緊急着手が必要な「経費削減」の着眼点
   
作成日:09/24/2009
提供元:月刊 経理WOMAN
  


モチベーションを落とさずコストを落とせ!
緊急着手が必要な「経費削減」の着眼点はこれだ!!




 売上がなかなか上がらない今の時代。なんとか経費削減を図れないかと考えている中小企業は、少なくありません。考え方によっては、不況下で社内の納得や協力を得やすい今こそが、経費削減を推進する絶好のチャンスかも知れません。

 ここでは今日からできる「経費削減」の着眼点と、経理が果たすべき役割についてアドバイスします。ぜひチャレンジしてみてください。

◆不況下こそ経費削減にチャレンジすべし

 昨年のリーマンショックに端を発した、世界同時不況。“100年に一度”というキーワードが、どこに行っても聞かれます。

 中小企業における平成21年4月から6月の業況判断(いわゆるDI)は、▲43.4となり、依然として厳しい状況が続いています。とくに経常利益の業況は、▲53.7ポイントと、利益を確保することがいかに難しいかを示しているといえます。

 ご存じのように利益は、「収益−費用」で計算されるものです。利益金額を大きくするためには、“収益を上げる”か“費用を下げる”しか方法はありません。

 しかし、収益のなかでメインである売上高は、得意先など市場があってはじめて計上できるものです。

 市場全体が落ち込んでいるなかで、それを上げることは並大抵のことではありません。新たな商品・サービスで勝負することも必要ですが、それがすぐに数字に結びつくとは限らないのです。


 そうしたなかで、私たちの取るべき道は限られてきます。つまり、“費用を下げる”しかないのです。売上を上げるのとはやや異なり、費用は自社の考え方である程度コントロールできるものです。



 大企業であればいざ知らず、中小企業が何期も連続して赤字を計上するわけにはいきません。そもそも基礎体力がない中小企業は、速やかに利益状況の改善に取り組まなければならないのです。

 そのための方策として、「経費の見直し」による改善は、一番最初に手をつけるべき課題なのです。


◆不況は経費削減のチャンスだ

 じつは不況時は、経費削減を実行する絶好の機会でもあります。会社の業績がまずまずであれば、「そんな無理をして経費を切り詰めなくても」という空気になりがちなもの。これが、景気が悪いときには、利益を上げるためには、無理・無駄・ムラをなくさなくてはならない雰囲気になるものです。

 業績が良い頃には、“聖域”とされた部分にも、効率化の観点からメスを入れることができるようになります。

 たとえば人件費。好況時には、なかなか言い出せないものも、不況時となるとそう言ってもいられなくなります。

 では、経費削減はどんな手順で進めていけばよいのでしょう。

 「経費削減をしよう!」という号令だけでは、実行することはできません。経費削減は、次の手順で行ないます。

1)経営者による号令

 まず、何といっても経営者である社長が方向性を示す必要があります。会社の方針として、経費削減に積極的に取り組むということを明確に従業員に伝える必要があるのです。

 全体会議などの場で、経営者自らの口で伝えるとよいでしょう。その際に注意しなければならないのは、“なぜ経費削減に取り組まなければならないのか?”という点を明確にしておくことです。経費削減をする意義が不明瞭な場合、失敗する可能性が高くなります。

 では、経費削減することの最終的な目標は何でしょうか? 利益確保? もちろん、そういう面もあります。利益がなければ会社の継続はできないというのは、会計の大原則でもあります。

 しかし、最初から利益確保を目標にしても、なかなかうまくいかないのも事実です。なぜなら、利益確保をすることで、会社がどうなるのか具体的な姿が描きにくいからです。このような場合、どちらかというと業務の効率化、高付加価値化を前面に押し出したほうが、従業員にとってはわかりやすいはずです。

 「あらゆるコストを見直し、業務の効率化を図ることで、仕事の付加価値を高めよう!」というメッセージを伝えるのです。

 経費削減は、最終的には効率化を推し進めるための一つの手段です。効率化を実践することで、業務自体の高付加価値化も実現することができます。また経費削減は、従業員のモチベーションアップなど仕事のやりがいへとつながるものでなければなりません。

 そのような目標を掲げることで、いままで行なっていたすべての業務が見直しの対象となります。“経費削減=ケチケチ経営”ではないということです。

2)具体的な目標の設定

 経営者から経費削減への取組みの号令が出されたなら、次に行なうのが具体的な目標の設定です。経営者から出された号令は、あくまで全体的な目標です。これを部課が分かれている会社であれば部課ごとに、そうでない会社は全体としての具体的な目標を立てていきます。

 様々な経費削減策がありますが、1回の活動ですべての項目を洗い出して着手することは無理です。経費削減の目標が、業務の効率化である以上、手をつける項目は業務全般すべてに及ぶからです。では、どうしたらよいのでしょうか。




 お勧めは、「週2点改善運動」です。この方法は、1週間に2点の改善点をあげ、その週はその掲げられた2点について全社的に集中して取り組むというものです。この方法であれば、その週に取り組むべき課題が明確になるため、会社全体として経費削減に対しての動きがとれることになるのです。

 「週2点だけ?」とお思いになる方もいらっしゃると思います。しかし、侮ることなかれ。週2点を1年間続けると、年間約100点もの改善が可能になるのです。

3)目標に対する進捗チェック

 会社で何かをするときにいつも注意しなければならないことは、やりっぱなしにしてしまわないことです。経費削減についても、目標だけ掲げても意味がありません。1週間が終了した時点で、その週に行なった改善についてフィードバックする必要があります。

 (1)改善ができたかどうか、(2)できていないとすると原因は何か、(3)今後どうするか、などがポイントとなります。週2点改善運動を軸として、経費削減に取り組んでいる場合、できなかった項目を次の週に持ち越しても構いません。その際に、どうすればできるようになるのかみんなで考える機会を持つと、より効果が出るでしょう。

4)健闘をたたえる

 経費削減の目標項目を達成したときには、みんなで健闘をたたえましょう。目標を達成したときには、“達成した証”が必要です。別にお金をかける必要はありません。みんなで拍手する、一番貢献した人を名指しで褒めるなど、なんでもいいのです。

 大切なことは、達成したことを全員が認識するということです。さらに、経費削減の場合は終わりがない活動でもあります。その後についても継続して行なっていく必要があるのは言うまでもありません。


◆具体的なコスト削減策と着眼点はこれだ!

 経費削減策というと、“ケチ”という言葉が付きまとうものですが、私がお勧めする削減策は、あくまで効率化に資するものです。ケチという観点で行なうものではありません。

 ここでは、経費削減を実行する上での具体的な方法や着眼点について解説していきます。

1)締め日は少ない方がいい

 業務効率を最大限に改善するためには、内部事務の効率化が一番手っ取り早い方法です。間接業務である内部事務を効率化することで、経費削減を図るということです。

 内部事務のなかでも、現金管理、請求管理、支払管理については、手間がかかる上、間違いが許されない業務です。これら事務について、効率化を図るためにはどうしたらよいのでしょうか。

 まず、現金管理です。現金管理は、経理事務にとって最も基本であると同時に最も難しい業務の一つだといえます。理由は、現金は跡が残らないものだからです。


 普通預金の場合、通帳にお金の出入りが記載されるため、通帳を見るとその動きがわかります。しかし、現金の場合、その動きは現金出納帳を見るしかないため、いったんどこかで記帳忘れなどがあると残高を合わせるのは非常に難しくなってしまうのです。



 そのため、現金出納の基本は、“毎日記帳しましょう”ということになります。しかし、それでよいのでしょうか。毎日行なうことの意味は、記帳忘れをしないためです。これは現金が毎日動くということを前提にしています。ここで発想の転換が必要になります。ずばり、現金の動きを毎日にしなければいいのです。

 具体的には、小口現金の払出しをやめて、経費精算は1ヵ月に1回または2回程度にしてしまうのです。現金入金がない会社であれば、精算日だけに出納簿を記載すればよいため、大変効率的になります。

 これと同様に支払業務についても、締め日を統一して支払日をある日に限定することで、支払業務の効率化が可能になります。

3)インターネットの活用は当たり前

 インターネットを利用することは、現代の会社にとって当たり前のことになっています。インターネットは時間と空間を短縮するための、効果的なツールです。

 たとえば業務日報の例で考えてみましょう。業務日報などを手書きするとなると、紙代がかかりますし、それを保管する場所代、そしてなによりそれを情報伝達するために時間がかかります。

 これをメール対応にすると、紙や保管場所は不要です。複数の人に日報の情報を送る際に、紙であれば回覧する必要が出てきますが、メールであれば一斉配信でできてしまいます。

3)情報の共有化を難しく考えない

 インターネット利用による経費削減もそうですが、業務効率化を図る上では情報の共有化が大切です。会社は複数の人が動くことで、成り立っています。1人ではできない仕事を複数の人で行なうことで、より付加価値の高い仕事を成し遂げることができるのです。複数の人で行なうためには、情報の共有化が不可欠です。

 たとえば、Aさんの担当先企業に行く途中に、Bさんが商品を届ける約束をしている会社があったとしたらどうでしょうか。BさんがAさんの予定を知っていれば、Aさんに頼んで、商品を届けてもらうこともできます。

 Aさんの予定を全く知らなかった場合、Bさんはただ商品を届けるためだけに時間をかけて移動しなければなりません。移動するための交通費はもちろん、移動時間にかかる人件費などの見えないコストが、ただ商品を届けるためだけに使われたことになるのです。

 さらに言うと、その移動する時間にBさんはもっと付加価値の高い仕事ができていたかもしれません。会社にとっては大変な損害になります。

 「情報の共有化」というと難しく思えるかもしれません。しかし、少しの仕組みと少しの注意力で、共有化は可能なのです。

 たとえば、朝礼で毎日の各人の行動を伝え合うということでも共有化はできます。社員数が多い会社であれば、グループウェアと呼ばれる各人の行動管理のためのソフトを利用することで、情報の共有化が可能となります。

4)習慣化する

 経費削減は習慣化することから始まります。たとえば不要な照明などの電気設備については、“消す”習慣が必要になります。電気代の節約といっても、それ単独では金額的には微々たるものです。しかし、これを続けること、会社の全員で取り組むこと、なによりも節約を意識することが大切なのです。

 残業をしないようにするという、あまり習慣化と関係ないと思われるようなことでも、じつは習慣がポイントになります。業務を時間内に終わらせるために、“時間を逆算して業務を行なう”習慣が必要になります。残業を減らすということは、いうまでもなく人件費の節約になるとともに、従業員のモチベーション維持や業務を集中して行なうことによる高付加価値化にもつながるのです。

 習慣化してそれを維持するためのポイントは、習慣が身につくまで徹底して行なうということです。逆説的に言うと、一度習慣化できてしまえば、自然と行動できるようになります。一人ひとりが意識することで、経費削減が可能となるのです。

5)細かいことを積み重ねよ

 すでにお気づきの方も多いと思いますが、経費削減策に“一発逆転”的な大技はありません。細かい経費削減の積重ねが大切になってきます。

 たとえば「通信費」で考えてみましょう。通信費の削減のポイントは、長電話をしない、携帯電話を適正利用する、Eメールを極力利用するなどがありますが、そのうちの一つだけを実行しても、削減できる経費は金額ベースで見ると、大きな金額にはなりません。中小企業の場合ですと、そもそも通信費自体の金額は、それほどボリュームが大きなものではないはずです。そのようななかで、そこだけを経費削減してもあまり意味はありません。

 しかし、そのような小さな削減策もその他の削減策と合わせて実施することで、まとまった金額になるのも事実です。

 しかも、前項目でご紹介したとおり習慣化が大切になるため、どれか的を絞って実施するよりも、細かなことでも網羅的に実施することで効果が出てくるものなのです。細かい経費削減の積重ねを心がけましょう。

6)上司の時間を強奪すべからず

 最後は、時間単価を考えて経費削減するということです。経費の中で大きな割合を占めるのが、人件費です。経費削減というと、リストラという言葉が出てきますが、実際の経費削減では効率化の追求を行なうことになります。

 会社には様々な役割の人がいますが、その中で人件費が高い人は管理職でしょう。会社全体としてのパフォーマンスを上げるためには、この人件費の高い管理職の時間効率を上げることが手っ取り早い方法なのです。そのためには、まず部下の意識から変える必要があります。

 このような例を考えてみてください。上司が業務を行なっているときに、重要度の低い報告・相談を部下が頻繁に持ってくるとしたらどうでしょう。思考を中断された上司の業務効率は確実に落ちます。なぜなら、中断後に中断前の状況からすぐ業務に取り掛かれることは、まれだからです。

 中断後の業務は、たいていの場合、最初から思考を組み立てなおすことが多いのです。つまり、中断前の時間が無駄になるということです。しかも、それが重要度の低い報告であれば、会社全体として考えると“部下が上司の時間を強奪している”のと同じなのです。

 全社的に時間の効率を考えた仕事の進め方に取り組むことで、節減できるコストはきわめて大きいといえます。


◆きわめて大きい経理の役割

 経費削減を会社全体として取り組む上で、経理担当者としての役割はきわめて大きなものになります。直接的には、経理システムの合理化を進めていくことも大切ですが、間接的な貢献としては、会社全体が経費削減を実施していることを数字面で確認できるような、サポーターとしての役割が求められます。

 経費削減が社長の掛け声だけで終わる典型的なパターンは、数字の裏付けができていないケースです。このような場合、実施している経費削減策は本当に効果があるのかどうかがわからないために、中途半端になってしまうのです。

 判断するための数字が出てこないと、結果を検証できないため、従業員のモチベーションは確実に落ちます。

 数字の裏付けの資料は、経理担当者が出すものです。できれば1ヵ月ごとに、どの勘定科目、どの経費項目がどれだけ削減になったかなどを経営陣や会社全体に対して報告することで、経費削減に対して側面支援を果たしましょう。

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 以上、経費削減に関して取り組むべき課題について見てきました。最初に述べたとおり、「不況時は経費削減策に取り組むチャンス」です。まずは、比較的簡単に取り組むことができる経費削減から実行してみましょう。


〔月刊 経理WOMAN〕