「経営セーフティ共済」のしくみと上手な使い方
   
作成日:12/21/2009
提供元:月刊 経理WOMAN
  


取引先の連鎖倒産から会社を守れ!!
「経営セーフティ共済」のしくみと上手な使い方教えます




 経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は取引先事業者が倒産し、売掛金債権等について回収が困難となった場合に、資金の貸付を受けられる制度です。加入後6ヵ月以上経過していることが条件ですが、大口の得意先がある会社などは、利用を検討する価値がありそうです。

 ここでは「経営セーフティ共済」のしくみと上手な使い方を見ていくことにしましょう。

◆経営セーフティ共済とは

 経営セーフティ共済は、取引先企業の倒産などによって中小企業が連鎖倒産したり、経営難に陥ることを防止することを目的とした共済制度です。

 具体的には、毎月一定の掛金を積み立て、万が一売掛金債権等の回収が困難になった場合に、積み立てた掛金総額(320万円が上限)の10倍の範囲で、無担保無保証人の融資を受けることができます。「取引先に不測の事態が生じたときの資金手当」をする制度と理解すればいいでしょう。

 制度自体は、中小企業倒産防止共済法に基づき、国が全額出資している「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が運営しています。平成21年3月時点の加入件数は約29万社。利用企業は建設、製造、卸・小売業が大半を占めています。

 制度を利用する目的はさまざまですが、次のようなケースが代表的です。



新規取引先が増えたが、取引先の信用力が充分把握できないため、不測の事態による資金リスクに備えたい。


建設業や製造業などは手形サイト(振出日から支払期日までの期間)が長く、支払いを受ける前に取引先に事故が発生するリスクがあるため、万が一に備え資金調達ができる手段を確保したい。


◆加入の条件は?

 加入の条件は大きく3点あります。


1)

引き続き1年以上、事業を継続していること。

2)

製造業の場合は資本金が3億円以下もしくは従業員数が300人以下。ただし、卸売業の場合は資本金1億円以下もしくは従業員数が100人以下(その他、業種により条件が異なる)。

3)

企業は法人税を、個人は所得税を滞納していないこと。

 これらをクリアしていれば、基本的に加入を断られることはありません。会社組織になっていない個人や企業組合、協業組合なども利用することが可能です。

 ただし、一般消費者を取引先とする事業者、金融業者及び不動産賃貸業者などの業種については、取引先事業者に対する売掛金債権等が生じないのが一般的なので、加入はできても取引先が倒産したときに借入できないので注意が必要です。


◆毎月の掛金は?

 毎月の掛金は、5000円から最高8万円の範囲内なら、5000円刻みで自由に設定することが可能です。掛金の総額が320万円(8万円なら40ヵ月)になるまで積み立てることができます。

 また、掛金を1年分前納すれば掛金前納の特典として、一定額が戻ってきます。たとえば、掛金8万円の場合、一度に96万円全額払い込むと、2万6400円が還元されます。

 毎月支払う掛金は、税法上「損金(法人の場合)」または「必要経費(個人の場合)」として計上できます。実際、決算を控えて大きな利益が出そうな企業が、節税効果を期待して共済に加入する例もあります(詳しくは後述します)。

 ただし、加入時に一括払いで320万円納めたとしても、全額を損金で落とすことはできません。1年間に損金として落とせるのは、税法上1年以内の前納掛金と決められているので、最大で96万円となります。それ以上積み立てても、損金算入できないので節税効果は期待できません。

 一度決定した掛金の額を途中で変更することもできます。減額を希望する際には、売上高の減少、疾病や負傷、事業経営の悪化などの条件がありますが、掛金月額変更申込書に記入して提出するだけで、実際には減額の申し出を断られることはほとんどないようです。

 掛金の納付が苦しくなった場合、途中解約も可能ですが、それまで払ってきた掛金の全額が戻らないケースもある(詳しくは後述)ので、掛金を最低の5000円に変更して契約は続けるのも一つの選択肢かも知れません。

 また、どうしても納付できない場合は、「掛止め」の制度も用意されています。掛止めしている際に事故が発生したときも、それまで掛けた金額の10倍まで貸付を受けることが可能なので安心です。


 たとえば月の取引額がおおむね1000万円の企業が1日も早く万が一に備えたいのなら、契約当初は上限の8万円を毎月積み立て、積立金が100万円に達したところで掛金を最低の5000円に減額するという使い方もあります。これなら毎月の負担は小額に抑えながら、保険としての効果は充分に果たすことが可能というわけです。




◆共済金の貸付条件、貸付額は?

 共済金の貸付が受けられる条件は、以下の通りです。



制度に加入してから6ヵ月以上経過して、6ヵ月分の掛金を払い込み、


取引先事業者が倒産し、


それに伴って売掛金債権等(商取引に基づく売掛金債権、受取手形債権、前渡金返還請求権をいう)の回収が困難となり、取引先企業の倒産から6ヵ月以内に請求した場合。

 貸付を受けられる金額は、貸付を受ける時点で積み立てている掛金の10倍(最高は3200万円)、または回収できない売掛金債権等の金額のうちどちらか低い方です。

 仮に320万円積み立てて3200万円借りられる状況だったとしても、回収できない売掛金債権の額が2000万円なら貸付の上限は2000万円まで。逆に、回収困難な売掛金債権が1500万円であったとしても、掛金総額が100万円であれば、共済金貸付金は1000万円までしか借りられません。

 ただし、3200万円の借入枠がある場合、貸付金の総額が3200万円に達するまでは、貸付を受ける回数に制限はありません。

 たとえば2000万円の売掛金が回収できなくなったため共済金を2000万円借りたとすると、借入の上限が1200万円に下がるものの(2000万円借りた時点で掛金200万円分の権利は消滅し、残りは120万円になります)、この時点で新たな貸付を受ける場合は、1200万円までの借入が可能です。常に貸付金の上限は3200万円であるため、たとえば再び積立てを続け積立額が300万円になったとしても、貸付金の上限は償還中の金額も含め3200万円となります。

 また経営セーフティ共済には、取引先の倒産などが起きていない場合でも、臨時に事業資金などが必要になったとき、共済から貸付を受けられる「一時貸付制度」もあります。生命保険の「契約者貸付」のようなものと考えればいいでしょう。

 貸付を受けられるのは、30万円以上5万円刻みで、上限は、解約の場合に受け取れる解約手当金額の95%の範囲内(おおむね掛金総額の約70%から95%の範囲内)です。

 貸付金利は、市場金利に応じて見直されますが、現在は年利1.5%です。ただし、緊急経済対策の一環として平成22年3月末までに受け付けたものについては、年利0.5%になる特例もあります。一時貸付金が実際に振り込まれるのは、申し込んで1週間後くらいです。




 気になるのは、一時貸付を利用した場合、共済金貸付金はどうなるのかということです。たとえば、現在320万円積み立てている企業が、300万円を一時貸付で借りているときに、取引先が倒産したらどうなるのでしょうか。この場合でも、3200万円の上限までの借入を受けることが可能です。ただし、一時貸付で借りている300万円を差し引かれるため、実際に借りられるのは2900万円までということになります。


◆貸付が受けられないケース

 取引先事業者の倒産により回収が困難となった場合でも、借入ができないケースがあります。

 まず、夜逃げ、私的整理、内整理等は貸付の対象になりません。倒産の定義は、破産手続きの開始、民事再生手続きの開始、特別清算の開始が申し立てられた等の場合、または手形交換所に参加する金融機関で取引停止処分を受けた場合で、これらが貸付の対象となります。

 じつは、夜逃げなども貸付の対象に加えて欲しいという要望は強いのですが、こうした事案ではいつ倒産したのか、どの時点で倒産と言えるのか、といった証拠が取りにくいのが対象にできない理由です。多くの中小企業から預かったお金で貸し付けるという制度の性格や、悪質な借入申込みが増えれば、制度自体が成り立たなくなる危険性もあることを考えれば、ある程度はやむを得ないのでしょう。

 ただ、民間の調査会社の統計を見る限り、すべての倒産のうち、法的整理と取引停止が約9割を占めているようです。


◆借入金の返済方法

 借入金の返済期間は5年間。ただし、当初の6ヵ月は据え置き期間があるため、厳密に言えば54(60ヵ月−6ヵ月)回の元金均等払いで返済することになります。

 3200万円の満額を借り入れた場合、1ヵ月の返済は約60万円となります。

 注意が必要なのは、積み立てた320万円は、返済に充てることはできないということです。先述したとおり、貸付を利用した場合、借入額の10分の1の額が積み立てた掛金総額から控除され、掛金の権利が消滅してしまうからです。


 このため、この借入額の10分の1の額が利息に当たるのではないか、という意見もあるようですが、借入期間5年の返済ですから、あえて金利換算すると年利で3.84度にしかなりません。無担保・無保証人で、他の金融機関から3.84%以下の金利で借り入れるのはなかなか難しいはず。この制度に加入する意味は十分あります。



 では返済中に経営が苦しくなり、それ以上の返済が難しくなった場合はどうすればいいのでしょうか。

 機構では、回収のための専門部署を設けています。5年間の元金均等返済が基本ですが、この方法での返済が難しい場合、条件変更の相談には乗ってもらえるようです。


◆申請・解約方法

 共済への申込みは、機構と業務委託契約を結んでいる金融機関や全国の商工会・商工会議所などが窓口になります。ただし、制度に関して相談したい場合は、機構内に「共済相談室」があります。電話番号は「050−5541−7171」です。

 金融機関と融資取引があればとくに資料を準備する必要はありませんが、取引がない場合は商業登記簿謄本や納税証明書、確定申告書の写しなどを準備する必要があります。

 商工会・商工会議所等の会員も添付書類は不要なので、融資を受けている金融機関や会員になっている商工会・商工会議所で申し込むのがいいでしょう。

 ただし、いずれの場合も申込金として希望する1ヵ月分の掛金は準備することが必要です。前払いで1年分支払うこともできます。掛金を払えばその時点で領収書が発行されるので、それを添付して損金処理してください。

 解約はいつでも好きなときに申し出ることができ、加入から12ヵ月以上経過していれば一定の「解約手当金」が戻ってきます。

 解約手当金の金額は、掛金を納めた月数や解約理由により異なりますが、12ヵ月に達していれば積み立ててきた金額の80%、40ヵ月経過すると100%戻ってきます。(図表参照)ただし、掛金納付月数が12ヵ月未満のときは掛捨てとなるので注意してください。

図表 解約手当金の返還率
掛金納付月数
任意解約
機構解約*1
みなし解約*2
1ヵ月〜11ヵ月
0%
0%
0%
12ヵ月〜23ヵ月
80%
75%
85%
24ヵ月〜29ヵ月
85%
80%
90%
30ヵ月〜35ヵ月
90%
85%
95%
36ヵ月〜39ヵ月
95%
90%
100%
40ヵ月以上
100%
95%
100%

*1

加入者が12ヵ月以上の掛金の滞納をしたとき、または不正行為によって共済金の貸付を受けようとしたときなどに機構が行なう解約

*2

加入者が死亡(個人事業の場合)、会社解散、会社分割(その事業の全部を承継させるものに限る)、事業全部譲渡のときは、その時点で解約されたものとみなされます(ただし、共済契約の承継が行なわれたときは解約になりません)。


◆上手な利用法

 一つは、共済の掛金が損金処理できるという特徴をうまく活用する方法です。

 たとえば、業績が好調で利益が出ることが判明した際、経営セーフティ共済に加入して掛金を損金処理することで利益を減らし、節税することもできます。

 仮に決算の3ヵ月前に利益が出ることがわかったとします。そこで経営セーフティ共済に加入するのです。月の掛金の最大額は8万円なので、損金処理できるのはわずか8万円×3ヵ月分で24万円と思うかも知れませんが、そうではありません。前納制度を利用すれば、前払いした掛金も、当月+11ヵ月分まで当期に支払った掛金として認められ、損金算入することができるからです。

 つまりこの場合は、96万円を利益から差し引くことができるのです。ただし、過去に遡って掛金を納めることはできません。

 また、長期間共済に加入して積立限度額が320万円に達してしまえば、掛金を払うこともなくなるので、もうそれ以上節税効果は見込めません。その場合は、いったん解約して、その上で再度積み立てる方法もあります。

 解約すると返戻される「解約手当金」は益金(法人の場合)または事業所得の雑収入(個人の場合)として計上しなければなりませんが、従業員への退職金の支払いや設備投資など、多額な経費がかかる年に解約して、解約手当金を有効に利用する方もいるようです。ただし、再加入は新規加入と同じ条件になりますので注意して下さい。

 なお、緊急経済対策の一環で、東京都、大阪府、千葉県、浜松市などの自治体では、掛金の一部を助成する制度も導入されています。制度を利用する条件は自治体により異なりますが、東京都の場合、6ヵ月以上の掛金を納付しており、かつ共済に加入資格のある東京都内に主たる事業所を有する中小企業者等を対象に、6ヵ月分の掛金の4分の3、最大36万円の助成を行なっています。東京都への助成金の申請期間は平成21年12月18日から平成22年3月5日。ただし、12月までに新たに共済に加入することが条件となります。

 受付期間や条件などは自治体により異なるので、確認するようにしてください。

 取引先の倒産リスクに備えながら、節税にもなるこの共済制度、加入を検討してみてはいかがでしょう。


〔月刊 経理WOMAN〕