銀行114行、「総資金利ざや」の縮小傾向に歯止めがかからず
   
カテゴリ:金融
作成日:08/19/2015
提供元:21C・TFフォーラム
  


 東京商工リサーチがこのほど発表した「銀行114行の総資金利ざや調査」結果によると、銀行の収益源である利ざやの縮小に歯止めがかからないことが明らかになった。2015年3月期決算では114行のうち6割にあたる71行で「総資金利ざや」が前年同期より縮小し、「逆ざや」は前年同期より3行多い11行に増えた。金利低下が続くなか、銀行が資金需要の落込みと貸出競争の激化から本業で収益を上げにくい状況が続いている。

 銀行は本来、預金等で集めた資金を、貸出や有価証券などで運用し利ざやを上げることを「本業」としている。銀行の「総資金利ざや」は、貸出金や有価証券の稼ぐ資金運用利回から、預金や債券、コールマネー、借用金などの資金調達コストを差し引いた数値で、銀行の収益性を示す指標の一つ。数値がプラスだと資金運用で収益を上げ、マイナスは「逆ざや」で貸出や運用で利益が出ていないことを示している。

 銀行114行の「総資金利ざや」の水準を、中央値(全データを昇順または降順に並べた場合に、真ん中に位置する値)で比較すると、3月期決算ベースで調査を開始した2009年は0.29%だったが、以降は10年が0.27%、11年0.26%、12年0.24%、13年0.21%、14年0.20%と連続して低下。2015年は0.17%まで下降して、銀行の収益源である利ざやの縮小傾向に歯止めがかからないことを浮き彫りにした。

 2015年3月期は、114行のうち71行で、「総資金利ざや」が前年同期より縮小し、全体の6割(62.2%)を占めた。一方、前年同期より「総資金利ざや」が拡大したのは36行(構成比31.5%)にとどまった。また、「総資金利ざや」がマイナスの「逆ざや」は11行で前年同期より3行増加。こうした「逆ざや」銀行の発生は、金利低下や銀行間の貸出競争が厳しさを増していることによる、銀行の本業収益の低迷を反映した。

 業態別では、地銀で「総資金利ざや」が前年同期より縮小したのは64行のうち41行(構成比64.0%)、第二地銀が41行のうち23行(同56.0%)、大手銀行が9行のうち7行(同77.7%)だった。日銀の金融緩和に伴う市場金利の低下と、貸出しでの金利引き下げ競争が影響したため、銀行が国内貸出だけで利ざやを稼ぐことは難しくなり、低収益性が経営リスクとして無視できなくなってきている。

 同調査結果はこちら