個人でできる「今どきの資産運用」虎の巻
   
作成日:06/20/2007
提供元:月刊 経理WOMAN
  


個人でできる「今どきの資産運用」虎の巻




◆資産運用に無関心な日本人

 最近は金融商品への投資や上手な資産運用についての記事が新聞や雑誌で多く見受けられます。しかし実際には、資産運用に対する人々の関心はまだまだ低いようです。金融広報委員会の世論調査『リスクとチャンスの関係に対する考え方』を見ると、「元本保証が約束されていなければ運用しようとは思わない」と答えた人は全体の53%で、「リスクに見合う収益性が得られるチャンスがあれば、運用しようと思う」の8%を大きく引き離しています。このように多くの日本人は、まだまだ資産運用への関心が低いのが現実です。

 日本人の資産運用はこれまでは他人任せでした。公的年金や企業年金、保険会社といった国や企業が、国民から預かった年金保険料を国民に代わって運用してきたのです。

 しかし、バブル崩壊後の不況による低金利、低株価で運用益を上げることができず、年金財政の赤字や金融機関の経営難といった失敗の経験から、これからは国民1人ひとりに直接運用責任を担ってもらおうということになりました。その代表例が確定拠出年金(日本版401k)で、従業員の運用次第で退職後の年金額が変わってくるこの制度を導入する会社が増えてきています。

 このような「貯蓄から投資へ」の時代になりつつある中、いつまでも資産運用に無関心ではいられません。それならば自ら積極的に取り組んでいこうという姿勢を持つべきではないでしょうか?


◆預金と資産運用の違いを知っておく

 現在、日本人の金融資産の種類別構成比を見ると、半数以上が預貯金など元本確定商品で、株式・債券・投資信託の合計は2割にも達していません。そこで、今のままの元本確定の預金だけではどうなるのか、預金と運用の違いを商品性からではなく、経済の側面から見てみましょう。

 当たり前ですが、預金と資産運用の最大の違いは、預金は値動きがなく、運用は値動きがあるという点です。預金は安全といわれているのは価格の下落がないからですが、では本当に預金は下落しないのでしょうか?

 最近まで日本はデフレの世の中でした。モノの値段が低い反面お金の価値が高かったので、現預金のまま置いておくことが価値ある経済行動だったわけです。しかし、今後インフレの時代がくるとお金の価値は低下します。つまり、全額を預貯金のみの円資産だけで運用していては、物価上昇により実質資産価値が下落してしまうのです。

 そこで株式や不動産に換えて保有すれば、値上がりによりインフレリスクを回避することができます。資産運用では通常値下がりすれば損をしますが、値動きがあるということは逆に資産の目減りを守るメリットもあるのです。


◆なぜ資産運用が必要なのか

 戦後の日本では、国民全体のライフスタイルが同じでした。このような時代には、みな同じ利息で同じ結果が得られる預金で良かったのです。ところが最近は日本人の価値観も多様化し、生き方はそれぞれ違ってきています。そこで、1人ひとりの描く将来設計に合わせて運用結果が異なる資産形成が必要になってきたのです。

 資産運用は、お金を儲けるためではなく、人生目標を達成するためにあります。運用によって大儲けを目指すのではなく、夢をかなえ、人生を豊かに送るにはどうすれば良いかを考えるプロセスの方が非常に大切なのです。

 ですから、資産運用を始める前にやるべき大事なことは、『運用をする目的を明確にすること』です。何のために資産運用をするのかをまずしっかり考えなければなりません。ただ漠然と「儲かればいい」だけでは、運用がうまくいく可能性は極めて低くなるでしょう。

 運用目標の具体例は次のようになります。



子どもが大学に進学する10年後までに、学費を500万円つくる


老後資金として、定年退職までの20年間で3000万円つくる

 ポイントは目標とする「金額」と、いつまでに達成するという「期日」を設定することです。ぜひ紙に記入して、将来のイメージを想像してみましょう。

 運用目標が決まったら次に、目標を運用プランに落とし込みます。その際に、「○○万円を○%で○年間運用すれば、○○万円になる」と具体的に数値化します。

 運用プランを作成した結果、たとえば運用利回りが1%程度でも目標金額に届くのであれば、リスクの小さい個人向け国債などで運用すれば良いわけです。しかしそれ以上の利回りとなると、積極投資型の商品を選択する必要があります。

 資産運用では、絶対にうまくいく方法や商品は存在しません。自らの運用プランに沿って実行することが成功のカギとなります。


◆これが運用のポイントだ!

◎リターンよりもリスクが重要

 投資をするときはどうしても「いくら儲かるか」と考えてしまいます。そこでたとえば、今1000円の株価の会社があり、この株価が将来1500円まで値上がりしそうだと予測したとします。うまくいけば5割儲けられますが、5割上昇するかも知れないということは、逆に5割下落し株価が500円になる可能性もあるということなのです。

 このように、通常リターンとリスクは同じ値になります。あなたは投資したお金が半分になることに耐えられるでしょうか? さらにいうと、500円まで下がったこの株が元の1000円に戻るには100%の上昇が必要になってしまうのです。

 したがって資産運用ではリターンを気にするよりもリスクを管理し、「いかに損を減らすか」を考えるほうが重要なのです。このための手法が「長期投資」と「分散投資」です。

◎ハイリターンより安定リターン

 株の短期売買のような大儲けを目指しても、いつそれが得られるのか不安定であれば目標達成に必要な運用プランはたてられません。ハイリターンでなく安定したリターンを築いていければ、増えたお金で目標の実現が見込めるようになります。

 長期投資のメリットは、投資期間を長くすればするほど、複利効果でリターンが高まります。ですから、投資は1日でも早く始めたほうが有利です。

 長期の運用というのは気が遠くなりそうですが、じつはこの地道さが成功への近道なのです。日本は投資の歴史が浅いので、投資で成功したという人はまだ少ないでしょうが、投資先進国の米国で真の投資成功者は、短期の売買で大儲けした人ではありません。毎月給料から投資商品を継続して積み立てていき、退職時に多額の運用資産が形成されていて老後を豊かに暮らすことができた人なのです。

◎資産運用よりも資産配分を考える

 もう一つ、損を減らす方法は分散投資です。分散投資にはいろいろな意味がありますが、まずは国際分散投資を考えましょう。日本と外国の株式・債券及び通貨の分散です。分散投資の手順は以下の通りです。


1)

3~6ヵ月分の生活資金を預金で確保する。

2)

生活資金以外の資金を、まずは大まかに日本株式・外国株式・日本債券・外国債券といったアセットクラスの配分割合を決める。

3)

各アセットクラスの具体的な個別商品を決定し、購入する。

 この中で、とくに重要なのが2)です。米国の年金基金の長年の調査では、資産運用の成功要因の約9割は資産配分(アセットアロケーション)にあるとしています。運用ばかりに目がいくと「どの商品・銘柄が儲かるか」や「相場のどのタイミングで購入しようか」が気になりがちですが、それらは残り1割以下の要因でしかないのです。

 このように資産運用は、短期間で投資対象が少ないと価格変動が大きく損する可能性も高いのですが、「長期」に「分散」して投資すれば、リスクが限定され小さくなり、かつリターンが安定することが過去の研究と実績で分かっています。


◆シンプルな資産運用

 次に具体的にどの商品で運用を開始するかですが、投資ノウハウがない、投資の勉強と相場を眺める時間がない、投資にまわせる多額のお金がないという初心者は、まずは投資信託から始めることをおすすめします。

 さらに数ある投資信託から何を最初に選ぶかですが、誰でもできる、シンプルである、比較的リターンが安定しているという条件を付けると、「インデックスファンド」と「外貨建てMMF」での分散投資がおすすめです。

 インデックスファンドとは、日経平均株価やTOPIXといった市場平均に連動させることを目的とした投資信託です。インデックスファンドには、次のようなメリットがあります。


1)

購入時と売却時の為替手数料が外貨預金に比べて安い

2)

国内のMMFや外貨預金に比べて利回りが高い

3)

主要通貨を取り扱っているので手軽に国際分散投資ができる


◆運用開始後にやるべきことは?

 実際に運用を開始したら、その後は次の作業が必要になります。



3ヵ月に1回程度の価格のチェック(モニタリング)


1年に1回の資産配分の再構築と組替え(リバランス)

 長期・分散を基本に運用しているので、毎日価格を気にする必要はありませんし、頻繁に商品を入れ替える必要もありません。

 そして、運用に慣れて知識が蓄えられ、資金的にも余裕ができたら、今度は興味が持てる分野への投資を始めるのも良いでしょう。株式の個別銘柄や、新興国市場の投資信託、不動産投資信託などたくさんの投資商品があります。ただし、中にはハイリスクハイリターンのものもありますので、運用資産の2割くらいまでを目安とするなど、多額を振り向けないように適正配分を考えて行なってください。

 人生をうまく生きようと努力している人は資産運用を上手に行なっています。運用で儲かったから人生がうまくいくのではありません。素晴らしい人生を送るために、夢に向かって安定した資産をコツコツと築いていきましょう。

(注)
 本稿は情報の提供を目的としたものであり、掲載したデータは信頼できる情報にもとづき作成されていますが、その正確性・完全性を保証するものではなく、過去の運用実績は将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資の判断はみなさんご自身の責任でなさるようお願いします。


〔月刊 経理WOMAN〕