「会計」と「税法」のルールの違い
   
作成日:05/20/2009
提供元:月刊 経理WOMAN
  


交際費 引当金 資産評価…いろいろあります。
経理担当として再確認しておきたい「会計」と「税法」のルールの違い




 会計ビッグバン以降、会計と税法のルールがますます乖離しています。たとえば、各種資産の評価損について、税法では落とせません(損金に算入できません)が、会計上は計上しなくてはなりません。また、会計では適正に計上すべき引当金などは、税法ではほとんど損金に落とせなくなってきています。経理担当として最低限確認しておきたい会計と税法の違いについて、改めてマスターしておきましょう。

◆なぜ、会計と税法でルールが違うの?

 会計と税法では、企業がその活動をとおして獲得した「儲け」の計算の仕方はほぼ同じです。ところが、その目的の違いにより、次のように差異が生じます。

1)会計の目的

 企業の会計の目的は、株主に対し経営成績や財政状態を報告し、剰余金の分配額を算定することです。そして、この剰余金の源泉となる「利益」は、企業会計原則など「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従い、次の式により計算されます。

 会計上の儲け(利益)=収益-費用(および損失)

2)税法の目的

 一方税法は、一定期間の事業活動の結果である「所得」に対し、税率を乗じて計算します。この税務における「所得」の算定は、公平、かつ、適正に計算されなければなりません。税法上の「所得」は、次の式により計算されます。

 税法上の儲け(所得)=益金−損金

 この会計と税法の二つの式を比べると、両方とも収入からコストをマイナスしているので、一見同じように思えます。ところが税法上の「所得」の計算は、課税の公平・適正な税負担の実現・政策的配慮により、さまざまな規定が定められています。

 このため、収益と益金、費用と損金は、ベースは共通しているのですが、異なる点が出てきます。

 このように、会計と税法の目的の違いが、会計と税法のルールの差となっています。一般的に会計のルールのほうが、株主や債権者保護の観点から、費用や損失をなるべく多めに計上しようとするため保守的です。税法については、税収確保の観点から、損金とするのをできるだけ制限しようという傾向が強くなっています。

 そして、この違いを理解することは、経理担当者の方にとっても、大変重要なことなのです。


◆ルールの違いを理解しておこう

 ところで、経理担当者はなぜルールの違いを理解しておく必要があるのでしょうか? 実際の例を挙げてみましょう。

 A社は嬉しいことに今期業績好調で、どうも事業計画以上に利益が出てしまいそうです。ここで社長は「税金を払うのであれば、周囲に少しは利益を還元したい」と考え、交際費や従業員の慰安にお金を使いました。



 会計上は、交際費や慰安のために支出した福利厚生費はすべて費用として認識されますが、税法上は課税の公平の観点から、損金として認められないものがあります。この取扱いを知らないまま、社長はお金を使ってしまったのです。



 そしてA社の決算会議でこんな会話が…。

「社長、今期の納税額は○○○万円になります」
「そんなはずはない。これじゃあ前の予想税額と、まるっきり変わらないじゃないか!」

 A社は、交際費や慰安のための支出だけでなく、税金分も社外流出することになってしまいました。これではダブルパンチです。

 もし、この会社の金庫番である経理担当者が、「会計」と「税法」の取扱いの違いを押さえていて、社長に損金となる経費の使い方を進言することができたとすれば、このようなことにならなかったかもしれません。

 経理の仕事の基本は、会計の観点から企業の利益を捉え、経営実態を把握することですが、「利益の金額に応じて税金がかかる」と単純に考えていると、費用がすべて損金となるわけではないので、決算の際に予想以上の税額が発生し、資金繰り等に影響を及ぼすこともあります。

 一方で、税法の観点からのみ数値を捉えていては、経営実態が正確に把握できず、株主や債権者に対し正しい報告ができないこととなります。

 したがって、「会計」と「税法」のルールの違いを押さえ、両方の視点をもって会社の業務にあたることは、経理担当として、とても大切なことなのです。


◆ルールが違う具体的ケース

 それでは具体的に、会計と税法でルールが違うケースを確認してみましょう。実際はここに挙げられたケース以外にも、会計と税法の差異は存在するのですが、ここでは経理担当者が日々の会計処理を行なう上で、比較的よく遭遇するだろうケースに絞って紹介します。

1)経過勘定項目

 会計では、期間損益計算適正化のため、その期間に属さない収益・費用については、前払費用・前受収益、その期間に属する収益・費用については未払費用・未収収益といった経過勘定項目を計上することで処理します。税法も基本的には会計上の収益・費用の計上基準に準拠していますが、実務的な観点から、経過勘定項目のうち前払費用について、短期前払費用の例外規定を設けています。

2)減価償却資産

 有形固定資産(建物、機械装置、器具備品、車両等)・無形固定資産(商標権、営業権、ソフトウエア等)については、固定資産として計上される資産の範囲・取得価額は会計と税法でほとんど違いはありません。両者の違いは、取得後行なわれる減価償却計算の部分に現われます。




 会計上の減価償却は、取得した固定資産について、その使用する各期間に渡って配分し、費用化します。つまり、企業の事業の状況や利用度により、当然固定資産の耐用年数や残存価額は異なるので、会計上は各企業が資産ごとに耐用年数を見積もり、独自に計算するという建て前です。

 一方で税法上は、各資産ごとに耐用年数を見積もることは容易ではありませんし、また、この「独自に計算する」という自由度を認めれば、それを逆手にとって、「減価償却費を多めに計上してしまえ」という会社が出てくる可能性もあります。

 そこで税法では課税の公平の観点から、減価償却について耐用年数をはじめとした各種ルールについて詳細に規定し、その方法によって算出された金額を償却限度額としています。そして、会計上で減価償却費として処理された金額のうち、この償却限度額の範囲内の金額についてだけ損金算入することとしています。

 ちなみに実務では、会計上の減価償却費の計算に際しても、税法で規定した耐用年数・償却方法を用いて計算することがほとんどです。そうした場合、会計上の減価償却費と税法上の減価償却費は一致しますので、差は生じないことになります。

3)引当金

 引当金は、会計上、将来の費用または損失を当期の収益に対応させるために繰り入れるものです。会計上の引当金の設定要件は次のとおりで、利害関係者へ正しい財務状況を示すために、必要がある場合はその計上は必須です。

イ.将来の特定の費用または損失であること
ロ.その発生が当期以前の事象に起因していること
ハ.発生の可能性が高いこと
二.その金額を合理的に見積もることができること

 一方税法は、見積もり計上された引当金について、あくまで限定的に損金算入を認めています。そのため、通常は「会計上の引当金繰入額>税務上の損金算入限度額」となり、この場合差異が生じることになります。

 引当金の代表例は、貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金です。

4)役員給与

 人件費も、会計上は費用となっても税務上損金とならない場合があります。その代表的なものが「役員給与の損金不算入」です。

 平成18年度の税制改正以降、役員給与については原則として、決算時の株主総会で決議した時以外は「上げてもダメ、下げてもダメ」ということになりました。1ヵ月以下の一定の期間ごとに、その事業年度内の各支給時期における支給額が同額であることが損金算入の要件(定期同額給与)とされたので、この定期同額給与のラインをオーバーする場合には、このオーバーした部分が税法上の費用にならないので注意が必要です。

 その他に、会計上と税法上の差異が生じるケースとしては、「過大役員報酬および使用人給与の損金不算入」があります。これは、役員および役員と特殊関係にある使用人(役員の親族など)に対して支給する給与のうち、不相当に高額な部分を税法上否認するものです。

5)交際費・寄付金

 交際費は、得意先等の事業に関係のある人に対して企業が接待・供応・慰安・贈答を行なったときに支出する費用です。寄付金は、事業との関係性は問わず、金銭その他の資産等を相手に贈与、または無償で供与することを言います。

 「下ごころ」があるのが交際費、ないのが寄付金、といったところでしょうか。この交際費・寄付金ともに、会計上は費用としていても、税法上はその損金算入に制限を設けています。

 なぜかと言うと、交際費の損金算入に限度を設けなければ、企業は無駄遣いをしてしまい、内部留保を阻害することになりかねないからです。また、寄付金については、これを無制限に損金とすると、好きなところにばかり寄付をして、法人税の一部が寄付金に置き替えられる結果となってしまうからです。

6)リース取引

 会計上では、平成20年4月1日以降開始事業年度から適用される新リース会計基準により、所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理が、「売買処理」に一本化されることになりました。

 ただし例外として、個々のリース資産について重要性が乏しい場合(契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引など)には簡便的な取扱いを認め、今までのリース料の処理のように「賃借料」等として支払った金額を費用処理してもよいこととしています。

 一方税法上は、ファイナンス・リースについては例外なく「売買処理」としています。企業が会計上の例外処理を適用し「賃借料」等として処理している場合でも、税務上は「賃借料を償却費とみなす」ということになっています。

 従って消費税の計算をする際の仕入税額控除については、会計上「売買処理」をしていようと「賃借料」等の処理をしていようと、リース契約開始時にリース総額の消費税額を一括控除することになります。

 ところが、これではあまりにも取扱いが頑な過ぎると思ったのでしょうか。平成20年11月、国税庁のホームページで、「賃借料等処理をした場合には、リース料を支払う都度課税仕入れとする処理(仕入税額の分割控除)も認める」と公表されました。なんだかややこしいですね。

 リース料は、会計と税法の狭間で混乱している最たる例と言えるでしょう。

〔月刊 経理WOMAN〕