確定決算主義ってなに?
   
カテゴリ:経理事務
作成日:05/27/2003
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 会計事務所の黒田さんが伝票の監査をしています。そのそばで、なにやらリエちゃんと恵子さんがひそひそ話をしていますが………。
 


恵子
「黒田さん、ちょっと、教えてほしいんですが。今日の、日経新聞(日本経済新聞)に、「崩れゆく『確定決算主義』」という記事が出ていましたね。これは、どういうことなんですか。」
 
リエ
「実は、朝、旭課長が、『これは、仕事に影響あるぞ。』って大騒ぎをしていたんです。私たち、ちょっと、心配になっちゃって………。」

黒田
「う~ん。それは、旭課長のジョークじゃあないかな。そんなに、大騒ぎするほどのことでもないよ。直接には、君たち2人の仕事に影響はないと思う。でも、確かに、日本にとっては大きな影響なんだろうね。」

恵子
「う~ん。気になる。黒田さん、教えて。」

黒田
「うん、じゃあ、まず『確定決算主義』について説明しようか。法人税法という法律に、『会社の経費は損金経理をしないと、会社の損金(法人税法上の経費と考えて下さい。)に出来ない。』と言うルールがある。損金経理というのは、『確定した決算において、費用または損失として経理すること』をいうんだ。」
 


リエ
「確定した決算というのは、株主総会なんかの承認を得た決算。だから、商法上のキチンとした承認を受けた決算書に、費用や損失として表示していないと法人税法は損金にみとめてくれないということですよね。」
 
黒田
「そうそう、リエちゃん、そのとおり。法人税法の規定では、減価償却や役員退職金など、経営者の恣意性が入りやすいところに、損金経理の規定を置いているね。」

恵子
「それが、なぜ崩れてきて、日本の将来にも影響があるんですか。」

黒田
「うん、実は、米国の圧力で、国際会計基準というものが世界の会計のスタンダードになってきているんだ。日本では、さっき説明した、確定決算主義というものが、会計と税務を橋渡しする役目をもっている。つまり、決算書に載っている『利益』を尊重して、税金を計算することになっていて、経理事務が比較的簡略化されている。米国では、決算書と申告書がまったく別の基準でできている。」

リエ
「つまり、米国の離婚社会が、日本の経理事務に押し寄せてきている。面倒な事務である米国流を押しつけられようとしているわけね。」

黒田
「そうだ。連結納税や時価主義などは最たるものだね。でも、これらの規定は、大法人のもので、国際会計基準を含めたところで、今のところは中小企業には影響がない。さらに、日本でも、国際会計基準とは別に、中小企業の会計基準を作ろうという動きもあるようだけど………。」

恵子
「 中小企業まで、米国流が押し寄せたらどうしよう。わたし、面倒な事務は嫌い。」
 

黒田
「おいおい、恵子ちゃん、事務はもともと細かいんだぜ(笑)。でも、税理士業界などで盛んに議論されているようだから、日本の税理士に期待しようよ。」