マイナンバー法の成立に危機感～日弁連
　　　
カテゴリ:税務
作成日：08/20/2012
提供元：２１Ｃ・ＴＦフォーラム
　　

　「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」（略称「マイナンバー法」）案は、民主党、自民党、公明党の３党で大筋合意され、十分な審議もなく成立する可能性が高いことに対し日本弁護士連合会（山岸憲司会長）は、個人データを確実に名寄せ・統合することを可能にする制度（社会保障・税共通番号制度）の創設であり、その成立に強く反対を表明している。

　この法案は、第一に、重大なプライバシー侵害の危険のある制度を創り出す。すなわち、個人情報の利活用の推進を優先して、広範な行政及び民間分野で、生涯不変の共通番号を利用させるものであるため、民間においても広く個人の共通番号が認識できるようになり、個人情報が広範に名寄せ・統合され、プライバシーが丸裸状態になるおそれや「なりすまし」被害が多発するおそれがある。

　第二に、政府は「正確な所得捕捉」と「税と社会保障一体改革」のために必要としてきたが、目的自体が破綻している。すなわち、共通番号制を導入しても正確な所得捕捉ができないことは当初から政府が認めていた。また、先に成立した「税と社会保障一体改革」修正合意により、「社会保障の充実」、「公平な税制の実現」という目的や理念が後退しており、共通番号制の必要は希薄になっている。

　第三に、さらに問題なのは、法案が衆議院で審議されようとしている現時点においても、共通番号制導入による費用対効果が未だに明らかにされていないことである。これでは共通番号制は一部官庁と一部企業の利益のためだけの箱物事業になりかねない。東日本大震災と福島原発事故のために莫大な費用がかかるこの時期に、壮大な失敗の危険性のある事業を行うための本法案が、真剣な討論がなされないまま、きわめて拙速に成立させられてしまう可能性が高い。

　これは、国民の負託を受けた国会の審議として極めて不十分である。同連合会は、「この法案を成立させることは、我が国の将来に重大な禍根を残すことになる」として、同法案に強く反対しており、国会においては、以上に指摘した同法案の問題点について、徹底した審議を行った上で、同法案を廃案にすることを、改めて強く求めている。