金融緩和下でも伸び悩む中小企業の資金需要~商工中金
   
カテゴリ:金融
作成日:04/18/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 商工中金が、全国各地の信金営業店の調査員による聴取り調査で3月に実施した「全国中小企業景気動向調査」調査結果(有効回答数1万4485社)によると、中小企業の「借入難易度判断DI」は、最近の景気回復傾向に合わせて、「借入が容易」と回答する企業の割合が増えている。しかし、「借入が容易」と回答しているにもかかわらず、実際に借入を実施した中小企業の割合は増加していないことが明らかになった。

 中小企業のコメントからも、新たな資金調達には慎重な見方が目立っており、資金需要は伸び悩んでいることがうかがえる。中小企業の民間金融機関からの借入の容易さを測る有効な指標として、「借入難易度判断DI」がある。このDIは、借入が「容易」と回答した企業の割合から「難しい」と回答した企業の割合を差し引いたもので、数字がマイナスになると、中小企業にとって借入が「難しい」という回答の方が多いとみる。

 中小企業の「借入難易度判断DI」を時系列でみると、2008年のリーマンショックの影響による景気後退期に、一時的に「難しい」と答えた企業の割合が増加したものの、2009年の中小企業金融円滑化法の施行に伴う資金繰りの改善やアベノミクス以降の景気回復を受けて徐々に借入がしやすい状況になりつつある。従業員10人未満の小規模企業においても、相対的に遅れはあるものの、緩やかに改善している。

 中小企業にとって借入が比較的容易な環境になる一方、その資金需要は伸び悩んでいる。中小企業の「借入難易度判断DI」と「借入実施企業割合」の推移を併せてみると、借入しやすくなりつつあるなかで、実際に借入を実施した企業が増えていない。中小企業から聴取り調査している調査員のコメントからも、中小企業が借入に慎重になっている姿勢がうかがえる。

 以上のように、この調査結果からは、中小企業にとって借入が「容易」になる一方で、実際の借入実施にまで結びついておらず、資金需要が伸び悩んでいることがうかがえる。商工中金は、「2017年4月に消費税増税が控えるなど、中小企業の経営にも一定の影響が見込まれるなか、今後とも、中小企業の資金需要の動向には注目していきたい」とコメントしている。

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