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いまどきの上手な「自動車保険」のかけ方教えます
作成日:
12/21/2007
提供元:
月刊 経理WOMAN
加入の仕方によっては大幅コストダウンも
いまどきの上手な「自動車保険」のかけ方教えます
自動車保険に限らず、保険を選ぶ際には、必要と考える保障を十分検討した上で各社の保険商品を調べることが大切です。その上で、保険料やサポート体制なども含めた内容が納得のいく保険商品を探す必要があります。最近は、『リスク細分型』というタイプの保険料を抑えた自動車保険も多く販売されているようです。ここでは、いまどきの上手な「自動車保険」のかけ方をアドバイスします。
◆自動車事故の現状を知っておく
皆さんは、ここ数年、交通事故やそれによる死亡者・負傷者が減少しているのをご存知でしょうか? 統計によると、平成18年中の交通事故による死傷者数は6352人で、6年連続減少しています。死傷者数が6000人台前半となったのは、昭和30年以来なんと51年ぶりのこと。
その要因としては、シートベルト着用率の向上、自動車のエアバック・ABSなどの安全装置の普及、自動車の性能の向上などが挙げられます。
死傷者数が減少する一方で、交通事故発生件数と負傷者数は、交通量の増大や高齢者の増加により、年々増加傾向にありました。しかし、平成16年に過去最悪を記録して以降、道路交通法の改正で運転中の携帯電話や飲酒運転などの取り締まりや罰則が強化された影響から、前年に引き続き2年連続で減少しています。
とはいえ、交通事故によって、毎月約530人が死亡し、約116人に1人の割合でケガをしている計算になるわけですから、単なる他人事では済まされない数字です。
今後も、あなた自身や会社の役員・従業員等が事故に巻き込まれる可能性は依然として高いのです。
◆高額化する賠償額
そんなとき、被害者やその家族が犠牲になってしまうばかりでなく、加害者も損害賠償責任を負わなければなりません。死亡事故にならなくても、被害者が後遺障害等を負った場合は、多額の損害賠償金が必要となり、その賠償金額は3億円以上にもなるケースもあります。
さらに、人身事故ばかりではなく、物損事故によって、損害賠償責任が生じる場合もあります。
たとえば、過去の高額事故の事例では、乗用車が交差点を直進中、右手からトラックと衝突。付近の駐車場の壁、電柱、信号機に衝突したケースでは、損害額は1644万円にも上っています。
自動車保険は、このような交通事故被害に対応するための保険です。交通事故による死亡者数が減少しているとはいえ、交通事故による損害賠償額は年々高額化しており、自動車保険は今まで以上に必要な保険といえます。
ちなみに過去の人身事故の高額判決の事例は上の図表のとおりです。いずれも3億円以上の損害が認定されています。
◆最近の自動車保険の特徴とは
自動車保険は、これまでどこの保険会社で契約しても保険料は同じでした。
ところが、1998年に損害保険料率が自由化されて以降、横並びだった保険料やサービスに格差が生じ、競争が激化してきました。アクサダイレクトやアメリカンホーム・ダイレクトなど、いわゆる「ダイレクト系損保」では、従来とは異なったリスク区分で保険料を設定し、保険料を安く抑えた「リスク細分型自動車保険」をネットや通販等で販売し、人気を呼んでいます。
一方、大手損保もこれに追随しつつ、補償内容の充実と事故発生時のサービスに重点を置いた「補償拡大型自動車保険(人身傷害補償保険)」に注力するという対抗措置を取ってきました。
しかし、最近では、これら自動車保険商品の多様化に変化が生じてきました。損保各社が商品や特約を統廃合し、「簡素化」を進めてきたのです。それというのも、自由化以降、他社との差別化を図るために、商品の高付加価値化を促進した結果、商品や特約の種類が大幅に増え、契約者や販売代理店の担当者もすべてを把握できないほど複雑になってしまったからです。
このことが大きな問題となった保険金不払い問題の一因になったとして、各社がこれを教訓に、必要性のない特約等を廃止する動きが出てきました。
損保ジャパンでは、保険金不払いの再発防止策として、商品内容をシンプルで分かりやすくするため、2008年2月から、現在5種類ある自動車保険を、個人向けと法人向けの2種類に統合し、特約数も215からほぼ半数の113に減らすと発表しました。このほか、東京海上日動火災保険や三井住友海上火災保険なども商品の簡素化計画を表明しています。
◆ただ漫然と加入するなかれ
会社で自動車保険に加入する場合、なんとなく、自動車を購入したディーラーで、勧められるままに契約してはいませんか? じつは、これが一番ダメな自動車保険の加入方法なのです。
その理由をお話しする前に、法人が自動車保険を加入する方法を見てみましょう。
個人の場合、多くの人がネット等で補償内容や保険料を比較検討し、自動車保険を自分で選んで加入しています。しかし、法人は個人と異なり、ネット等経由で加入することはできません。ダイレクト系損保は、個人向けを主流としているため、法人が加入する場合は、代理店や損害保険会社で契約することになります。
また、前述したディーラーでの加入もポピュラーな加入方法であり、その際、自動車保険に加入することが値引きの条件になっているケースもあります。しかし、ディーラーはあくまでも自動車を売買するのが本業。自動車保険にあまり詳しくない人が担当の場合もあるでしょうし、大手自動車メーカーのディーラー等を除けば、取扱保険会社の数は限られており、選択の余地はあまりありません。
それにも関わらず、安易に自動車を購入したディーラーで、きちんとした自動車保険の知識を持たない担当者の言葉を鵜呑みにして、適当に契約してしまうと、会社の実情に合わないムダな特約の付加されたダメな自動車保険に加入してしまいかねません。その結果、万が一、事故が起きた場合、そこで加入した自動車保険では、会社や役員・従業員をちゃんと守れない可能性が高いのです。
法人も個人と同じように、保険料が安いに越したことはありませんが、法人の場合には、きちんとカバーしておくべきリスクがあります。そのため、自動車保険に限らず、その会社に合ったしっかりとした保険を選んでくれる代理店や損害保険会社で契約することが、とても重要なことなのです。
◆法人加入の賢い方法とは?
では、法人で加入する場合の賢い方法をご紹介しましょう。ポイントは次の3つです。
1)必要な補償を見極める
法人と個人では、付帯できる特約に一部の違いがあるものの、基本的に、保険料そのものに違いはありません。個人であっても、業務用で自動車を使う場合は、事故が起こる確率が高くなり、保険料も高くなります。
むしろ、個人と法人では、補償に対するニーズが異なりますので、その違いをしっかりと認識することが大切です。
たとえば、個人の場合、日常生活の事故を補償する特約を付加しますが、法人の場合、それは必要ありません。法人の場合、通常、「従業員の労災」の観点から労災保険の上乗せ補償として傷害保険に加入していますので、重複を避けるために自動車保険からは傷害補償を省くことができます。
このように、法人の場合、会社や業務内容に応じて固有のリスクがあります。そこで自社に必要な補償はなにか? 運転する者の年齢条件が合っているか? など、会社ごとの実態を細かく把握して、最適な補償を選ぶことが大切です。
現在、自動車保険に加入していても、他の保険でカバーできている内容をきちんと把握し、重複を防止するだけでも、保険料を節約できるはずです。
2)各種割引を利用する
自動車保険にもいろいろな割引制度がありますので、それを上手に利用しましょう。たとえば、会社の所有する自動車が複数台ある場合、契約を1本にまとめると保険料が節約できます。
通常、保険契約をする自動車数が10台以上ある場合は「フリート契約」、10台未満の場合は「ノンフリート契約」となります。フリート契約とノンフリート契約では、個々の契約に適用する割増引率の決定方法が異なります。
フリート契約の場合、「フリート多数割引」として5%が適用され、さらに、全車一括契約方式となりますので、その都度契約することなく、増車・減車の手続きを毎月1回、まとめて行なえばよく、追加・変換保険料についても日割りになるなどのメリットがあります。
また、ノンフリート契約の場合、台数に応じて「ノンフリート多数割引」(3~5台の場合3%割引、6台以上5%割引)が適用され、1年ごとに無事故(保険請求なし)であれば、等級が進み、保険料が一定の料率で安くなります。これをノンフリート等級といい、保険会社(もしくは共済など)を変えても等級確認制度で引き継ぎます。
フリート契約は、保有車全体の事故率から翌年の割引率(割増率)を決定しますが、ノンフリートでは1台ごとにカウントされます。
この他にも、購入した自動車が新車であった場合の「新車割引」や車の装備によって「盗難防止装置割引」「福祉車両割引」「ABS装備車割引」「エアバック装備車割引」などが適用されますので、一度、確認してみてはいかがでしょうか?
3)事故を起こさない
自動車保険の保険料を節約する一番の方法は、「事故を起こさないこと」です。というのも、自動車保険の保険料は、過去の事故の発生状況に影響されますので、運転する役員・従業員の方々には安全運転を励行してもらい、事故撲滅を目指すことが、保険料削減や会社の信頼へとつながります。
なお、損保各社では、さまざまな従業員向け事故防止・事故分析サービスを提供していますので、それを積極的に活用することをお勧めします。
◆情報収集はこうして行なう
自動車保険などの損害保険は、生命保険に比べて、情報を入手する方法があまりありません。さらに、法人は個人と異なり、企業規模や事業内容等の個別性が強いため、ネット等での情報収集がしにくいのが難点です。
そこで、お勧めは「口コミ」です。現在加入している火災保険や傷害保険、役員・従業員の方々が個人的に加入している自動車保険など、さまざまなツテを頼りに、何社かの代理店に相談してみると良いでしょう。その中には、法人に強い代理店などが必ずあるでしょうし、良い提案や、これまでの事故対応が良かった代理店などの情報も得られるかもしれません。
なお、自動車保険などの損害保険の基本的な知識や各種データは、損害保険協会や損害保険料率算出機構のサイト、そしてこれらが発行している冊子などがありますので、参考にされてみてはいかがでしょうか?
◇ ◇
個人・法人に関わらず、私たちが生活していく上で、事故や災害など避けることができない危険(=リスク)に備えることは、大変重要です。このリスクをコントロールすることを「リスクマネジメント(リスク管理)」といい、自動車保険に加入することもリスクマネジメントの一つです。
リスクマネジメントは、発生するリスクを漏れなく洗い出す「リスクの確認」からスタートします。自動車保険をきっかけに、自社には、どのようなリスクが発生するかを一度総点検し、それにきちんと対応できているかをチェックしてみてはいかがでしょうか?
〔月刊 経理WOMAN〕