ドキュメント/やってみました「電子申告」
   
作成日:04/27/2004
提供元:月刊 経理WOMAN
  


インターネットで簡単に納税・申告ができる!
ドキュメント/やってみました「電子申告」




 国税に関する申告、納税及び申請・届出は、これまで書面で行なわれていましたが、今年の2月からパソコン・インターネットを利用してできるようになりました。

 この「電子申告」のシステムは「e-Tax」といわれ、平成12年に政府が発表した電子政府の実現を図る「e-ジャパン戦略」の一つの柱として導入されたものです。

 e-Taxが全国で適用されるのは6月からですが、それに先駆けて2月2日より名古屋国税局管内(岐阜県、静岡県、愛知県、三重県)で、個人の所得税と消費税の申告受付を開始。3月からは法人税を含めたすべての申告と納税の受付も始まりました。

 私は、名古屋税理士会の電子申告担当責任者として、また、初の電子申告者になりたくて初日に電子申告にトライしました。その体験で気付いたこと、感じたことを以下にお話していきます。


●記念すべき時間

 2月2日。朝9時の時報と共にパソコンの操作を開始。

 この日私は、新聞社の取材を受けていたのですが、カメラのフラッシュを浴びる中、緊張しながら送信ボタンを押しました。

 送信データの受付を知らせる「即時通知」があったのは、9時3分49秒(初期登録分)。入力内容に誤りや不正がなく、データが無事受理されたことを案内する「受信通知」を受けたのは、9時7分13秒でした(申告データ分)。

 記者の質問に答えたりしていたため、スムースに操作できず、私より早く送信を完了した人がいたようです。残念ながら1番目の申告者になることはできなかったのですが、私にとっては記念すべき時間となりました。歴史的な場面に遭遇できただけでも大変光栄に感じました。

 申告完了後、取材してくださった新聞記者が「机を貸してください」といい、その場で原稿を打ち込み、データを新聞社へ送信していました。その様子を見て「おお! すごい」と思いました。でも今は、このようなことはごく普通。デジタル時代はすでに現実となっているのです。

 弁理士が行なう特許庁への申請はすでにほぼ100%電子化が進んでいるのに対し、私たち税理士が行なう諸手続きは、紙の書類を役所へ届けるといったように、時代に遅れをとっていました。でも、この電子申告制度の導入で、新たな一歩を踏み出したのです。今後、経理のイメージが大きく変わる、そんな予感がしました。


●あっという間に申告できたけど‥

 私もそうでしたが、電子申告したほとんどの人が「えっ! こんなにあっという間にできるの?」とその速さに驚いたといいます。

 従来の書面による電子申告の場合、パソコンに入力したデータを紙にアウトプットし、製本して郵送の準備をしたり、所轄の税務署窓口や郵便局へ足を運んだりする時間が必要です。でも、電子申告の場合、とくにエラーなどが発生しなければ送信ボタンを押してから約2秒で「即時通知」が来ますし、その後1分もしないうちに、「受信通知」が届くのです。

 あっという間の出来事で、本当にこれで手続きができたのかどうか少し不安になりましたが、「受信通知」には、提出先、利用者識別番号、氏名、受付番号、受付日時、課税期間、種目、課税標準、税額がしっかり表記されており、それを見て安心しました。

 申告手続きにかかる時間や事務負担を減らすことができるのは、大きなメリットだといえましょう。

 操作については、パソコンに触れたことがある人ならそれぼど難しいとは感じないはずです。

 入力の仕方で分からないことがあったとしても、国税庁のホームページで詳しく解説されていますので、それを見れば解決できると思います。

 でも、不具合が生じたり、不便に感じたりする点はありました。

 私がもっとも不便に感じたのは、文字データの入力ミスがあったとき、どこが間違いなのか画面に表示されず自分で見つけなければならないことでした。

 e-Taxソフトでは、セキュリティ上、作成した申告・申請データをXMLデータ(注1)に変換したうえ、送信されるしくみになっており、文字入力は全角カタカナで行なう必要があります。半角カタカナは使えず、また丸付き数字、ローマ数字は代替文字で入力しなければなりません。数字の入力エラーは訂正箇所を表示してくれるものの、文字入力については半角で打ってしまった場合等、どの部分にエラーがあるのか教えてくれず、入力した内容を一つひとつチェックし、入力し直さなければならないのです。

 また、今回私が申請を行なったとき、システムの不具合がいくつかあり、解決するまでにかなりの時間を要してしまいました。

 その一つは「定率減税額」の表示についてです。

 ご存知のとおり、定率減税額は「再差引所得税額×20%」で算出し、その上限額は25万円です。e-Taxシステムでは自動計算されるのですが、「再差引所得税額」欄に数字が自動的に算出された後「数値が範囲外です(XXXX)」というエラーメッセージが表示され、「定率減税額」欄の数字が反転し、完了できない状態になってしまったのです。

 何度入力し直しても、同じことが起こるので国税局に問い合わせたところ、e-Taxシステムでは限度額の判定がされず、先の計算式で算出された金額が25万円を超えた場合、自分で25万円と補正入力をしなければ、エラーが出てしまうということが分かりました。残念ながら、このシステムエラーは3月に入った今もまだ改善されていませんが、私が問い合わせをした翌日に国税局のホームページ内でそのトラブル回避方法を明記してくれました。

 また、名古屋でのトライアル結果を踏まえて、システムの不備、不具合は徐々に改善されていくようです。スタートしてから1ヵ月後にはシステムが若干、バージョンアップされました。ここにこのシステムを浸透させようという国税庁の真剣な姿勢が伺えました。全国に展開するまでには、より使いやすいソフトになるものと私は確信しています。


●電子申告するには事前準備が必要

 電子申告に参加するためには、事前準備が必要です(表参照)。




 まず、ハード環境に関しては、パソコンが要ります。ちなみに、国税局のホームページには「Windows98SE以上のOSを準備すること」と書いてありますが、できれば「XP」または「2000」がよいようです。「98SE」だと、証明書確認作業時点で文字化けするほか、「Me」だと電子証明書を読み込むために必要な「リーダライター」の動作が不安定になったりすることもあるようです。

 ソフト面では、次の二つの手続きを事前にする必要があります。

1)「電子申告・納税等開始届出書」の提出

 電子申告を選択するためには、事前に所定の届出書を最寄りの税務署へ届け出なければなりません。

 提出するときに、本人確認用の書類(運転免許証等のコピー)を添付する必要があります。法人企業については、法人の登記簿謄本が必要です。

 届出書提出後2ヵ月以内に、申告データ送信の際に必要となる利用者識別番号と仮暗証番号(IDとパスワード)が手元に届きます。

2)「住基カード(住民基本台帳カード)の取得と電子証明書の登録」

 住基カードを取得して、電子証明書の登録(公的個人認証番号の格納)をします。住基カードは、市役所窓口へ出向けば、その場で発行してくれます。

 先述のように、納税者としては手間がかかるとはいえ、24時間365日受信を受け付けられるようになれば(今は利用日と時間に制限あり(注2))、仕事が忙しかったり、家や職場から税務署が離れた距離にあったりする人にとって、こんなに便利なものはないと思います。


●ともかく参加しないと始まりません

 国は「e-JAPAN戦略」で、早期にIT立国を目指そうと本気で電子申告に取り組んでいます。最終的な目的として、利用者(=納税者)本位の、簡素で効率的な政府の実現を目指しているのです。

 納税者の電子申告に参加するメリットは、ただ自宅から申告できるというだけではなく、最終的には「小さな政府を実現」することにあります。電子申告による税務行政の効率化が最終的には国民の税負担の軽減につながり、この点こそが目先ではなく、本当の納税者のメリットになるものと期待しています。

 少なくとも、3月22日に開始された法人の電子納税制度は、納付情報の登録も含めて明らかなメリットがあります。税額が出た後で、そのままインターネットバンキングで納付できるようになるので、企業にとってみれば業務の効率化に役立つといえます。

 さあ、もう電子申告の時代は来ています。みなさんも積極的に参加してみてはいかがでしょうか。

注1「XML」…データや文書の交換用フォーマットを作る言語形式の一つ

注2 現在は、月曜日から金曜日の午前9時から午後6時(所得税の確定申告のみ午前10時から午後9時)

〔月刊 経理WOMAN〕