社会保険の適用拡大の影響、「法定福利費の増加」が最多
   
カテゴリ:経営
作成日:09/29/2016
提供元:21C・TFフォーラム
  


 社会保険(健康保険・厚生年金)の加入対象を拡大する制度改正が10月1日から施行される。従来、週30時間以上の短時間労働者が対象だったが、拡大後は従業員501人以上の企業に週の労働時間が20時間以上、月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)、1年以上の雇用見込みで勤務する学生以外の短時間労働者も対象となる。厚生労働省は約25万人が新たに適用されると推計している。

 東京商工リサーチが実施した「社会保険の適用拡大に関するアンケート調査」結果(有効回答数6941社)によると、社会保険の適用拡大について、「知っている」と回答した企業は67.5%と約7割に達した。産業別では、「サービス業他」(70.6%)で最も認知されており、次いで、「運輸業」(70.0%%)、「建設業」(69.1%)、「小売業」(69.0%)、「製造業」(68.6%)と続き、5産業が全体の構成比を上回った。

 適用拡大について、何らかの「対応を実施した(予定含む)」のは21.4%と約2割にとどまった。従業員数別では、501人以上で「対応を実施した」のは37.8%を占めた。一方、従業員500人以下では20.2%と、17.6ポイントの開きがあった。適用拡大に「対応した/する予定」と回答した企業の具体的な対応策は、「従業員(主に短時間労働者)への周知」が56.0%と過半を占めた。

 適用拡大後に予想される影響(複数回答)では、「法定福利費の増加」が47.7%で最多、次いで、「ない/分からない」(32.9%)、「社会保険事務の負担増」(24.5%)、「短時間労働者の勤務調整や退職」(19.9%)、「人員確保難」(13.7%)の順となった。企業業績に直結するコスト面への影響がトップだったが、勤務調整や人材流出、採用難から生じる労働力不足を懸念する意見も少なくない。

 予想される影響で「法定福利費の増加」を選択した企業に、コスト増への対策を聞くと、「人件費以外の経費節減」が44.5%でトップ。次いで、「人件費(残業削減など)の抑制」(36.7%)、「ない」(28.3%)の順。また、「正社員の削減」(5.7%)、「短時間労働者の削減」(14.6%)など、人手不足感が強まるなか、人員削減で法定福利費を直接抑える意向は少なかった。

 同調査結果はこちら