人件費の範囲を正確にすべき理由
   
カテゴリ:経理事務
作成日:07/22/2003
提供元:アサヒ・ビジネスセンター
  


 この前の賞与支給に際して、役員会ではこれから人件費の見直しが重要課題として、検討されるようになりました。

旭課長
「リエちゃん、人件費にはどういうものが含まれると思う?」

リエ
「給料、賞与、社会保険料、それに退職金ですか。」
 

旭課長
「まだまだあるよ。まず、通勤手当、それから社宅や寮の会社負担分、社員を募集するための求人広告の費用、社員教育のための研修費用、社員が着る作業着の費用、社員旅行や冠婚葬祭のための親睦会の会社負担分、社員の慶弔見舞金など。これらの経費はできるだけ、人件費という範疇で捉えたいので、仕訳を工夫して別に集計されるようにしておきたいな。」

 
リエ
「そういえば、社宅費が地代家賃に入っていたり、求人広告が広告宣伝費になっていたり、通勤手当が旅費交通費に入っていたりしますね。」

旭課長
「人件費を把握するためには、これらの科目は分ける必要がある。仕訳は単に税金計算のためだけではなく、会社の収入やコストの内容を分析するために重要なポイントになるので、目的をよく考えておきたいところだね。」
 


リエ
「これから、補助科目などを使って人件費という分類で集計できるように工夫してみます。ところで、これらの人件費が会社にとって、どのような負担になっているかを見るのは、どうするのですか?」
 
旭課長
「労働分配率という指標が一般に使われている。会社が生み出した付加価値または加工高に対して、人件費がどのくらいの割合を占めているかを示す数値なんだけど。」

リエ
「付加価値ってどういうことですか?」

旭課長
「付加価値は、企業が生産や販売などの活動で生み出した価値のことで、例えば、紙とインクを10万円で仕入れて、ウチの工場で印刷して50万円で販売した場合、50万円から10万円を差し引いた40万円が当社の生み出した付加価値ということになる。一般的には、売上高から原材料や外注費などの外部購入高を差し引いたものということになる。」

リエ
「労働分配率=人件費/付加価値ということですね。」

旭課長
「その通り。労働分配率は人件費を検討する上で、重要な指標になるので、過去の実績や他社との比較データも十分に収集しておく必要がある。その際に、先ほど言ったような人件費の範囲を明確にして、正しく集計されることが前提だけどね。」