3月期決算で銀行114行の約6割で利ざやが縮小
   
カテゴリ:金融
作成日:09/15/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 東京商工リサーチが発表した「銀行の総資金利ざや調査」結果によると、2016年3月期決算で銀行114行の「総資金利ざや」の中央値(全データを昇順または降順に並べた場合に、真ん中に位置する値)は0.17%だった。前年同期と比べ横ばいで低下傾向は一服した。ただ、今回の調査では銀行114行のうち、約6割にあたる63行で「総資金利ざや」が縮小し、「逆ざや」は前年同期より1行多い12行に増えたことが分かった。

 銀行の本来業務は、預金等で集めた資金を貸出や有価証券などで運用し、利ざやを稼ぐことだ。銀行の「総資金利ざや」とは、貸出金や有価証券で稼ぐ資金運用利回から、預金や債券、コールマネー、借用金などの資金調達コストを差し引いた数値で、銀行収益を示す指標の一つ。数値がプラスだと資金運用で収益を上げ、マイナスは「逆ざや」で貸出や運用で利益が出ていないことを示している。

 「総資金利ざや」の中央値を3月期決算ベースで過去と比較すると、調査を開始した2009年が0.29%、10年が0.27%、11年0.26%、そして15年0.17%と年々低下を続けてきたが、16年は低下ペースが一服した。これはマイナス金利の影響が期間的に小さかったことに加え、投資信託の配当増、保有投信の解約益など有価証券利回りの改善が寄与したもので、銀行の本業である貸出での利ざや改善を示すものではない。

 また、2016年3月期は、114行のうち55.2%に当たる63行で、前年同期より「総資金利ざや」が縮小した。銀行別では、「福島銀行」の0.24ポイント縮小(2016年0.09%)を筆頭に、「西京銀行」が0.15ポイント縮小(0.42%)、「福井銀行」が0.11ポイント縮小(0.05%)の順だった。利ざやが縮小した上位には第二地銀が多いが、貸出金利回りと有価証券利回りがともに前年同期より低下した銀行が目立つ。

 これに対し、「総資金利ざや」が前年同期より拡大したのは39行(構成比34.2%)だった。個別では、有価証券利息配当金が増加した「佐賀銀行」の0.08ポイント拡大(2016年0.07%)、貸出金利回りの低下を有価証券利回りの上昇でカバーできた「西日本シティ銀行」の0.08ポイント拡大(0.34%)など。資金運用利回り上昇と資金調達原価のダウンが影響した「スルガ銀行」は0.08ポイント拡大(1.47%)した。

 2016年3月期決算で、「総資金利ざや」がマイナスの「逆ざや」は12行(大手銀行3行、地銀6行、第2地銀3行)になり、前年同期より1行増加した。過去データでは、2009年が4行、10年1行、11年2行、12年8行、13年12行、14年8行、15年11行と推移。こうした「逆ざや」の発生は、金利低下や銀行間の貸出競争が厳しさを増していることによる銀行の本業収益の低迷を反映している。

 同調査結果はこちら