中小企業向け「緊急保証制度」「予約保証制度」
   
作成日:03/19/2009
提供元:月刊 経理WOMAN
  


無担保8000万円&借入予約はこうして使え
中小企業向け「緊急保証制度」「予約保証制度」の活用ポイント教えます




 不況下で業績悪化に悩む中小企業者を対象とした新たな支援策が講じられています。平成22年3月31日までの時限措置として実施されている「緊急保証制度」と「予約保証制度」がそれです。前者を利用すれば無担保で最大8000万円の借入が可能です。また後者の制度を使えば、事前に保証枠を予約しておくことで、必要時にすぐに資金調達ができます。ここではこれら制度の活用ポイントを解説します。

 昨年、100年に一度といわれる不景気の嵐が世界中を襲いました。実質GDPが年率換算で12.7%減を記録するなど、その嵐は今年になって益々激しさを増し、日本の産業・雇用を下支えする中小企業を直撃しました。

 景気低迷による消費の冷込みで売上は減少、多くの企業では、利益率も悪化の一途を辿っています。

 一方金融機関においても、金融危機の影響で保有する有価証券の価値が大幅に減少、そして倒産企業の増加による不良債権処理の増大で収益が急速に悪化し、積極的に中小企業への貸付ができない状況にあります。

 中小企業と金融機関、双方同時に危機に陥ったことによる負の連鎖を食い止めるために、政府が昨年秋に打ち出したのが、ここでご紹介する一連の中小企業向けの融資制度です。

 まずは、制度の概要を見てみましょう。


◆緊急保証制度の概要

 不景気の影響を受けた一定の条件を満たす中小企業に対する、信用保証協会の保証付き融資制度です。この制度(原材料価格高騰対応等緊急保証制度)の概要は次の通りです。


1)

一般保証とは別枠で、無担保・無保証で8000万円まで、有担保の場合は、2億8000万円まで保証(既存のセーフティーネット保証と合算されます)

2)

表1の条件を満たす中小企業が対象

3)

保証期間は10年以内(据置期間1年以内)

4)

保証料率は金額に応じて0.4%〜0.8%(通常の保証料率は、企業の財務状況で格付けされた基準に応じたものですが、緊急保証制度では、財務状況に関係なく一律の保証料率となります)

5)

責任共有制度の対象外であること

表1 緊急保証制度の対象となる中小企業
 

1)

指定される業種を営んでいること
760業種が対象となります。詳しくは中小企業庁のホームページに掲載されています。
 

2)

財務状況が「売上の減少」または「原価率の増加」「利益率の減少」のいずれかの状況になっていること
「売上の減少」とは、最近3ヵ月間の平均売上高等が前年同期比マイナス3%以上(※)である状態。「原価率の増加」とは、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が、20%以上上昇しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていない状態。また「利益率の減少」とは、最近3ヵ月間(算出困難な場合は直近決算期)の平均売上総利益率または平均営業利益率が前年同期比マイナス3%以上(※)である状態を指します。

(※)3%以上減少の計算方法は次のとおりです。
最近3ヵ月の平均売上総利益率が33%で、前年同期が35%だった場合
(35−33)/35×100=5.7%
5.7% ≧ 3%(認定基準クリア)
 

3)

上記1)と2)の条件を満たしていることについて、市町村の認定を受けていること
 
 この制度を受ける場合は、まず市町村の窓口で「認定」を受ける必要があります。
 

 今回の緊急保証制度の一番の特長は、5)の「責任共有制度の対象外」という点です。責任共有制度とは2007年10月から始まった制度で、保証付きの融資であっても保証協会の保証は80%、残りの20%の保証は金融機関が責任を持つというものです。


 この制度が始まって以来、保証協会の保証付きの融資であっても、金融機関は20%のリスクを負うことになるため、融資の審査も厳しくなっていました。しかしこの緊急保証制度については、現状を配慮し100%信用保証協会が保証することとされたのです。



 この点が融資を受ける中小企業にとって、最も使い勝手のいい点といっていいかもしれません。


◆予約保証制度の概要

 「緊急保証制度」とほぼ同時期に創設されたのが、「予約保証制度」です。この制度は、将来の緊急的な資金需要に備えて保証付き融資を予約しておくというものです。同一事業の業歴が3年以上であることや、申し込む金融機関との与信取引が1年以上などの要件があります。

 この制度の特長は、通常の保証付き融資であれば資金の需要が発生してから審査を受け、審査終了後融資実行という流れになりますが、先に審査を済ませているので、需要が発生したら即融資を受けることができる、という点になります。

 予約しておける期間は、365日となっています。

 この制度を利用する際に留意しなければならない点をあげておきます。


1)

責任共有制度の対象である
ただし、小口零細企業保証(従業員数、製造業等20名以下、商業・サービス業5名以下)の場合は、保証協会の100%保証となります。
 

2)

保証料率が通常より高くなる
予約時の手数料等は不要ですが、融資を受ける場合、通常の保証付き融資での保証料率より1ランク高い料率が適用されます。したがって、保証料の負担が通常の保証付き融資より高くなってしまいます。
 

3)

一定の事由が生じた場合、貸付が中止される
審査が終了し保証書が発行されて後、代表者が変わったことや、既存の保証付き融資に延滞が生じたことなど一定の事由が生じた場合は、融資を受けることができなくなります。

 現時点では資金が不要でも、将来的には資金需要が予測されるような場合には、予約保証制度を利用し資金需要の備えにされるとよいと思われますが、コスト面等を考慮すると、緊急保証を利用して早めに資金を用意しておくことも、一つの策と考えます。


◆制度融資活用のコツとは

 次に、制度融資を活用するためのコツをアドバイスしておきましょう。

1)責任共有制度対象外の緊急保証制度を上手に活用する

 冒頭でも述べましたが、この不景気で金融機関自身の収益状況が悪化していることから、金融機関はリスクの高い中小企業融資には消極的になることが予想されます。このことから、金融機関にとってノーリスクの100%保証付きの緊急保証融資は、中小企業にとっても、最もリスクの低い融資になると考えられます。





 プロパー融資(保証協会の保証のない融資)を受けることは、以前から「財務が健全な優良企業の証」であり、保証付き融資を脱却してプロパー融資を受けることを目標にし、日々努力を重ねておられる中小企業の経営者の方々が多くいらっしゃることも事実です。しかしこの経済状態の中では、「保証付き融資をうまく利用する」という風に、考え方を変えていただいてもいいかもしれません。

 現状の景気動向では、手許資金をできるだけ潤沢に持っていることが、経営の最も大きな支えとなります。今回の緊急保証制度のように、中小企業にとってありがたい制度は、条件が合えば、活用するのが得策と考えます。

2)地域独自の制度をうまく活用する

 各地の信用保証協会・地方自治体は、独自の中小企業の資金調達支援策を打ち出しています。最近では、ほとんどの信用保証協会が、ホームページで制度の詳細を公開しています。管轄の保証協会のホームページで、自分の会社にとって、より有利な制度を見付けてください。

 また「自分の会社が対象業種に該当するか」など、対象業種リストで調べてもわからない場合などは、直接市区町村の窓口や保証協会に電話で問い合わせてみてもいいでしょう。

 ただ、市区町村や保証協会の窓口は非常に混みあっていることが多いので、問合せ等の際は十分下調べを行なってからにするとよいでしょう。

3)信用保証料を低く抑える

 次のような方法で、信用保証料を低く抑えることができないか検討してみましょう。



地域の特例を利用する
東京都など、小口零細保証の場合等は、「信用保証料の半額を都が負担する」という特例を設けている地域もあります。
 


「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリストを利用する
税理士等が作成したこのチェックリストを提出して、要件に該当すれば信用保証料が0.1%割引になります。顧問税理士等に作成をお願いするのもいいでしょう。
 
4)具体的な数値資料を用意する

 金融機関や保証協会は、なぜその金額の資金が必要なのか(要資事情といいます)を、最重要視しています。とくに運転資金の場合は具体的な数値資料で、要資事情と借入金返済計画を説明することで説得力がアップし、必要額が調達できる可能性も高くなると考えられます。


◆長期的には格付けアップを目指せ

 金融機関再編による支店の統合・人員削減などで、金融機関の仕事のやり方は、昔と随分変化したといわれています。また、バブル期以前の「担保至上主義」に対する反省の面からも、融資の判断は「決算書によるスコアリング」が中心となっています。

 従来のような「長いお付合い」等、融資の現場において人情的な要素は、影をひそめているともいわれています。このような状況ですから、会社の決算の数字を良くすることは、中小企業にとって必須の課題です。


 まずは、金融機関の信用格付けの方法について理解しておきましょう。金融機関は、決算書の数値の分析(定量分析)と、数値には現われない経営者の資質や従業員のモラール等(定性分析)の2面から、企業を格付けします。このうち決算書の数値で判断する定量分析の比重が、7割以上を占めるといわれています。



 メガバンクの中小企業の格付けの場合は、定量分析が100%ともいわれていて、決算書の数値を良くしないことには、格付けアップは到底見込めないということになります。

 具体的に、定量分析格付け(決算書の数値成績)アップの対策としては、以下のようなことが考えられます。

1)自己資本比率を上げる

 定量分析指標で最も重要なものが「自己資本比率」です。「自己資本比率」とは総資本(負債と自己資本の合計)に対する、自己資本の割合のことです。これは、調達した資金のうち、返済しなくてもよい自前の資金の割合を表わし、この割合が大きいほど、財務の安全性が高い企業となります。

 ある格付けスコアリング表のサンプルでは、「自己資本比率15%未満で、10点満点中0点」という評価になっており、30%以上でようやく10点満点中6点です。

 中小企業庁の統計では、平成17年の中小企業の自己資本比率の平均は14.8%です。中小企業の中で平均点の自己資本比率であっても、信用格付けでは1点ももらえないのが現状です。

 最低でも自己資本比率30%以上を目指して、財務の健全化対策を実行したいものです。自己資本比率を上げるための対策の一例を表2にまとめましたので、参考にしてください。

表2 自己資本比率を上げるための対策

1)

不要な資産を整理する
返済見込みのない貸付金・不要な有価証券・遊休資産は整理しましょう。これらの資産は銀行が格付けをする際には、綿密に査定します。したがって、これらの資産を整理しないままでいると、銀行が算出した自己資本比率は、お手元の決算書で計算した比率よりさらにシビアなものとなります。
 

2)

在庫はできる限り圧縮する
過剰在庫は最も資金繰りを圧迫します。経理部が、直接在庫の圧縮を実施することは難しいですが、在庫管理システム等による帳簿在庫の作成を通じ、実地棚卸との差額、過去との比較など問題点を洗い出し、提案することは可能です。
 

3)

与信管理をしっかりする
せっかくの売上も、貸し倒れてしまうと企業の努力が水の泡になってしまいます。与信管理をしっかりしているか、甘いかは、融資を行なう金融機関もしっかりチェックしています。迅速な入金確認はもちろん、入金が遅れた際の対処方法のルール作り、取引先の与信調査、営業部との連携など、経理部が対策をリードすることは多くあります。
 

4)

利益を出す
実際に増資をすること以外で、自己資本を増やす源は、税金を払った後の利益だけです。このご時勢で売上増加は見込みにくいことから、できる限りコストの削減を図り、利益が出る体質にすることが必要です。

2)社長に財務に強くなってもらう

 経営者自身が財務を意識していることは、融資審査の際に大きなポイントとなります。そして損益計算書よりも、貸借対照表を理解することが重要となります。

 融資の交渉の際、自社の貸借対照表の数値の推移や問題点を、金融機関に経営者が自分の言葉で説明できることで、大変な得点アップにつながるはずです。

3)定性分析対策もしっかりと

 格付けは、決算書による定量分析がそのほとんどを占めると書きましたが、数値以外の定性分析も重要な要素であることには違いありません。とくに、地域密着型の地方銀行や信用金庫の場合は、定性分析による判断も重要視する傾向にあります。従業員のモラール向上など、経理部が主導して改善できる点も多いと思います。

4)金融庁の指針をチェック

 金融機関を監督する金融庁が、中小企業の融資に関する指導指針を出しており、その内容について、わかりやすいパンフレットを金融庁のホームページで公開しています。このような監督官庁の方針も、情報の一つとして知っておくと、資金調達の際に役立つと考えられます。

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 この大不況を乗り切るためのキーポイントは何より「財務」です。この時代こそ、経理担当者の腕の見せ所です! 上手な情報収集で、会社の発展のために頑張ってください。

〔月刊 経理WOMAN〕