いわゆる輸出戻し税って何?
   
カテゴリ:税務
作成日:07/10/2012
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


黒田
「リエちゃん、こんにちは。先日消費税増税法案が衆議院で可決されたね。」

リエ
「ええ。私の周りでもその話題で持ち切りです。」

黒田
「消費税は生活に関するあらゆるものに関わってくるし、連日メディアを賑わせていたから注目度は高いよね。」

リエ
「ところで黒田さん、大企業は“輸出戻し税”で優遇されて不公平なんて皆さんおっしゃっていましたがどういうことなのですか?」

黒田
「そうだね。それを説明するにはまず消費税がどうやって国に納められているかを確認する必要があるね。」

リエ
「簡単に言ってしまえば、企業が売上に係る消費税から仕入れに係る消費税を引いて………その差額を国に納めているんですよね。」
 


黒田
「そう、消費者が支払う消費税を最終販売業者、下請け企業、孫請け企業等がそれぞれ分担して預かり、国に納めている。あくまで消費税を負担するのは消費者であって、企業は消費者が負担した消費税を一時的に預かり、国に納めるのを代行しているにすぎない。ここまではいいね。」
 
リエ
「はい。そして輸出に関しては消費税が免除されていることも知っています。」

黒田
「うん。日本の消費税は原則として国内での消費に対して課されるからね。国外での消費である輸出売上は消費税が免除されるけれど、輸出商品に関する国内仕入には消費税が課されているよね。原則として預かった消費税と支払った消費税の差額がマイナスであれば、企業はその分のマイナスを国から戻してもらえるから、輸出企業には国内仕入分の消費税還付が生じるんだ。」
 

リエ
「そうだったんですか。そのことを皆さん輸出戻し税と言っていたんですね。でもやっぱり還付されるのは輸出企業だけで下請け企業にはされないんですよね。大企業であれば規模も大きいから金額も………やっぱりずるい!」

 
黒田
「うーん。確かに還付を受けているという現象面だけを切り抜いてみれば不公平感はあるかもしれない。ただそれは誤解なんだ。つまり、下請け企業も孫請け企業も、消費者が負担する額を分担して預かり納めているだけであって身銭を切っているわけではないよね。輸出企業は外国の消費者から消費税を預からないけれど、下請け企業に対しては消費税を支払っている。だからその分を国から戻してもらうんだ。外国の消費者が消費税を負担しない以上、どの企業も消費税を支払う必要はないからね。これは消費税の仕組みであって、国が大企業を優遇しているとかそういう話ではないんだよ。」

リエ
「そうだったんですか。うーん、言われてみればそういう気もしますが…。やっぱりどこか腑に落ちません」

黒田
「リエちゃんがそう思うのは、消費税の仕組み自体の周知が徹底されていなかったり、大企業がその地位を利用して下請け企業に正しく消費税を転嫁させていない場合があるといった問題が根底にあるからかもしれないね。」