引当金ってどうして計上するの?
   
カテゴリ:経理事務
作成日:12/04/2007
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


いつものように黒田さんが監査にやって来ました。

リエ
「黒田さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど。」

黒田
「何でしょうか。」 
 


リエ
「取引先の売掛金や受取手形、貸付金などの回収が見込まれない場合に備えて、決算期に貸倒引当金って計上しますよね。引当金ってどうして計上するんですか?」
 
黒田
「企業会計では、費用についてはそれが現実になる前のその原因が発生した時点で認識する仕組みになっているからなんです。これを発生主義会計と言ったりします。つまり、引当金としての要件を満たせば、重要性が乏しいものを除いて、引当金として本来その計上がされるべきものなんです。」

リエ
「ということは、貸倒引当金以外にも引当金として計上できそうなのが他にもありそうですね。」

黒田
「そうですね。例えば、従業員賞与の見積額、退職時に見込まれる退職給付債務、将来の支出に備えるための修繕引当金などが考えられますよね。」

リエ
「引当金の要件ってどんなものなんですか?」

黒田
「引当金の設定要件として、中小企業が計算書類の作成に当たり拠ることが望ましい会計処理等を示した“中小企業の会計指針”では、
 


1)

 
次の全ての要件に該当するものは、引当金として計上しなければならない。

 


a 将来の特定の費用又は損失であること
b 発生が当期以前の事象に起因していること
c 発生の可能性が高いこと
d 金額を合理的に見積もることができること
 

2)

引当金のうち、当期の負担に属する部分の金額を当期の費用または損失として計上しなければならない
 
   
とされています。ちなみに、1)の要件は、古くからの会計慣行の中から一般に公正妥当と認められるところを要約した“企業会計原則”の注解18の要件と同じですね。」

リエ
「なるほど。でも、貸倒引当金以外の引当金ってあまり見かけないですよね。」

黒田
「そうなんです。税金の計算のことを考えると引当金の計上は悩ましいところがありまして。」

リエ
「なんなんですか?」

黒田
「法人税法では、引当金は貸倒引当金と返品調整引当金の2つだけしか認めていないんですよ。つまり、この2つ以外の引当金を計上すると申告書上(別表四)で否認されてしまって費用として認められないことになってしまいます。」

リエ
「どうしてなんですか?」
 

黒田
「法人税法では費用の見積もり計上が原則として認められていないためなんです。ただ、全てが認められていないわけではなく、会計慣行などを考慮して、“別段の定め”という特別の規定により、この2つの引当金の計上だけが認められているというわけなんです。」 

 
リエ
「歩み寄ったり、離れたりですね。」

黒田
「税法と会計の乖離がなくなるようになればいいんですけどね。」