知っておきたい「証憑書類」の種類と保存心得
   
作成日:10/23/2007
提供元:月刊 経理WOMAN
  


請求書・領収書などの取扱いはこうする!
知っておきたい「証憑書類」の種類と保存心得




 一般に請求書・領収書などを証憑書類と呼んでいますが、正確には証憑書類は「証拠書類」と「証明書類」とに分けることができます。日々発生するこれらの書類の保存には頭を悩ますところです。

 そこでここでは、証憑の持つ意味や、保存の際の心得、そして法定保存の年数まで、「証憑書類」に関する経理実務上の留意点をアドバイスすることにしましょう。

■証憑書類ってなんだろう

 経理の仕事で日常的に行なわれているのが、入金・出金及び振替といった会計伝票の起票と、現金や預金出納帳など帳簿の記帳でしょう。

 会計伝票は、納品書・請求書や領収書などをもとに起票し、現金出納帳は、通常入金及び出金伝票から記帳されます。

 ところで、税法では一般に、請求書や領収書などを単に「書類(本文では、「証憑書類」とします)」といっています。また会計帳簿のことを「帳簿」として区別していますが、二つ合わせて「帳簿書類」と呼んでいます。

 証憑書類にはその他に、注文(発注)書・契約書など改めて数えてみると、じつにたくさんあります。また、業種によっても種類や名称に違いがあります。

 税法は、決算書である貸借対照表と損益計算書も書類に含めていますから、これらも証憑書類に入ります。

 このように見ていきますと、証憑書類とは「仕訳のもとになったもの」すべてと考えて良いでしょう。

 なぜなら、経理処理の原点である仕訳、そのまたコアになる勘定科目は、証憑書類に記載されている取引内容によって決定されるからです。

 また証憑書類には、次のような分類の仕方があります。

[証拠になる書類]

 これは、請求書や領収書など常識的に考えられるものです。その他に、帳簿や決算書もこの中に入れることができます。

 もちろん、ここでいう証拠とは、取引の内容の実在性(税法は、この点をもっとも重要と考えている)と正当性を証明できるもののことを指しています。たとえていえば以下のようなものです。

(例)振込依頼書・送り状・預金通帳・預金証書・当座預金照合表・残高証明書・約定書・権利書など。

[説明となる書類]

 証拠になる書類以外のすべてが対象で、取引の内容を説明する書類といえます。

 たとえば、居酒屋さんで飲食をした場合、レジで勘定をしたときに受け取る領収書が証拠になる書類であり、飲んでいる際、飲み物などを注文する都度記入されるオーダー伝票がここでいう説明書類になります。たとえていえば以下のようなものです。

(例)稟議書・伺書・会議議事録・始末書・伝言メモ・念書・郵便控・パンフレット・価格表・パソコンなどによる出力帳表など。

 証憑書類については、なんらかの理由で受け取れない場合や、紛失することがあります。この場合、証憑書類に代わる、あるいは補完する役割を持っているのが説明(となる)書類です。

 さて、証拠書類も説明書類もまったくないような場合には、現金の収支に関係する取引なら入金伝票または出金伝票を起票します。

 この場合、摘要については取引の内容をできるだけ詳しく記入しておきます。

 たとえば、電車賃やタクシー代なら、摘要欄に乗車区間を記入しておくといった具合です。そうしておけば、電車には運賃表があり、タクシー代なら、走行距離から金額を合理的に計算でき、説明ができるからです。


■どうして証憑書類が大切なの?

 経理には、外部報告会計と内部報告会計との二つに分ける分類方法があります。

 大まかにいえば、仕訳から決算書の作成までの簿記会計が外部報告会計で、資金繰りや予算制度など簿記会計以外のものを内部報告会計といいます。

 ここでいう外部とは、税務署・株主・債権者などのことを指しています。この場合、客観的に取引の内容が分かる証拠になるものが必要になります。それが証憑書類なのです。

 ところで、領収書があれば、納品書も請求書も要らないのでは、と思いたくなりますが、領収書はいろいろな代金を支払ったことの証拠でしかありません。

 具体的に何の代金を支払ったか分からないと、その具体的な中身がはっきり分かりません。そこで、この品物を買ったお金ですよ、と説明するために納品書や請求書も必要なのです。

 また経理実務から見れば、何を・いつ・いくらで購入したかも重要です。次回どこに注文すれば良いかが分かると同時に、過去にいくらで買ったかがチェックでき、効率よく購入することができるからです。

 その他、節税という観点からも証憑書類の存在が大切になります。

 会計上は経費になるのに、税務上損金(税務上の費用のこと)にならないものがあります。たとえば交際費は、税法上損金不算入といって原則経費になりません。そこで税法は、交際費と似ている、福利厚生費や広告費などの周辺科目との区別ができるように規定しています。

 とくに実務では、会議費との区別が大切です。交際費にならないケースを判断するには、証憑書類の中身によって決まります。

 また、資本的支出あるいは固定資産の取得と修繕費や消耗品費などとの違いを判定するには証憑書類の内容が大切になります。

 その意味でも、証憑書類をきちんと整理・保管しておくことが重要になるわけです。


■証憑書類はこんな風に管理しよう

 証憑書類は、受け取る・渡すという二つの側面があります。どちらも最終的には原本や控を保管することになります。

 最も良い方法は、証憑書類に一連の番号を付け、会計伝票に記入しておくものです。もちろん証憑書類は、番号を基準に整理しておきます。そうしておけば、なんらかの理由で証憑書類を見たいときにすぐに探し出せて便利です。

 また、証憑書類の内容・種類によって区別して保存します。

 一般的には、売上・仕入(購買)・預金・経費・設備投資関連のように、取引を自社の実態に合わせ、分かりやすいように分類・区分し、それに合せて証憑書類を保存するやり方があります。

 従来から実行されているものですが、ファイルやフォルダを年度や分類別に色分けしておくと、探しやすくなって便利です。

 また具体例では、次のようなやり方があります。



現金の出納関係→市販のノートやスクラップブックに貼り付ける


取引の種類別→市販のファイルやフォルダに綴じ込む


すべての取引→1ヵ月ごとに、表紙を付けて綴じ込む


売上・仕入→得意先・仕入先別、月単位に市販のファイルや表紙を付けて綴じ込む

 法令上特に決められたものではないので、日付・月別・相手・案件別のように整理・保存すれば良いのです。

 また証憑書類(帳簿書類)は、税務上の保存期間が決められています。

 たとえば国税庁のホームページには次のように書かれています。

 

「法人は、帳簿を備え付けてその取引を記帳するとともに、その帳簿と取引等に関して作成又は受領した書類(以下「書類」といい、帳簿と合わせて「帳簿書類」といいます)を、その事業年度の確定申告書の提出期限から7年間保存しなければなりません」
「帳簿」には、たとえば総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などがあります。また、「書類」には、たとえば棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などがあります。
 大切なのは、「取引等に関して作成又は受領した書類」という点です。これを基準に判断して、収集し保存することになります。
 なお、計算書類(決算書など:会社法では10年間保存)や申告書は法令に関係なく、永久保存しているのが普通です。
 


〔月刊 経理WOMAN〕