「報酬の源泉所得税」のここに注意しよう!!
   
作成日:03/23/2010
提供元:月刊 経理WOMAN
  


うっかりミスで会社負担が増えてしまう…
見落としがちな「報酬の源泉所得税」のここに注意しよう!!




 個人に支払いをする報酬や料金などは、原則として源泉徴収の対象となります。経理担当者としては源泉徴収のモレが起こらないよう気をつける必要があります。うっかり源泉徴収を忘れて税務署に指摘され、支払った人からは源泉所得税を取れず、泣く泣く会社が負担するということにもなりかねないからです。見落としがちな「報酬の源泉所得税」について、もう一度おさらいしましょう。


 源泉所得税というと、皆さんの毎月の給与から会社が天引きするものでお馴染みだと思います。しかし、給与以外にも源泉徴収の対象となるものがあります。たとえば、生命保険会社が生保レディなどへ支払っているものがそうです(一見給与のようですが、じつは「報酬」の扱いになります)。また、税理士などへ支払っている顧問料等も報酬になります。

 税理士などへの報酬を支払う場合に、その支払いのつど、支払額に応じた所得税を差し引きます。このように税理士等の報酬から差し引く所得税を「報酬の源泉所得税」と言います。

 ここでは、報酬の源泉所得税でミスを起こさないための知識をレクチャーしていくことにしましょう。


◆源泉徴収が必要な報酬とは?

 個人に対する報酬については必ず源泉徴収しなければいけない、と思っていらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、源泉徴収が必要な報酬は所得税法で定められています。また、支払いをする相手先も法人と個人の場合では、その処理が異なります。


 簡単に言えば、日本国内で事業をしている個人事業者に対して支払うものが、源泉徴収の対象となります。支払いをする相手先が法人である場合は源泉徴収をする必要はありません(一部例外はあります)。



 報酬・料金等の源泉所得税の計算方法は原則として、次のとおりです。

a.報酬等の金額が100万円以下の場合…
  報酬等の金額×10%

b.報酬等の金額が100万円超の場合…
  (報酬等の金額−100万円)×20%+100万円×10%

 たとえば150万円の報酬を支払った場合は、原則として以下の計算により、20万円の源泉所得税が必要となります。

(150万円−100万円)×20%+100万円×10%=20万円

 ただし、司法書士に対する報酬やホステス・コンパニオン等に支払う報酬など、計算方法の異なる報酬もありますので注意が必要です。なお、これらの報酬・料金等から徴収した源泉所得税については、原則、給与の場合と同様に、その翌月10日までに納付しなければなりません。

 また、給与の源泉所得税を1月と7月の年2回に分けて納付する方法(納期の特例)を採用している場合であっても、これら報酬に対する源泉所得税はその翌月10日までに納付しなければなりません(弁護士・税理士などの業務に関する報酬などは、年2回の納付が認められています)。


◆こんなケースに注意しよう!

 次に、「報酬の源泉所得税」に関して間違いやすいケースを挙げてみましょう。

1)営業社員に対する支給

 営業の成果として支給するものには、給与になるものと報酬になるものがあります。そのため、どちらに該当するかにより、徴収する源泉所得税の金額や、納付のタイミングが異なりますので注意が必要です。




 支払っている側から見て、雇用契約であれば給与や退職所得となり、請負契約であれば報酬・料金となります。これらの報酬・料金等が給与所得や退職所得に該当する場合には、それぞれ給与所得や退職所得として源泉徴収を行ないます。

2)報酬・料金等とともに支払う交通費

 報酬・料金等の支払者が、直接交通機関等へ通常必要な範囲の交通費や宿泊費などを支払った場合は、報酬・料金等に含めなくてもよいことになっています。ただし、交通費としての名目で支払われていても、その実態が報酬・料金等と同じであれば、源泉徴収の対象になります。

3)報酬・料金等に含まれる消費税

 報酬・料金等に消費税等が含まれている場合には、原則、消費税込の金額が源泉徴収の対象になります。ただし、請求書の内訳に、報酬・料金等と消費税等が明確に区別されている場合には、税抜金額だけを源泉徴収の対象とします。

4)納期限の間違い

 先述のとおり税理士や弁護士などの報酬に対する源泉所得税は、給与から天引きした源泉所得税と同様、納期の特例の適用を受けていれば、年2回(1月と7月)に分けて納付することができます。

 しかし、それ以外の報酬に対する源泉所得税は特例の適用はなく、毎月納付しなければなりません。

 いつも1月と7月に税理士報酬に対する源泉所得税を納めている場合、ついうっかりそれ以外の報酬に対する源泉所得税も同じく1月と7月に納付すればいいのだと思い込んでしまうケースが多く見受けられます。納期限を過ぎてしまうと、不納付加算税や延滞税が課されてしまいます。

 せっかく源泉徴収したのに、納付が遅れてペナルティが課されることがないよう気をつけましょう。

5)税理士法人や弁護士法人などに支払う報酬

 たとえ同じ業務内容でも、相手が法人であれば源泉徴収の必要はありません。うっかり源泉徴収しないようにしてください。たとえば社内のセミナー等で研修講師を依頼した場合も、支払先が法人であれば源泉徴収は不要です。

6)行政書士に支払う報酬

 税理士や弁護士など「士業」と呼ばれる相手に対する報酬は源泉徴収が必要、というイメージをお持ちかもしれません。しかし、同じ士業でも行政書士に報酬を支払う場合には、源泉徴収は不要になります。

7)5万円以下の報酬の支払い

 日本国内で事業をしている個人事業者に対して支払う報酬については、原則として報酬を支払う際に所得税を源泉徴収しなければなりません。ときどき、5万円以下の報酬の支払いについては源泉不要と勘違いしている人がいます。これは支払調書の提出について、「同じ相手先への年間の報酬等の支払額が5万円以下であれば不要」という規程を誤解しているのかも知れません。


◆源泉徴収を忘れると被害は甚大!?

 ところで、源泉徴収しないまま相手からの請求額をそのまま支払ってしまったときは、どうすればよいのでしょうか。この場合、先方に源泉徴収すべきであった金額の返金を依頼することになります。しかし、このような場合でも納付期限は刻々と迫ってきます。もし、納付期限を過ぎてしまうと、納めるべき源泉所得税の10%の不納付加算税が加算されます(税務署からの指摘前に自主的に納付すれば5%の金額になります)。


 また、本税に年利14.6%(最初の2ヵ月間は7.3%の利率=この利率は年度によって異なってきますので、国税庁のHP等で最新の情報をご確認ください)の利率で発生する延滞税も課せられることになります。



 したがって、相手先から返金がされない場合であっても、納付期限までには納付することが必要になります。

 前述のとおり不納付加算税については、税務署からの指摘を受ける前に自主的に納付をすれば、税率10%から5%に軽減されますが、いずれにしても本来は必要のない支出です。これらの税金は罰則的な意味合いがあるため、税率が高くなっており、たった1日でも納付が遅れれば加算されてしまいます。したがって、源泉所得税は必ず納付期限までに納付するように心がける必要があります。

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 経理の仕事のなかではさまざまな請求や支払いがあります。その中には、今回のテーマのような、源泉徴収が必要なケースもあるでしょう。源泉徴収をする必要があるにも関わらずその確認を怠ると、徴収モレのみならず納付モレという結果も招きます。税務調査でも、源泉徴収が正しく行なわれているかという点は細かくチェックされる項目です。くれぐれも、徴収モレ・納付モレにならないように気をつけましょう。


〔月刊 経理WOMAN〕