コスト増を価格に転嫁できない中小企業~連合調査
   
カテゴリ:経営
作成日:09/28/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 連合が、全国の従業員数300人以下又は資本金3億円未満の中小企業を対象に昨年10月に実施した「中小企業における取引関係に関する調査」結果(4450社)によると、総じて企業業績は回復傾向がみられ、取引関係も改善されつつあるも、仕入れ単価上昇を価格に転嫁できないとの回答は依然として多い。また、経営課題として「人手不足」を挙げる回答が増加、人材・要員の確保が大きな課題になっていることがうかがえる。

 2014年4月の消費税増税に伴う価格転嫁拒否の有無については、95.0%の企業で「転嫁を拒否されたことはなかった」と回答、連合や行政、経営者団体の取組みが一定の抑止力となったとみられる。取引において直面する問題では、「仕入れ単価上昇によるコストアップ」をほぼ5割(49.7%)の企業が挙げたほか、「単価の下落や引下げ要請」(37.4%)、「取引先からの受注減少や取引打ち切り」(35.9%)が上位を占めた。

 また、仕入れ単価上昇によるコストアップに関しては、影響があった企業が86.6%を占め、そのうち、「価格に転嫁できない」(33.5%)が約3分の1ある。単価・価格の引下げ要請については、53.2%と半数以上が「あった」とし、そのうち8割以上(84.5%)の企業が何らかの形で引下げを受け入れている。また、引下げのために実施した施策は5割強(53.1%)の企業で「作業工程を工夫・改善した」を挙げた。

 以下、「協力会社に価格引下げを要請した」(26.7%)、「賃上げの見送りや一時金を見直した」(23.1%)、「物流コストを引き下げた」(16.6%)が続き、自社で吸収しきれない分について、さらなる下請けに転嫁したり、従業員の賃金等労働条件の引下げで対応していることがうかがえる。また、取引関係に関する法令、制度など行政施策の認知状況は、「いずれの法令、制度も知らない」が36.6%と約3社に1社にものぼる。

 企業業績による比較では、単価引上げ要請について、増収増益企業では40.9%と4割強が実現しているのに対し、減収減益企業では27.3%と3割弱にとどまっている。また、人員不足への対応については、増収増益企業では正社員の採用や賃上げを重視しているのに対し、減収減益企業ではこうした対応に消極的で、事業縮小をせざるを得ない企業もあることなど顕著の違いがみられる。

 同調査結果はこちら