「休日&休暇」をめぐる法律知識
   
作成日:08/22/2009
提供元:月刊 経理WOMAN
  


代休と振休の違いあなたは理解していますか?
労務担当者が知っておきたい「休日&休暇」をめぐる法律知識




 最近は、権利意識の強い社員が増えています。休日に出勤したから代休が欲しい…、年次有給休暇を半日単位で使いたい…。そんな要望があったときに、労務担当者に求められるのが正しい法律知識です。

 ここではよくありがちな「休日&休暇」をめぐる法律知識とあわせて、「休日&休暇」の取得で労務トラブルを起こさないための心得をアドバイスします。

社員から半日または1時間単位で年次有給休暇を利用したいという希望がありましたが、応じなければなりませんか?

 まず、年次有給休暇の半日単位での利用についてですが、そもそも年次有給休暇は、法律的には1日単位での取得が原則とされていますので、会社としては、必ずしもこれに応じなければならないという義務はありません。

 ただし、労使間での合意(社員の申し出→会社の同意)があれば半日単位での利用も可能ですので、もし半日単位での利用を社内ルールとして認めていくのであれば、あらかじめ就業規則等でその旨を明記しておくとよいでしょう。明記せずに、あるときは認めて、あるときは認めないというのでは不公平となり、労使トラブルのもとになりかねませんので注意が必要です。

 次に、年次有給休暇の1時間単位での利用についてですが、現在は法律的には認められていません。しかし、法改正により平成22年4月1日以降は、労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として1時間単位での利用が可能となります。なお、この法改正には、次のようなポイントがあります。


1)

企業規模を問わず一律に適用される(すべての会社で実施)

2)

パートタイマーにも適用される

3)

年次有給休暇を1日単位で取得するか、1時間単位で取得するかは、社員が自由に選択できる


年次有給休暇の申請はいつまでにさせるべきですか?

 年次有給休暇の申請期限については、法律的な制限はなく、原則として社員が指定すれば、会社はその日に年次有給休暇を与えなければなりません。


 ただし、一方で会社には「時季変更権」(事業の正常な運営を妨げる場合には、指定された日を他の日に変えることができる権利)が認められていますので、年次有給休暇の取得の可否をめぐる労使トラブルを避けるためには、できるだけ事前(例:3日〜1週間程度前)に申請するよう、ルール化しておくことが望ましいでしょう。



 このような場合、代替要員の確保が困難な場合などを除いて、原則としては社員が指定すれば、会社はその日に年次有給休暇の取得を認めなければなりません。

 年次有給休暇は、心身の疲労回復などを目的として、社員に法律上当然に与えられた権利ですので、会社は時季変更権(たとえば、前述したように代替要員の確保が困難な場合など)を主張し、それが正当な理由であると認められない限り、この請求を拒むことはできないのです。


消化できなかった年次有給休暇を買い上げて欲しい、という要望には応じなければなりませんか?

 年次有給休暇は、すべて消化する前に退職する場合や、消滅時効である2年のうちに消化しなかった場合に、権利が行使されないまま消滅してしまうことがあります。

 その際、社員からこれらの権利を買い上げて欲しいとの要望を受けることがあるかもしれませんが、未消化だからといってその日数に応じた賃金を支払う行為(=年次有給休暇の買上げ)は、法律の主旨にそぐわないことから禁じられています。

 ただし、法律で定められた日数を上回る年次有給休暇や、すでに時効消滅した年次有給休暇の買上げを任意で行なうのであれば、法律上定められた、社員が休みを請求できる権利は侵していませんので、違法とはなりません。


特別休暇は、年次有給休暇とは別に有給休暇として与えるべきですか?

 一般的な特別休暇には、次のように法律上定められた「法定の休暇」と、会社が任意で定めた「任意の休暇」があります。


1)

法定の休暇(例)
産前産後の休暇、生理休暇、育児休業、介護休業など

2)

任意の休暇(例)
慶弔休暇、災害時休暇、リフレッシュ休暇、誕生日休暇、結婚記念日休暇など

 特別休暇は必ずしも有給として与える義務はなく、これらを有給にするか、無給にするかの判断は、会社ごとに自由に就業規則等で定めることができるようになっています。

 中小企業としては、ノーワーク・ノーペイの原則(労働していない分に対しては賃金の支払義務はないという原則)に基づいて無給としたいところでしょう。ただ特別休暇という名目であっても、実質的には有名無実化してしまうということで、年次有給休暇とは別に、有給休暇として与えている企業もあります。

 なお、産前産後の休暇については、社会保険の加入者であれば出産手当金が別途支給されますので、全部または一部について無給とするケースが多いようです。


「年末年始休暇を10日間とし、そのうち5日間は年次有給休暇の消化に充てる」としても労働基準法に反しませんか?

 年次有給休暇は、社員が請求した時季に与えるのが原則ですが、労働基準法では、5日を超える部分については、労使協定を締結することによって計画的に与えることができるとしています(これを「計画的付与」といい、一斉・班別交替制・個人別に与える方式があります)。

 つまり、年次有給休暇のうち最低5日は社員が自由に使えるようになっているのであれば、残りは会社と社員(代表)の話合いによって、あらかじめ「いつ、誰に、何日与える」というような計画をすることができるのです。

 したがって、「年末年始休暇を10日間とするが、そのうち5日間は年次有給休暇の消化に充てる…」といったことも、この計画的付与(一斉方式)の要件を満たす限り、会社と社員(代表)の話合いによって可能と言えます。




 なお、この計画的付与を一斉方式や班別交替制方式で行なう際は、中途入社で年次有給休暇がまだ付与されていない、または「年次有給休暇の残日数−(5日+計画的付与の日数)=マイナス」となってしまう社員が出てきた場合に問題となりますが、それらの社員には不足日数分の年次有給休暇を別途補填することで対応することが必要となります。

 有給休暇を一斉に与えようとしているのに、残日数が不足している社員のみ出勤させるというわけにはいかないからです。


代休と振替休日はどう違うのですか?

 一般的に代休であっても、振替休日であっても、社内では区別することなくすべて「代休」と呼んでいるケースがありますが、じつは代休なのか、振替休日なのかによって、割増賃金の支払義務において大きな違いがあります。代休とは休日出勤をした後にその代償として休日を与えることで、振替休日とは、休日をあらかじめ別の日に指定(トレード)することです。

 つまりこの違いは、代わりに与える休日の指定(通知)が事後なのか、事前なのか、というところにあるのですが、事後であれば、休日出勤する時点では代わりの休日が約束されていないため割増賃金の支払義務が生じ、事前であれば、あらかじめ代わりの休日が約束されているので割増賃金の支払義務がないとされているのです。

 いずれにしても、代わりの休日が与えられるのであれば、結果は同じだから違いはないだろうと思われがちですが、代わりの休日を休日出勤の事後に通知するのか、事前に通知するのかによって法律的な解釈はまったく異なってきます。


社員が上司の命令なしに休日出勤したのですが、代休が欲しいといってきました。与える必要はありますか?

 この設問には、二つの論点が含まれています。

 一つは、休日出勤(時間外労働)に対する命令の要否の問題で、もう一つは、代休は必ず与えなければならない義務があるのかという問題です。

 まず、休日出勤(時間外労働)に対する命令の要否についてですが、そもそも社員としては、所定労働時間(例:1日8時間)については労働する義務を負っていますが、それを超える時間については労働する義務がありません。

 しかし、それでは会社の業務に支障をきたしてしまうこともありますので、業務上の必要があれば、会社は労使協定(36協定)の範囲内で時間外労働をさせることができるのです。つまり、時間外労働は、本来は会社・上司が業務上の必要性を判断して社員に命じるものなのです。

 ですので、会社・上司からすれば、命令していない休日出勤(時間外労働)など社員が勝手に判断して行なったものだから、そもそも認める必要はないという理屈もあるのですが、暗黙のうちに命令を発しているケースもあります。

 たとえば、所定労働時間では到底処理しきれないような業務量を社員に与えている場合は、明確に休日出勤(時間外労働)の命令を発していなくても、暗黙のうちに命令しているにほかならないからです。最終的にはあくまで実態で判断されるのです。

 このような問題をめぐる労使トラブルを未然に防ぐためには、あらかじめ就業規則等において、休日出勤(時間外労働)は会社・上司の命令や事前承認を得たものに限る、と明記しておくとよいでしょう。

 そして、代休を与える義務についてですが、これは必ずしも与えなければならないというものではありません。代休は、あくまで休日出勤に対する代償措置として、会社が社員に恩恵的に与えるものとされていますので、たとえば、「この間、休日出勤してくれたので、明日は出勤しなくても大丈夫だから休んでもいいよ」といった具合に与えられるものなのです。

◇     ◇

 休日&休暇に関するルールは、労働基準法で定められていますが、実際にはその条文だけでは判断できないケースが多々あり、行政通達や判例などがその都度出されているのが実情です。今後も世の中の動きに合わせてルールが変わっていく可能性がありますので、インターネットでチェックするなどして、変更がないかどうか留意するとともに、就業規則で社内の規定を明確に定めておくべきでしょう。


〔月刊 経理WOMAN〕