全員自己都合で退職したとしても、中小企業退職金共済、いわゆる中退共からある程度の退職金はそれぞれの従業員に支払われ、御社が負担するのは退職金規程上支払わなければいけない金額と中退共から支給される額との差額だけになります。」
 

リエ
「そうか、会社の決算書にはその差額だけが退職給付引当金として計上されていれば良い、ということになるんですね。ということは、中退共だけではなく民間の保険会社と契約している保険なんかも考慮に入れてもいいんですよね。」

 
黒田
「そのとおりです。長期平準定期保険などは保険料の損金経理が認められていながら解約返戻金もありますので、退職金の準備などに利用されることもあるのですが、その場合は期末において解約した場合に受け取れる解約返戻金を、期末要支給額から差し引いて退職給付引当金を計算することになりますね。」

リエ
「何となく分かったような気がします。来年の決算の時は私も退職給付引当金の計算をやってみます。」

黒田
「頑張って下さい。」