「法人税の確定申告」で提出する書類の意味が分かる講座
   
作成日:02/22/2007
提供元:月刊 経理WOMAN
  


「法人税の確定申告」で提出する書類の意味が分かる講座




 「明日、銀行さんが来るから決算書用意しておいて」…このような指示を社長から受けたことのある経理担当の方は、多いはずです。でも…「決算書」って一体何でしょうか? 申告書と決算書って違うの? どこからどこまでの書類を指すのでしょうか? 貸借対照表? 別表? 勘定科目内訳書? たくさんあり過ぎて、どこまで用意して良いか分からない、という経験をしたことはありませんか?

 ここでは、「法人税の確定申告」で提出する書類の意味などについて、できるだけ分かりやすくご説明していくことにしましょう。

◆法人税の確定申告

 まず、法人税の確定申告について簡単に見ていきます。確定申告というと、3月15日の個人の確定申告を思い浮かべる方も多いはずです。

 法人の場合は、原則として決算日より2ヵ月以内に申告することになります。その際の作業としては、取引の記録をまとめた帳簿をもとに「決算」を行ない、その結果として決算書を作成することになります。ここまでの作業は、まだ確定申告の半分です。確定申告をするためには、さらにそこから法人税の確定申告書を作成しなければなりません。法人税の計算の流れとしては、決算書の計算結果を踏まえて、確定申告書を作るという形になっているのです。


◆消費税及び地方消費税申告書

 法人の決算作業を行なう上で、最初に計算・作成するのが、この申告書ということになります。消費税の申告書は、地方消費税の申告もかねています。消費税の税率は、一般的にいわれている5%ではなく、じつは4%です。

 この消費税4%の25%相当額(つまり全体から見ると4%×25%=1%となる)が地方消費税の金額になるのです。4%と1%を合わせると5%になりますが、消費税等申告書ではこの両方を計算するようになっています。申告書の上から2/3が消費税の計算、その下1/3が地方消費税の計算をしており、申告書の最終行で確定申告において支払うべき(還付を受ける)税額が表示されています。経理ウーマンとしては、この最終の税額に注意する必要があります。消費税は、たとえ赤字の会社であっても、負担すべき税額が発生する税負担の大きな税金です。

 そのため、その税額については、会社の資金繰りにも大きな影響を与える恐れがあるので、注意して見るようにしたいものです。


◆法人税申告書

 法人税申告書ほどわけの分からない書類はない、と思うのは私だけでしょうか? 難しそうな書類ということだけで、あまり目をとおしていないという方もいると思います。確かに、法人税申告書は難しい書類です。その難しくしている原因が、別表の種類がたくさんあるということだと思われます。

 別表1から、だいたいの会社で別表16まで、何種類もの別表があり、それぞれが関連性を持って全体の計算ができるというスタイルなのです。種類が多い上に関連性がある、と聞けば敬遠したくなるのも当然かも知れません。しかし、主要な別表の意味と関係を理解すると、案外簡単かも知れません。法人税申告書でもっとも重要な別表は「別表4」です。

 この別表4を計算するために、他のさまざまな別表は存在するといっても過言ではありません。また、最終的な税額を計算するのは、「別表1─1」です。この二つの別表を読み解くことができれば、その会社の申告内容がほぼ分かるようになっています。

【別表4】

 では、別表4とは何を計算しているのでしょうか? 別表4は、その会社の課税所得金額を計算する書類です。課税所得金額とは、税率をかける前の金額になります。

 ここで、法人税は何に対して課税されるか思い出してみてください。会社が「利益」を出すと法人税がかかるというのは、みなさんもご存じのはずです。それはある意味、正解です。法人税の計算では、「利益」が多い会社ほど、多くの法人税を支払う仕組みになっています。しかし、法人税は、「利益」に直接、税率をかけて計算をするということはしていません。利益はあくまで基本で、この利益にさまざまな数字を足し算・引き算をして課税所得を計算することになります。この計算が別表4で行なわれているのです。

 別表4を見てみると一番頭の行には「当期利益(または当期欠損)の額」と表示されているはずです。その後“加算”項目があり、その下に“減算”項目があります。この加減算の結果が別表4の最終行の「所得金額(または欠損金額)」となるのです。

 また、加算減算の個別の計算については、それぞれ他の別表で計算されています。つまり、正しい所得金額を計算するのが別表4である、と理解すればいいのです。

【別表5─1】

 別表5─1は、別表4で計算した項目のうち会社の内部に残っている金額の明細を示した書類です。これは、決算書上の利益金額と別表4で計算した所得金額に差異が生じたものについて、翌事業年度の計算をするために必要な情報を残しておくという役割があります。

【別表5─2】

 別表5─2は、税金の納付状況を表示している書類です。未納税金などがあると、この別表に数字が出てくるので、チェックしてみてください。

【別表6】

 別表6は、所得税の納付状況を示した書類です。法人税の申告なのに所得税? と不思議がる方もいらっしゃると思いますが、法人が所得税を支払うこともあるのです。たとえば、利子。利子を受け取るとき、20%(国税15%、地方税利子割5%)が源泉徴収(支払う前に支払う人が差し引いて支払うこと)されています。所得税は、個人のための税金ですので、法人が支払うと二重課税になるため、これを調整する必要があります。その計算を行なうのが、この別表6なのです。この他に配当を受け取った場合にも所得税が源泉徴収されていますので、この別表6で調整することになります。

【別表15】

 別表15は、交際費の計算を行なう書類です。法人税法上、接待交際費は冗費(無駄な費用)として税負担が課されています。具体的にいうと、期末資本金の金額が1億円未満の法人は、年400万円を超える接待交際費については全額が加算(損金不算入)、それ以下の金額については支出額の10%が加算となっています。期末資本金の金額が1億円以上の法人については、その支出額全額が加算対象となります。そのため、別表15で加算すべき金額を計算し、その計算した金額は別表4の加算項目に転記されることになります。

 経理としては、この金額に誤りがないかをチェックすると同時に、金額が多過ぎないかどうかをチェックしてみてください。税負担が生じる接待交際費については経理としてもチェックが必要な項目です。

【別表16】

 別表16は、固定資産の減価償却の計算を行なうための書類です。16─1は定額法、16─2は定率法、16─7は3年間で償却計算を行なう一括償却で資産の計算を行ないます。ここでの注意点は、法人税の計算において減価償却費は任意償却であるということです。

 たとえば年間10万円償却できる資産があったとしたら、法人は10万円以内なら任意の金額で償却することができるのです。この場合、5万円のみ償却したとしたら、残りの5万円は償却不足となりますが別に税額には影響を与えません。5万円の償却費で所得金額を計算することになります。ただし、その償却不足金額は、別表16上では表示されます。反対に償却費が限度額を超過した場合については、超過額を表示し、この場合は別表4の加算額として転記することになるのです。


◆法人都道府県民税申告書・法人事業税申告書

 所在している都道府県に対し提出する申告書です。法人の本店の他、支店などがある場合には、その都道府県にも提出することになります。申告書には、事業税と都道府県民税の二つの税金が計算されるようになっています。申告書の左側が事業税。右側が都道府県民税です。

◆法人市町村民税

 所在する市町村に対し提出する申告書です。法人の本店の他、支店などがある場合には、その市町村にも提出することになります。


◆決算書

 おなじみ決算書です。決算書は、会社の取引について記録した結果の“帳簿”をもとに作成されます。たぶん、多くの会社の経理担当者が決算書の手前まで作成している、と思われます。

 そして、最終の決算修正仕訳を税理士が入れて、仕上げるというパターンが多いはずです。最終の税額を決算書に反映させるため、そういう形になるのですが、作業的に重要なのは、決算前のそれぞれの取引に関わる処理ということになります。

【貸借対照表】

 貸借対照表は、決算日時点の会社が持っている資産・負債を示した書類です。会社法の施行により、従来「資本の部」と呼ばれていた資本金や剰余金を表示していたところは、「純資産の部」と名称が変わりました。

 この貸借対照表は、資金の流れを表示している計算書ともいわれます。すなわち、会社がどこから資金を調達し、どのように運用しているのかを示す書類という意味です。貸借対照表は、単純に資産負債の明細を表わしていると考えるのではなく、資金の流れを示していると考えると、どこに資金の無駄があるかが読み取ることができるはずです。

【損益計算書】

 損益計算書は、その事業年度の会社の経営成績を示す書類です。すなわち、会社がどのくらいの収益を上げ、どのくらいの費用を使い、最終的にどのくらいの利益(または損失)を出したのかを表わしています。この計算書を見ると、会社が儲かったのか、そうでないのかが一目瞭然になります。損益計算書では、上から「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期利益」「当期利益」などのいろいろな利益が表示されていますが、それら利益の前年比に注意してください。たとえば、営業利益が前期より伸びているのにも関わらず、経常利益が前期よりも減少している場合、どの費用が多くなったため、そのような結果になるのか原因を考える必要があります。

 このようなケースでは、事業拡大のため運転資金などの需要が増加し、業況は拡大したけれども利息負担が増えたためそのような結果になった、などの原因が考えられます。損益計算書を読む、という姿勢で仕事を行なうと、経営者も喜ぶのではないでしょうか。

【株主資本等変動計算書】

 会社法の施行に伴ない、従来「利益処分(損失処理)案」であったものが、株主資本等変動計算書に変わりました。内容としては、純資産の部における変動項目について表にまとめたものです。この表で、資本金や剰余金などの増減、配当などの情報を読み取ることができます。


◆勘定科目内訳書

 主要な勘定科目について、その内訳を表示する書類です。この内訳書の作成にあたっては、経理担当者が主体となって行なうことになりますので、日常の経理処理の間にも、きちんと内訳は把握するために、補助簿などの管理を徹底しておく必要があります。


◆法人事業概況説明書

 従来は任意提出の書類でしたが、平成18年度の法人税法改正で法定書類となったことにより、税務署に対して提出が義務付けられることになりました。

 文字どおり、会社の事業内容についての概況を網羅的に説明する書類です。その内容としては、要約の貸借対照表や損益計算書、代表者と会社の取引がある場合は、その内容と金額、各月の売上高と仕入高・人件費の金額。経理状況や担当者、請求・支払い・人件費の締日・決済日などです。

 それぞれの項目について、正確に書くことはもちろんですが、一番大切なのは「当期の営業成績の概要」について文章で書く部分です。ここの部分は、会社の経営について、数字だけでは説明できない状況の事柄を書くための項目です。

 たとえば、多額の損失を生じている場合などは、その損失が生じた原因を文章で書くことにより、税務署に対して余計な詮索をされなくて済む場合があるのです。経理ウーマンとしては、その書類を作成するであろう税理士にきちんと情報を伝えておく必要があります。

 以上、法人の確定申告にあたって必要な書類を概観してきました。どの書類もそうですが数字だけを追うのではなく、数字の裏側に隠れた情報の読み取りが大切です。これからの経理担当者に求められるスキルの一つに、経営的な視点に立って経理する、ということがあります。あなたも、ぜひトライしてみてください。

〔月刊 経理WOMAN〕