国内112銀行の「リスク管理債権」は3月期では最小額
   
カテゴリ:金融
作成日:07/26/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 東京商工リサーチがこのほど発表した「国内112銀行のリスク管理債権状況調査」結果によると、112行の2016年3月期のリスク管理債権合計は8兆412億円で、前年同期より8.0%減少し、3年連続で前年同期を下回った。また、3月期としては調査を開始した2008年3月期以降では最小額となった。貸出金に占めるリスク管理債権比率は1.6%で、前年同期より0.2ポイント改善している。

 リスク管理債権の内訳をみると、「延滞債権」が5兆9110億円(前年同期比4.9%減)、「3ヵ月以上延滞債権」が903億円(同1.4%減)、「貸出条件緩和債権」が1兆7365億円(同20.5%減)と、前年同期を下回った。「破綻先債権」は3027億円(同25.1%増)と唯一、前年同期を上回ったが、リーマン・ショック時の2009年3月期(1兆4760億円)の2割(20.5%)まで圧縮された。

 融資先の業績改善や再生ファンドの支援で再建計画を策定したことで、債務者区分を引き上げた可能性もあるが、依然として業績改善が遅れた中小企業は多い。金融庁が2016年6月に公表した中小企業者向けの金融機関の貸付条件変更等の状況(2016年3月末)では、2015年10月~2016年3月の半年間の申込件数は50万95件と、依然として申込件数は約50万件で高止まりしている。

 2016年3月期の業態別のリスク管理債権額は、大手行が2兆9697億円(前年同期比8.5%減)、地方銀行3兆8723億円(同7.2%減)、第二地銀が1兆1991億円(同9.2%減)と、全業態で前年同期を下回った。リスク管理債権が増加したのは17行で、前年同期(13行)より4行増加した。大手行が2行(前年同期1行)、地方銀行が7行(同9行)、第二地銀が8行(同3行)で、九州の銀行が8行を占めた。

 112行の2016年3月期の貸出金は493兆6298億円、前年同期比2.6%増と、5年連続で上回った。一方、貸出金利息は6兆2620億円、同2.0%減と、2年ぶりに下回った。業態別の貸出金では、大手行が同1.7%増、地方銀行が同3.5%増、第二地銀が同3.6%増と全業態で前年同期を上回った。しかし、貸出金利息は大手行が同1.6%減、地方銀行が同2.2%減、第二地銀が同3.2%減と、業態による格差が鮮明となった。

 国内112行の2016年3月期決算では、112行全ての最終利益が黒字(75行が増益)となった。2015年度(4~3月)の全国企業倒産件数は7年連続で前年度を下回るなど、与信関連費用の低下が黒字要因として大きい。しかし、中国経済の減速やイギリスのEU離脱による急速な円高株安など、今後予想される評価損や含み損などが金融機関の利益に影響を与えることも懸念されている。

 同調査結果はこちら