消費税率引き上げるべき、急激な景気後退を招く可能性は小さい
   
カテゴリ:税務
作成日:08/28/2013
提供元:21C・TFフォーラム
  


 消費税率引上げを最終判断する時期が近づき、消費増税を検証する政府の集中点検会合が26日から始まっている。社会保障・税一体改革関連法案では、税率引上げの条件として、景気条項が附則に明記されており、景気回復の状況、景気への影響がポイントとなるが、日本総研が26日に発表した「消費税率引上げを巡る5つの論点」と題したレポートでは、急激な景気後退を招く可能性は小さく、予定通り引き上げるべきと主張している。

 レポートによると、論点の一つとして「税率引上げで前回時(1997年度)の轍を踏むことにならないか?」との懸念を採り上げ、前回の消費税率2%ポイント引上げ後に大きく景気後退した原因を探っている。家計にかかる負担の大きさを前回と今回で比較すると、ともに8~9兆円程度とみられるが、消費増税が直接影響する個人消費は、増税直後の1四半期に減少した後はほぼ横ばいの動きをしている。

 そこでレポートは、前回景気後退の原因については、消費増税の影響が主因とはいえず、1)海外景気急変による輸出減少、及び2)不良債権問題・過剰債務問題を背景とした金融システム危機の発生、の2つによるところが大きかったと判断している。輸出はアジア通貨危機を受けてアジア向けが大きく落ち込んだ形であり、設備投資が金融危機発生に伴う信用収縮により急減したことが急激な景気後退の主因としている。

 これに対し、現状は、アジア各国の外貨準備は総じて充実し、国際的な相互支援体制も整備され、ショックへの抵抗力は大きく向上している。前回はアジア景気がピークをつけて急激に収縮する時期に増税時期が当たることになったが、今回はむしろアジア景気は減速から持ち直す局面となる。金融システムについても大きな問題はなく、企業の財務体質も健全化が進んでおり、外からのショックに対する耐久力は大幅に向上している。

 こうした金融システム状況・海外情勢を踏まえれば、前回1997年度時のように、消費増税がきっかけで急激な景気後退を招く可能性は小さいと判断されることから、2014年4月には予定通り消費税率を3%ポイント引き上げるべきと結論付けている。

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