中小企業は増収増益、大企業は減収増益
   
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作成日:10/04/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 東京商工リサーチが発表した「中小企業の動向調査」結果によると、2016年3月期決算で、資本金1億円未満の中小企業の売上高総額は前期比0.9%増だった。だが、増収企業は48.6%にとどまり、依然として5割に届いていない。調査は同社保有の企業データベース(約460万社)から、3月期決算の資本金1億円未満の中小企業、及び1億円以上の大企業を無作為抽出し13万1308社を分析したもの。

 2016年3月期決算の中小企業の売上高総額は前期比0.9%増。15年9月期0.3%減、15年12月期1.0%減と2四半期連続で減収が続いたが、3四半期ぶりに増収に転じたが、わずかな増収幅にとどまり、増収企業率は48.6%と半数を下回った。3月期の赤字企業率は22.4%で、15年12月期(14.5%)を上回り、収益の二極化が鮮明になっている。減益企業率は43.1%で、15年12月期(42.2%)を上回った。

 一方、大企業の売上高総額は前期比1.5%減で、四半期別にみると2015年9月期が同2.6%増、2015年12月期が同3.1%減で、2四半期連続で減収となった。利益総額は同3.7%増で、2四半期ぶりに増益に転じ、中小企業と対照的となった。大企業は円高で売上高は落ち込んだが、コストや想定為替レートの見直しなどで利益が改善した。中小企業は、売上高は確保しているものの、「利益なき成長」をたどっている

 中小企業の産業別の売上高総額は、10産業のうち製造業、卸売業、小売業を除く7産業が増収だった。製造業は前期比0.9%減、卸売業は同0.2%減、小売業は同0.3%減と、いずれも1%未満の減少だったが、全体では前期比0.9%増の増収だった。卸売業は2015年12月期が前期比4.7%減から、16年3月期は同0.2%減と4.5ポイント改善したが 5四半期連続で減収となった。

 情報通信業は、2015年12月期の前期比3.5%減から16年3月期は同5.3%増に改善した。小売業は、15年12月期同0.81%減、16年3月期同0.3%減とマイナス幅は縮小も、3四半期連続で減収と厳しい状況に変わりはない。増収企業率は15年12月期23.0%から、16年3月期は38.1%と15.1ポイント改善も、全産業平均の48.6%を下回っており、14年4月の消費増税引上げ後の影響が長引いているようだ。

 黒字企業率は、中小企業77.6%に対し、大企業87.8%と規模による格差が鮮明に浮かんでいる。まだ、業績拡大が大手から中小企業に流れ落ちるトリクルダウン効果は薄いようだ。2016年3月期の中小企業の業績は、増収減益の「利益なき成長」の色濃い結果となった。東京商工リサーチは、「今後、減収に転じた場合、さらなる利益の低下から資金繰りが悪化する可能性もあり、利益率を重視した経営への転換が求められる」としている。

 同調査結果はこちら