「納税資金」の準備と支払い
   
作成日:03/24/2006
提供元:月刊 経理WOMAN
  


「納税資金」の準備と支払い
  -こうすれば苦労せずに済む!!




 企業は利益を上げなければ成長していけません。しかし、利益を上げると納税が待っています。経理ウーマンにとって、納税資金の準備と捻出は頭の痛い問題なのではないでしょうか。

 そこでここでは、納税資金の準備と支払いのノウハウをまとめて紹介します。

■なぜ、納税資金対策が必要なの?

 納税資金について、苦労している経理担当者は多いのではないでしょうか。というのも、会社に限っていえば、税金の問題は最終的には資金繰りの問題になるからです。

 会社の目的は事業を継続していくことです。そのためには当然、利益を上げていかなければなりません。いくら節税したとしても、利益が上がっている限り、いつかは税金を払うことになります。いつまでも税金の支払いが発生しないということは、「じつは儲かっていない」ということなのです。これでは、会社は継続していけません。したがって、会社の継続を前提とする限り、最終的には、税金を払えるか、またどのように払うかという資金繰りの問題に行き着くのです。

 納税日本一で有名な銀座まるかんの斎藤一人氏は、「キャッシュがあれば節税の必要なし」といっています。確かに、現金さえあれば税金の問題はほとんどないといえるでしょう。しかし、納税の際にその分の現金が十分留保されている会社は、めったにありません。なぜなら、ほとんどの資金が次の事業の仕込みや、未回収の債権、在庫などにつぎ込まれてしまうからです。したがって、納税資金については、納税の直前ではなく、事前に意識してその資金を準備していく必要があるのです。


■納税資金準備のポイント

 納税資金準備のポイントをひと言でいえば、「いかに通常の資金繰りの中で納税ができるか」ということになるでしょう。つまり、毎月の支払いと同様、「税金も経費として考える」ということです。その分かりやすい例が源泉所得税です。

 源泉所得税は、原則として、毎月の給与や報酬などから控除し翌月の10日に納税することになっています。あくまで給与の一部ではありますが、納税義務は会社にあり、滞納すれば本税の10%(自主納付の場合は5%)もの不納付加算税が課せられます。

 源泉所得税は、毎月だからこそ支払えるのであって、仮に1年間分まとめて支払うなどということになると、とても難しいのではないでしょうか。現に、資金繰りが苦しいからと、これを滞納して雪だるま式に増えた税金に苦しんでいる会社が多数あるのです。

 毎月支払う源泉所得税に対して、法人税や消費税は、年に1回あるいは2回(消費税は4回、12回もあります)支払うのが原則です。毎月払いではないので、いざ支払うときになって困るのです。これをいかに月次化できるかが納税資金準備のポイントといえるでしょう。

 では、具体的な納税資金準備のテクニックを紹介していきます。


■納税預金を積み立てる…?

 納税資金を用意しておくというと、まず思い浮かぶのは納税用の預金を作ることではないでしょうか。そこに利益の状況に応じて納税資金を貯めていき、納税の際にこれを取り崩して納付する。そして、納税以外の用途には絶対使わないようにすれば、問題なく納税できるはずです。

 しかし、これがなかなか難しいのです。経理ウーマンのみなさんならよくご存知だと思いますが、予定していた入金が遅れたり、売上が計画どおりに上がらなかったり、次の事業展開のためにお金が必要になったり、さまざまな状況によってお金がどうしても必要になることがあります。通常資金で足りなければ、納税のために貯めていたお金も当然使わざるを得なくなります。

 経理担当者としては納税用に確保しておいた資金であっても、社長や営業の最前線から見たら、「あるお金を何で使わないんだ。納税はそのときに考えればいいだろう」ということになりがちです。会社内において、どうしてもそちらの声の方が強くなるのは、仕方のないことです。

 以上のように考えると、この納税用預金というのは、残念ながらなかなか難しいのが現実なのです。


■納税資金3段階法

 納税預金が難しいということになれば、いったいどのようにすればよいのでしょうか? そこで、納税資金を自己資金で用意できる体質になるための方法を提案したいと思います。これは、納税を無理なく行なえる財務体質を、3段階に分けて作っていくものです。

第1段階…外部資金の導入

 通常の資金繰りの中で、どうしても納税資金が確保できない場合は、外部資金の導入を検討します。一般的には、銀行から納税資金(運転資金)として借入れをします。

 納税するということは、利益が出ているということですから、このような場合は銀行側としても貸しやすいのです。ただし、返済期間は6ヵ月だということを覚えておきましょう。なぜなら、6ヵ月経つと中間納税があるからです。そこでまた次の税金が発生しますので、それまでに返済しておかないと、雪だるま式に不足資金が増えてしまいます。

 「納税のために借入れをするなんて」と思う人もいるかも知れません。しかし、借入金の活用には効用があります。それは、「借入金は返さなければいけない」ということです。当たり前のことのようですが、じつはこれに大きな意味があるのです。

 先述のように、納税資金を積み立てても、何かあればすぐに使ってなくなってしまうでしょう。ところが外部からの借入金だとそうはいきません。絶対に返さなければならないので、何としてでもその資金は確保するということになります。経理担当者から見たら、これは、社長や営業に余分な出費をさせない大きな説得材料になるでしょう。

 借入返済ではありますが、これにより納税資金を確保する習慣を付けていくことができます。長い目で見れば、これが会社の「力」になってくるはずです。

第2段階…内部資金の積立て

 次の段階は、いよいよ自己資金で納税ができるよう、納税用の預金を積み立てていくことです。

 毎月の積立てが理想的ですが、無理な場合は、余裕の出たときに積み立てるようにします。継続させるコツは、「この資金はもうないものと考える」ということです。いずれは税金で払ってなくなるわけですから、そう考えておいた方がよいのです。「余ったら儲けもの」というくらいに考えましょう。

 納税資金の積立てをやっていくには、売上はできるだけ早く回収する、手形は貰わないようにする、在庫をできるだけ持たないようにする、遊休資産(使える状態なのに現在活用されていない資産)や不要な資産は売却してしまう、など現金を増やす努力をしていく必要があります。何しろ、この段階では借入金を返済しながら積立てを行なうわけですから、このように、全社上げての財務改善を行なわないと、内部積立てはできません。社長にもみなさんから「納税資金3段階法」のメリットを説明し、協力してもらうことが必要です。

第3段階…運転資金で納税

 第3段階のポイントは、納税の際に、納税用に積み立てた資金を使わないことです。こういうと驚く人もいるかも知れません。しかし、じつはこれは既に第2段階でやっていることなのです。

 第2段階では納税借入金を返しながら内部資金の積立てをしています。すなわち、借入返済と積立ての二つを同時に行なっているわけです。第2段階が終わる頃には、納税借入れは必要なくなっていますので、この返済はないということになります。したがって、借入返済分の余裕が必ずできているはずでなのす。この余裕分で納税をすればよいというわけです。

 借入返済が終わったときが積立てのチャンスです。毎月返済していた額を別途積み立ててしまいましょう。それまで借入金を返済して来られたのですから、必ず積み立てられるはずです。すなわち、それまでの借入返済と積立ての二つを、今度は内部でやるということなのです。

◇     ◇

 習慣というものは不思議なもので、「その資金はないもの」と思っていると、どこかで切り詰めたり、資金回収を早くする努力をしていたりするものです。もちろん、社長の意識の高さがもっとも大事だとは思いますが、それを後押しするのも経理ウーマンのみなさんの役割ではないでしょうか。

 納税資金の確保は、会社の財務内容の改善にもつながります。みずから苦しい状況を作って、それを乗り越えていくようなものですが、乗り越えられれば会社としてひと回り成長できることでしょう。この機会にぜひみなさんが主導となって納税資金の確保にトライしてみてください。

〔月刊 経理WOMAN〕