負債5億円以上の倒産の構成比は円高が円安の倍
   
カテゴリ:経営
作成日:09/12/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 帝国データバンクは、サブプライム・ローン問題が発生した2007年を境に進んだ円高を機に、2008年1月以降から円高関連倒産の集計を開始した。それから約8年半経過したが、その間の倒産件数推移や業種別、負債額などについて分析し、このほど「為替変動時の倒産動向調査」として発表した。それによると、2008年1月から集計を開始した円高関連倒産は、2016年8月までに622件を数えた。

 2012年7月と10月に単月で最多となる17件が発生。その後徐々に沈静化したが、足元でも当時の円高に起因する関連倒産は発生している。今年7月には件数こそ特筆するものではないが、2013年9月以来、2年10ヵ月ぶりに円高倒産が円安倒産を上回った。その中身をみると、2007年から2012年にかけた円高が未だに影響しているケースが多いが、今後もし円高が進行した場合には更に打撃になるリスクも潜んでいる。

 為替変動に起因した倒産を業種別でみると、円高関連倒産は「製造業」が最多で48.6%と約半数を占め、次いで「卸売業」の34.9%が続いた。他方、2013年1月から集計を開始した円安関連倒産(2016年8月までの累計は917件)では、「卸売業」が30.4%を占め最多、次いで「運輸・通信業」27.9%、「製造業」20.7%となった。円高・円安それぞれの局面において、卸売業は共に構成比が30%台となっている。

 円高関連倒産の原因をみると、「デリバティブ損失」が29.1%、取引先における生産拠点の海外シフトなど「空洞化」が28.6%。以下「受注減少」17.0%、「輸出不振」12.2%と続いた。2008年から増え始めた円高関連倒産は、それまでの円安に対するリスクヘッジ手法として企業の間に広がった金融派生商品(為替デリバティブ取引)が、逆に仇となる形で運用が失敗し、それが原因で破産に至るケースが約3割を占めた。

 円高関連倒産を負債規模別にみると、最多は「1億円~5億円未満」の37.8%。次いで「10億円~50億円未満」23.0%など、負債5億円以上の倒産が44.0%と4割強を占める。他方、円安関連倒産でも「1億円~5億円未満」が48.9%で約半数を占めるが、5億円以上の倒産は21.5%と約2割にとどまっており、これまでの為替関連倒産を見る限りでは、円高倒産の方が負債規模の大きな倒産が多くなっている。

 同調査結果はこちら