最低賃金改定、「小売」の約5割が給与体系を見直し
   
カテゴリ:経営
作成日:10/21/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 10月1日から20日にかけて最低賃金が改定されたが、帝国データバンクが発表した「最低賃金改定に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万292社)によると、最低賃金の改定を受けての自社の給与体系について見直しの有無は、「見直していない(検討していない)」企業が49.1%となったことが明らかになった。他方、「見直した(検討している)」企業は35.0%と3社に1社が見直しを実施又は検討していた。

 給与体系を「見直した(検討している)」とした企業を業界別にみると、「小売」が48.9%となり約5割にのぼった。非正社員の雇用割合が高く、最低賃金の引上げが直接的に給与体系の見直しにつながっている様子がうかがえる。以下、「運輸・倉庫」(43.4%)、「製造」(41.0%)が4割を超えた一方、「金融」は18.1%と1割台にとどまるなど、業界間で大きく対応が異なった。

 従業員を実際に採用するときの最も低い時給については、全体平均は約958円となり、改定後の最低賃金の全体平均823円を135円上回る金額となった。都道府県別で比較すると、改定された最低賃金と採用時の平均時給の差額が最大だったのは「東京都」で、差額は+165円(採用時最低時給約1097円)だった。次いで「島根県」(+162円、同880円)、「沖縄県」(+161円、同875円)と続いた。

 今回の最低賃金の引上げ額は、労働者やその家族が最低限度の生活を維持していくうえで、妥当と思うか尋ねたところ、「妥当」と回答した企業が40.5%にのぼり、「(最低賃金の引上げ額が)低い」(18.1%)を22.4ポイント上回った。「(同)高い」は11.6%にとどまっており、人件費の増加要因となる改定にもかかわらず、今回の最低賃金の引上げ額は総じて受け入れられている様子がうかがえる。

 今回の最低賃金の引上げでの自社の業績への影響は、「影響はない」と回答した企業が57.9%で最多。他方、「プラスの影響がある」は1.7%に対し、「マイナスの影響がある」は21.7%と2割を超えており、最低賃金引上げが自社の業績に与える影響を懸念する企業が多くみられた。また、自社業績への影響と引上げ額の妥当性の関連をみると、引き上げ額が「高い」と感じている企業ほど自社業績に「マイナス」と捉える傾向がある。

 今回の最低賃金の引上げは、今後の消費回復に効果があるか尋ねたところ、「ある」と回答した企業は10.2%だった一方、「ない」は53.7%と半数を超えた。最低賃金の引上げが、消費の回復に結びつくか懐疑的に考えている企業が多数を占める結果となった。

 同調査結果はこちら